第38話 この後の予定
「それじゃあこれで用件は終わりだな」
そう言って席を立つおっちゃんに、オーパ爺が声を掛ける。
「すまんが少しここを使わせて貰っても良いかのう?」
「ん? ……あぁ、長居しないなら、少し位なら構わないですよ。……終わったらこれを受付の奴に渡しておいて下さい」
そう言い残して、おっちゃんはオーパ爺に木札を渡して部屋から出て行った。
「ここじゃないと出来ない話なの?」
はて? 何の話だろうって私が思っていると、
「いや、そう言う訳ではないが、お前さんがまた聞いて無いと困るからのう」
そんな事をオーパ爺が冗談めかして言う。
「いやはや、面目無い」
そう言われると弱いな。
「リーベスお姉ちゃん」
エンケリンちゃんが器用にこっちを向いて笑顔で私を呼ぶ。とっても可愛いんだけど……なんか圧を感じるんですが……。
「ちゃ、ちゃんと聞いてるよ?」
思わずどもりながらそう答える私。
「……それではこれからの予定なんじゃが、先ずは塩の仕入れに行く」
っと、オーパ爺が話始めたね。これから行くところの話かな? ……あ。
「あ」
「む? どうかしたかのう」
思わず声を出した私に、オーパ爺が何事か? と言った感じで聞いてくる。
「う、ううん。なんでもない」
慌てて何でもないと取り繕う私。
そうだ、塩だ。塩の売り上げもあるじゃん。さっきのは村で買い取って来た素材等の買取り金額で、塩の売り上げは別……ん? じゃないのか? もしかして塩と物々交換だったりする? あれ? そう言う話って聞いたっけ? 不味い……また聞いて無いって怒られちゃうよ!?
「そこが終わったら、次は薬屋じゃな」
「うん」
そう言や薬も少しやってるんだっけ。
「まだ不足している訳ではないが、お前さんの顔見せも兼ねて寄っておく」
「うん」
「その後に市場を一通り回っておくかのう。お前さんも色々見ておいた方が良いじゃろう」
「そうだね」
そうそう、物価の確認しなきゃだった。
「今回は特別な注文もないしのう、次の村で注文されていた物も無いから、後は道中の物資の調達だけじゃしな」
「そうなんだ」
今回イレギュラーは無しと、道中の物資って何だろう。
「ふむ、今回はちゃんと聞いて居ったようじゃな」
そう言ってオーパ爺が一つ頷く。
「いやいや、ちゃんと返事してたでしょ」
あれで聞いて無いだろって言われたら悲しいんだけど?
「いや、途中は怪しかったのう。前もさっきの様な感じで、うん、うん、言っとったからのう」
「いやいや、ちゃんと話に合わせて相槌してたよね?」
「そうじゃ。何の違和感も無い相槌を打つんじゃ」
「……まじで?」
そんなに自然なの? 自分じゃ分からない分怖いんだけど……。
「リーベスお姉ちゃん、ちゃんと聞いてた?」
そこでいきなりエンケリンちゃんがこちらを向いて聞いた来た。
「も、勿論だよ」
突然のキラーパスに思わずどもってしまったよ!? ちゃんと聞いてたのに怪しさ満点だよ!
「…………」
じっと、私の目を見詰めて来るエンケリンちゃん。
「ちゃ、ちゃんと聞いてたよ?」
「…………」
あ、圧が……。そ、そうだ! 聞いてた証明を……。
「え、えっと……先ずは塩の仕入れに行ってから――」
さっきのオーパ爺の話を繰り返す私。
「――で特別な注文は無いから市場を見て回るんだよね? ……物資の調達もそこでかな?」
……あ、合ってるよね?
そこで、にぱっと笑顔になるエンケリンちゃん。
「よくできました!」
そう言いながら、私の頭を撫でるエンケリンちゃん。
「あ、ありがとう……」
やばい!? 幼女に頭なでなでされてますよ!? やばい! やばい! こんな幸福な事があったなんて!? なんて人生損をしていたんだ!
「あ……」
エンケリンちゃんがなでなでしていた手を離す。思わず声が漏れる私。
えええ、もう終わり? もっとなでなでしてても良いんだよ?
そう言う思いを込めてエンケリンちゃんを見詰めるも、小首を傾げて不思議そうな顔をするだけでなでなでしてはくれない。いや、とっても可愛いんだけどね。
「これは、どちらが姉かわからんのう」
そこにオーパ爺の鋭い口撃!
「なっ! そっ! うっ……」
くっ、確かに、しかし、それではエンケリンちゃんのなでなでが……。
そうだ! 私の方が後に来たんだから私の方が妹って事で……って! 良いわけないでしょ! 成人過ぎたいい歳の女が幼女の妹って、色んなものを
いくら頼れるお姉さん計画が瓦解寸前だとしても、そこまで堕ちてはいけないよ!
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