第44話 お暇

「無事に終わったかのう」


 部屋に戻るとオーパ爺のそんな声に迎えられた。


「……まぁ、何とかね」


 刃傷沙汰寸前だった事は知らない筈だよね?

 それともその可能性に気付いてた?

 ザルツさんの性癖の事は知っていたのかな?

 だとしたら……まぁ無事に終わったんだから良しとしようか。


 其処でさっきは出ていった時は無かったと思われる木箱が目についた。


「これは?」


 って、自分で聞いてて何だけど、恐らく今回の取引分の塩だよね。


「今回分の塩じゃな」


 うん、やっぱりね。


「見てみても良い?」


 オーパ爺に聞く。


「そう言えば、商品を見せた事は無かったかのう。構わんよ」


 オーパ爺の許可が出たので木箱を開ける。すると中には布袋が……ああ、木箱に塩は直接詰めないか。


 縛ってある紐を解いて中を拝見……何か黒ずんでない? 混ぜ物されてる? そんな阿漕あこぎな取引する人には見えなかったけど……。


 ちらっとザルツさんを見た後、オーパ爺に聞いた。


「中身っていつもこんな感じなの?」


 流石に確認もせずに、混ぜもんしてんじゃねーよ! って言う訳には行かないからね?


「んむ? そうじゃな。いつもこんな感じじゃな」


 ふむ。オーパ爺が疑問に思って無いって事はこれが普通なのだろう。

 最初からずっと混ぜ物を掴まされてるって可能性も有るか。

 でも、村で売ってるって事は村人も気にしてない、と言うことだろう。

 なら、流通してる塩の品質がこんな感じなのだろう。

 あっちの真っ白な塩に慣れてるとかなりの違和感が有るね。

 あ、でも岩塩系だと色付いてるのもあったっけ?


「何かあったかのう?」


 私の様子に何かを感じたのだろう。オーパ爺が聞いてきた。


「ん? いや、塩の現物って初めて見たから」


 あぁ、自分で言っててこれは……。


「そうか、塩も初めて見るのかのう」


 やっぱり、生暖かい目で見られたよ。


「リーベスお姉ちゃん、お塩見たこと無かったの?」


「え? あ、うん。見たこと無かった」


 おぉう。エンケリンちゃんにも言われてしまったよ。まぁ頭に、が着くけどね。


「……やっぱりお姫さまなんじゃ……」


 エンケリンちゃんが小さい声でそんな事を呟く。


「いや、違うからね? エンケリンちゃん?」


 私がエンケリンちゃんを優しく諭す。

 そして、エンケリンちゃんの呟きに結構な反応を示した人にも釘を刺す。


「ザルツさんも、違いますからね? 変なこと考えないで下さいよ?」


「しかし、そう考えると色々な辻褄つじつまが合います」


「でも、それは事実では無いんですよ? 安易な答えに飛び付くと痛い目をみますよ?」


 ザルツさんに再び釘を刺してから、エンケリンちゃんに大事な事を思い出して貰う。


「エンケリンちゃんも、私がお姫さまじゃ無い方が良いんでしょ?」


「あっ! そうだった。うん! 違くていい!」


 ちょっと慌てて、私の言葉に同意するエンケリンちゃん。


「どうして違う方が良いんですか?」


 あ、聞いちゃいましたね。ふふふん。


「だって、お姫さまだったら居なくなっちゃいそうだもん。ずっと一緒が良いもん」


 ねー、と言い合うエンケリンちゃんと私。


 有難う御座います。大好きです。


 そして、ふふん、と勝ち誇った顔でザルツさんを見る私。


 そこには正に苦虫を噛み潰した様な表情のザルツさんが居た。何故、安直に聞いてしまったのか? との後悔がうかがえるね。


「では、そろそろ次に行こうかのう」


 そこで、そう言つつオーパ爺が席を立つ。それにエンケリンちゃんも続く。


「では、いつものように商品を馬車まで運ばせましょう」


 其処でザルツさんが正にいつもの事と言った感じで告げる。


「いや、それには及ばんよ。今日はリーベスが居るからのう」


 そう言ザルツさんに言った後、私を見るオーパ爺。


 ほいほい、了解です。


「よっこいしょっ、と」


 ……違うの! これは声を出しながら持った方が怪我しないからだから! まだそんな年じゃないから! 今はもう永遠の17歳だし!


 思わず心の中でそんな言い訳をしてしまった。が、他の人たちは全く気にしてないっぽい。何か自分だけ意識してて恥ずかしい。


「あぁ、そう言えば馬鹿力なんでしたっけ」


 む? その言い草は何か引っ掛かるんですが?


「リーベスお姉ちゃんは力持ちだもんね!」


 うんうん。エンケリンちゃんは言い方が分かってるね! 何処かの誰かと違って!

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