第33話 説明

 さてと、何処まで話したものか……。


 まぁ、流石に異世界転生してるとは感付かれてはいないだろうから、そこは無しとして、どうしたものかな……。


「う~ん……。何と言ったら良いのかな? 一先ずエンケリンちゃんの質問に答えると、名前は変えた訳じゃなくて、見える部分を減らしたんだよ」


 そう言ってエンケリンちゃんを見る私。


「へらした?」


 エンケリンちゃんがこてん、と小首を傾げる。可愛い。


「……おほん。まぁ、見て貰った方が早いと思う。あ、予想は出来てると思うけど、あんま驚かないでね?」


 先ずは普通に表示。


 ——リーベス

 オーパ商会 小手代

 アインシュタッド——


「リーベスお姉ちゃん」


 次にフルネーム。


 ——リーベス・クライネス゠メーチィシェン

 オーパ商会 小手代

 アインシュタッド——


「わ!? 変わった!? ……くらいねす゠めーちぃしぇん?」


「……聞いた事の無い姓じゃのう」


 エンケリンちゃんは表示が変わった事に驚いて、オーパ爺の方は大体想像出来ていたのか、それ程驚いた感じでは無いね。むしろ知らない姓が出て来たことに困惑しているみたい?


「先に言っとくと、私は貴族じゃ無いし、その関係者でも無いからね?」


 ここは確りと言っておかないとね。


「……王族か皇族と言うことかのう?」


 一拍おいて、オーパ爺が低い声音で答える。


 おぅ、そっちに行きますか?


「いやいや、違うからね。私は一般庶民……平民です」


「…………」


 無言のまま、真剣な目で見てくるオーパ爺。


「いや、ほんとなんだって! いくら調べたって血統関係の話は出てこないからね?」


「ならその姓はなんじゃ、単なる自称では登録証には表示出来ない筈じゃ」


「へ? そうなの?」


「血縁以外で姓を持つには、基本的に国からの正式な書類を持って女神様に奏上し、認められる事によってのみ賜られる。貴族の婚姻や養子縁組等が主じゃな」


 そ、そうなの? 女神認証が必要って……、私の場合女神謹製なんだけど……認証通ってるのかな? う、う~ん……、これはどうしたものか……。


「リーベスお姉ちゃんはお姫様なの?」


 エンケリンちゃんが無邪気に聞いてくる。


「いや、違うからね」


 反射的に言葉を返すも……、うぬぬ……。こうなると異世界転生の説明と、こっちの世界での設定作りと、どっちが説得力ある?


 ……この世界の常識も分からないのに設定作りも何も無いか?

 ……うん、方針変更! もう、ぶっちゃけちゃいましょう!


「えーと、上手い言い訳が思い付かなかったので言っちゃいますね。私は異世界転生してきました!」


「………」

「いせかいてんせい?」


 反応薄! オーパ爺は沈黙で、エンケリンちゃんは小首を傾げながら知らない単語を鸚鵡おうむ返し。可愛い。


「おほん。異世界、つまりはこことは違う世界から来た訳なんだけど……」


「…………」

「????」


 オーパ爺は相変わらず、エンケリンちゃんは頭に? が沢山浮いてる感じがする。可愛い。


「まぁ、物凄く遠い国から来たって思って貰えれば良いのかな? その遠い国では国民の全員が……いや、ほぼ全員が姓を持ってたの。だから、私がお偉いさん関係の人って訳じゃなくて、一般庶民だったと言う訳です」


 ん? ……結局遠い国って話なんだったら異世界転生って言う意味あったかな? ……まぁ、良いか。言っちゃったものはしょうがない。突っ込まれたら考えよう。


「……イセカイテンセイ? と言うのはよく分からんが、お前さんの居た国では儂等の様な平民でも姓を持っていたと、だからお前さんも平民じゃと言うことかのう」


 オーパ爺がいつもの声音に戻って返す。


「そう言う事だね。まぁ、信じるかはどうかは、私の信用度次第だろうけど、取り敢えず私に接する態度を変えないでくれる事と、私の関係者が元の国から来る可能性は無いと知っておいて貰えれば良いかな? まぁ、これ迄通りって事で。」


 まぁ、元々怪しかった人が、話しを聞いても怪しいままって事なんで、それで駄目なら仕方ないよね? エンケリンちゃんとお別れは辛いなぁ……。


「ふむ、そこまで言われたら儂等としては信じるしかないのう。後はエンケリンが悲しむ事が無ければそれで良いわい」


 オーパ爺のその言葉に間髪入れずに返す。


「そんな事は絶対にさせない」


「……それなら何の問題ないのう」


 ちょっと呆れた感じで返されましたけど?


 そこで不安気な声音が横から聞こえた。


「……リーベスお姉ちゃんはお姫様じゃないの?」


 エンケリンちゃん!? そこ大分気になっちゃってた!?


「違うよ? お姫様だった方が良かった?」


「ううん。お姫様だと一緒にいられなくなりそうだから、ちがくてよかった!」


 曇りの無い眩しいばかりの笑顔になるエンケリンちゃん。


「エンケリンちゃん……」


 一緒にいられなくなりそうだから、違くて良かったって……嬉し過ぎる!

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