第57話 出立

 エンケリンちゃんと私はシュトゥーテのお迎えのためにうまやに向かう。


 勿論エンケリンちゃんとお手手繋いでだ。機会はのがさないよ!


 厩に到着。シュトゥーテもご飯は充分食べたのかな? 桶が空っぽだ。


「おはよう、シュトゥーテ」

「シュトゥーテ! おはよう!」


 口々に朝の挨拶をする私とエンケリンちゃん。


「ブヒヒン(おはよう、今日も元気ね)」


 それに答えるように一ついななくシュトゥーテ。……まぁ、答えてるんだけどね。


「きれいにしようね? シュトゥーテ!」


 エンケリンちゃんはそう言うとシュトゥーテのブラッシングを始めた。


 鼻歌をふんふん言いながら、ご機嫌にブラッシングをしている。やば可愛ですわ。


「ブヒン。ブヒ(貴女も相変わらずね。ほどほどにしなさいよ)」


 おっと、エンケリンちゃんの可愛い姿を凝視していたところに、シュトゥーテから戒めが。


「む……」


 私のエンケリンちゃんタイムを邪魔するとは……はっ! いかんっ! シュトゥーテと喧嘩したらエンケリンちゃんに嫌われてしまう!


「そうだ、シュトゥーテ。ご飯とお水は足りた?」


 私はつとめて平静にシュトゥーテに問いかけた。


「ブヒヒン(そうね、お水がもう一杯欲しいわね)」


「分かったよ」


 魔法で桶一杯に水を出す私。


「ブ!?(な!?)」


 驚くシュトゥーテ。だが体は動かさない。流石だね。エンケリンちゃんがブラッシング中だからね。


「あれ? シュトゥーテには魔法を見せたこと無かったっけ?」


「ブ、ブフフ……(貴女、魔法使いだったの……)」


「まぁ、そう言う事ですね」


「ブフフン(あの子もとんでもないのに目を付けられたわね)」


「ははは」


 笑って流す私。


 そんな話をしていたらエンケリンちゃんが台座を持ってこようとしていた。


「あ、エンケリンちゃん。私が抱っこしてあげるよ」


「へ? ――わっ!?」


 ひょいっとエンケリンちゃんを持ち上げる私。


「どう? 上届く?」


「へ? あ、うん。だいじょうぶだよ! ありがとう! 凄いね! リーベスお姉ちゃん!」


 そう言ってエンケリンちゃんは、にっかり笑顔を見せてくれた後、またご機嫌にブラッシングを始めた。うんうん、可愛いね~。


「うん! おわり! ありがとう! リーベスお姉ちゃん!」


 どうやらブラッシングは終了のようだ。


「今日もきれいだよ! シュトゥーテ!」


「ブヒン。ブヒヒヒン(ありがとう。貴女のブラッシングはいつも気持ち良いわ)」


 そう言うと頭をエンケリンちゃんに擦り付けて戯れるシュトゥーテ。うんうん。幼女と馬の戯れ……いい!


 一頻ひとしきり戯れた後、シュトゥーテを連れて馬車迄行く私とエンケリンちゃん。


「おお、来たか。こちらは準備万端じゃぞ」


 そう言って私達を迎えるオーパ爺。結構待たせちゃったかな?


「待った?」


 そう思った私は端的にオーパ爺に聞いた。


「んむ? そうじゃのう。まぁ、お前さんのおかげで一番の作業が無くなっておるからのう。何の問題もないわい。シュトゥーテも万全のようじゃしのう」


 そうにこやかに答えるオーパ爺。……待った事は否定しないんだね。


 シュトゥーテを馬車に繋いでいよいよ出発だ。今回、シュトゥーテの繋ぎ方をじっくり見たから、一度実際に繋ぐ練習をすれば出来る様になるんじゃないかな?


 席次は最早定番の、馭者席にオーパ爺。その隣に私。私の膝の上にエンケリンちゃんだ。


 馬車快適魔法を掛けていざ出発!


「行って来ます」


 無人の家に向かってそう声を掛ける私。


「リーベスお姉ちゃん?」


 そんな私を不思議そうに見上げるエンケリンちゃん! すばら!――しいですね!


「えっと……。何となくね?」


 う~ん。ほんと、そうなんだよね。あっちで一人暮らししてた時もそう言って出掛けてたし、ただいまって言いながら部屋に入っていってたから、そう、何となく。


「……」


 そんな私の答えを聞いて、何か考えている様子のエンケリンちゃん。程無く、


「いってきます!」


 と、元気にお家に向かって言っていた。そして――


「にへへ」


 と、私に笑いかけてくるエンケリンちゃん! やばい! 可愛過ぎる!


 思わず、きゅっと抱き締めてしまったよ! でも、嫌がらずに嬉しそうにしてくれるエンケリンちゃん! 最高です!


「では、行ってくるのう」


 オーパ爺までそんな事を言って、漸く馬車が動き出した。

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