第58話 街の外

 馬車が動き出して暫くすると門に着く。街を出る時にも検問があるが、入る時よりはかなり緩い。

 何か問題が起きて無い限り、持ち込まれるのは不味いけど、持ち出されるのは良いって事だろう。


 因みに今日は西門から出る。昨日入って来たのは南門だ。だから、あの失礼なにーちゃん会うことはない。


 なので、特に何事も無く、すんなりと出ることができた。


「オーパさんやっと人を雇う気になったのか」

「魔物に襲われたって聞いたぞ。気を付けてな」


 とか言われたくらいでした。


 そして現在、馬車は街道をポクポクと進行中。

 そして私は、エンケリンちゃんを絶賛堪能中。


 まぁね。私も最初は回りの景色とか見てたよ? でもね? うん。大して変わらないわけよ。自然が一杯でね。寧ろ自然しかないね。

 ま、飽きたわね。あっちの乗り物での移動でもそうだったんだから、より速度の遅い馬車だったら尚更って訳ですよ。


 ですので、エンケリンちゃんを只管ひたすら堪能しました。

 だが、今日の私は以前とは違う。ただ堪能していた訳ではないのだ。

 堪能中に疎かになってしまう周辺警戒の為に、自動探索とお知らせの魔法をちゃんと展開していたのだ! 昨日の成果の一つだね。


「それじゃ休憩にするぞい」


 馬車が止り、オーパ爺がそう告げる。

 そう、以前であればエンケリンちゃんに没入していて無意識に謎の相槌だけを返すと言う空恐ろしい行為をしていたはずだが、このお知らせ魔法により、没入時でも意識を引っ張ってきてお知らせしてくれるのだ。

 正直原理は分からない。結果だけを指定して後はお任せしているので、魔法妄想力補完、便利すぎでしょ。


 そして、ここが休憩場所。うん。何もないね。ちょっと広い空き地。馬車が数台停められる位の。


「何にもないね」


 思わず私がそう言うと、


「そうじゃのう。ここは一時的に立ち寄る場所じゃからのう。本格的な野営もするような場所は少しは設備があるぞい」


 そうオーパ爺が答えてくれた。


「そうなんだ」


 そう言うものなんだって私が思っていると、


「リーベスお姉ちゃん! シュトゥーテのところに行きたい!」


 エンケリンちゃんがそんなことを言って来た。


「ん? 分かったよ。大丈夫だよね?」


 私はエンケリンちゃんに答えた後、オーパ爺に確認する。


「かまわんよ」


 との事なので、エンケリンちゃんを抱えたまま、シュトゥーテの所へ向かう。今日は周りに人が居ないので抱っこしたままでも嫌がられないね。


 シュトゥーテの所に着いてエンケリンちゃんを降ろすと、


「シュトゥーテ!」


 そう言ってシュトゥーテの頭に抱きつくエンケリンちゃん。うんうん。動物と戯れる幼女はやっぱり良いね!


 あっ! 写真撮っとかなきゃ!


 (激写)

 (カシャ)


 よしよし。また、良いものが増えたね。いっつも見るのに夢中で忘れちゃうんだよね。


 あっ、そうだ。


「シュトゥーテ、お水飲む?」


 馬は一日に大量の水を必要とするって話をなんかで見た気がするんだよね。


「ブヒ、ブヒヒン……(そうね、あるなら欲しいけど……)」


 そうだね。回りに水場は無いからね。


「じゃあどうぞ」


 そう言って私はシュトゥーテが飲みやすいような位置に水の球を魔法で出す。


「……ブヒヒン。ブブヒン(……そうだったわね。それじゃあ頂くわ)」


 そう言うとシュトゥーテは水の球に口を突っ込んでお水を飲み始める。


 それを見て私はシュトゥーテが飲んだ量を順次魔法で出して、水の球の水量が変わらないように出し続ける。


「ブヒヒン。ブヒン。(もういいわ。ありがとう)」


「どういたしまして」


 私がシュトゥーテのお礼に返事をしていると、


「うわぁ! 凄いねリーベスお姉ちゃん!」


 と、そこでエンケリンちゃんが声を上げる。


 エンケリンちゃんを見ると、キラキラした目でまだ出したままだった、水の球を見ていた。


「……エンケリンちゃんもお水飲む?」


 私がそう言うや否や――


「うん!」


 バシャッ。水の球に顔を突っ込むエンケリンちゃん!?


「エンケリンちゃん!?」


 勿論、私はそのまま顔を突っ込んで飲んでもらおう等とは考えていなかった。

 普通にコップに注いであげようと思ってたんだけど……。


「ぷはっ! おいしいね! リーベスお姉ちゃんのお水!」


 お顔をびしょびしょにしながら満面の笑みでそんなことを言ったエンケリンちゃん……。

 最っ・高っ・ですっ!

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