第55話 入浴後

 しばらく経ってエンケリンちゃんの顔の赤みが少し引いたので、エンケリンちゃんをベッドまで運ぼうと思う。いつまでもこのままは良くないだろうからね。


「エンケリンちゃん、ベッドまで運ぶよ?」


「……うん」


 ううう、元気が無いよ……。


 急いでエンケリンちゃんの表面についた水気を魔法で取る。ここで取るのはあくまで余分な水分だ。やり過ぎるとエンケリンちゃんのお肌がかさかさになっちゃうからね!


 次いで私の服とエンケリンちゃんの服を洗浄魔法に掛ける。……よしっと。


 取り敢えず私の服をエンケリンちゃんに掛けてお風呂を出る。勿論お姫様抱っこでだ。うへへ。


 お姫様抱っこだと両手が塞がっていて扉が開けられないが、そこは魔法の出番だ。


 お風呂の引き戸をすっと開けて、脱衣場の扉をガチャッと開ける。


 物置の扉の前で探知魔法でオーパ爺が居間に居るのを確認。


 扉を開けて、素早く廊下に出た後、速やかにエンケリンちゃんの部屋の扉を開けて滑り込む。


 そして、エンケリンちゃんをベッドに寝かせた後、部屋の扉を閉めてスニークミッションコンプリート!


 エンケリンちゃんに服を着せて、エンケリンちゃんの頭をなでなでしながら私は言う。


「今日はこのまま寝ようか?」


「うん」


 ううう、いつもの元気一杯のお返事じゃないのが辛い……。


「じゃあオーパ爺をお風呂に案内したら私も一緒に寝るよ。ちょっと待っててね」


「うん」


 健気にお返事してくれるエンケリンちゃんの頭を最後に一撫でしてからオーパ爺の居る居間に向かう。




「オーパ爺、お風呂いいよ」


 居間への扉を開けつつ私はオーパ爺に言った。


「おお、そうか。んむ? エンケリンはもう寝たのかのう」


 扉を開けて入って来たのが私だけで、エンケリンちゃんが居ないのを見てオーパ爺が言った。


「エンケリンちゃんはちょっとお風呂でのぼせちゃったから、お部屋で寝かせてるよ。今日はもうそのまま寝るつもり」


「そうか。お前さんの様子からして、大事だいじは無いようじゃな」


 オーパ爺は私の言葉にちょっと反応したけど、私が焦った様子では無いからか大事おおごとでは無いと判断したみたい。


「うん、多分大丈夫だと思う。専門家じゃ無いから絶対とは言えないけどね」


「まぁそれはそうじゃのう。……ふむ、それなら今の内に明日の話をしておこうかのう」


「明日の?」


「うむ。明日の朝の内には次の村へ向かうから、そのつもりでのう」


 何事かと思ったらそんな事を言い出すオーパ爺。


「え? そうなの? 休みの日とかは無いんだ?」


 昨日帰って来たばかりだよね? せめて一日位休まないの?


「休み? お前さんのおかげで今日は休みみたいなものじゃったろう」


 何言っとるんじゃ? 的な感じでそう言われた。


「え? そう?」


 ……ああ、いつもは二人だけで荷物の積み降ろししてたんだっけ? それじゃぁ今日は皆でお買い物に行っただけって事なのかな?


「そっか、分かったよ。私が何か準備する物ってある?」


 明日の朝に出るって事は今日出来る準備はしておかないと、明日バタバタしちゃうよね。


「そうさのう。必要な荷物は馬車に積んであるからのう。片道3日の道程の心構えと、道中の護衛の仕方を考えておいて欲しいかのう」


「成程……、それはちょっと考えとくよ。それじゃあ、お風呂の使い方で良いかな?」


「そうさのう。では、お願いしようか」


 オーパ爺を連れてお風呂へ……、


「あ、そうだ。お風呂から上がった時に体を拭く布ってある?」


 私とエンケリンちゃんの場合は魔法で水分飛ばしたけど、オーパ爺はそうはいかないからね。


「おお、そうじゃのう。確かに必要じゃな」


 そう言うと、オーパ爺はちょっと大きめの布を持ってくる。ふむ、パイル生地では無いみたい、流石にタオル的な物は無いのかな?


 脱衣場に着いた所で私は言う。


「さっき案内した時も言ったけど、ここで服を脱いでお風呂に入るんだけど、中は設備不足で体を洗う事も出来ないので、ここで私が洗浄魔法を掛けてしまいます。じゃあオーパ爺、目を閉じて」


「うむ」


「洗浄!」


 オーパ爺を洗浄する。服と布も一緒だ。


 洗浄が済んだそこには、エンケリンちゃんの様にキラキラなオーパ爺が!? ……居るわけないね。

 綺麗にはなったけどキラキラじゃないよ。地が違うよね。あのキラキラさはオーパ爺系の血では無いのかな?


「こりゃ凄いのう」


 オーパ爺が感嘆を込めて言う。


 そうでしょうそうでしょう。もっと誉めても良いんだよ?


「それじゃ、後はゆっくり堪能してね。お湯の処理とかは気にしなくていいからね。明日起きたらやるよ。じゃあ私はエンケリンちゃんと一緒にもう寝るから」


「おお、そうか。なんもかんもすまんのう。それではおやすみ」


「うん。おやすみ」


 オーパ爺と別れてエンケリンちゃんの部屋に戻る。




 エンケリンちゃんは目を閉じてベッドで寝ている。

 それじゃ、起こさない様にお隣にお邪魔しますか……。


 ベッドに入ろうとしたところで、エンケリンちゃんの目が開く。……ちょっとびっくり。


「……起こしちゃった?」


 そこはおくびにも出さずに言った。


「ううん。起きてた」


「そっか、どう? 少しは楽になったかな?」


「うん」


 うん、まだまだ本調子じゃ無いね。早く元気一杯のエンケリンちゃんに戻って欲しいよ。


「良かった。じゃあ明日も早いんでしょ? もう寝ようか」


「うん」


 二人でポジション調整をしてベッドに横になる。……………エンケリンちゃんと同衾どうきんだと? そう言えば昨日は意識が飛んでたからほぼ記憶にないが、え? 一緒に寝るの? ……寝れるのか、私は……。


 その横では既に安心したように眠っているエンケリンちゃんが、健やかな寝息を立てていた。

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