第27話 幼女洗浄
「もう、遅いよ! 二人とも! もう終わっちゃったよ!」
外に出ると、馬車の前でちょっと頬を膨らませたエンケリンちゃんが待ち構えていて、開口一番そう言われた。やばい可愛い。
「すみません」
「すまんのう。リーベスが出掛けに色々言って来るから時間が掛かってしまったわい」
なっ!? 爺!? こいつ私の所為に! くっ! だが事実ではあるから反論し辛い!
「もう、しょうがないなぁリーベスお姉ちゃんは……」
なっ!? これはエンケリンちゃんの中で私は、手の掛かる駄目姉になっているのでは!?
な、何と言う事だ……。これはいかん! 何とか名誉挽回の機会を得なければ!
そんな事を考えていたら、エンケリンちゃんが首を左右に傾げながら言った。
「あれ? リーベスお姉ちゃん……なんか綺麗になった?」
「ふぇ? 」
変な声が出た。
「う~ん、なんだろう? なんか綺麗になってるよね? おじいちゃん」
そ、そんなに変わってるのかな?
「ふむ? そう言えば洗っておったのう」
「洗って? ……あっ! 髪がつやつやになってるんだ!」
髪? ただ洗っただけでトリートメントとかのお手入れしてない筈なんだけど……?
自分の髪を確認する。因みに肩にかからない位の黒髪だ、今確認しました。
うん。本当に艶々だね。洗浄魔法で艶々化した訳じゃない筈だから、元々はこうだったって事? まじか、大分汚れてたんだな。
「うわ~……しかもさらさらだよ。……いいなあ」
エンケリンちゃんが驚いた後、羨ましそうに言った。
小さくてもやはり女の子、綺麗な髪は羨ましい様だ。
「エンケリンちゃんも洗っちゃう?」
「えっ!? ……でも、これかおでかけ……」
一瞬とっても嬉しそうにするも、途端に萎んでそんな事を言うエンケリンちゃん。
いやいや、こんな顔させたままとか有り得ないでしょ。
「オーパ爺さっきの見てたよね? あれする時間が無いとか言わないよね?」
ちょっと圧を載せてオーパ爺に聞く。
「う、……急いで行かんといかん訳ではないしのう」
オーパ爺が快く許可を出してくれる。
「ほら、オーパ爺もこう言ってるからね? 洗っちゃおう」
「う、うん。じゃあ井戸の所に行けばいい?」
期待にうずうずしてる感じで、体を井戸の方に向けながらそう言うエンケリンちゃん。
「ん? いや、ここでいいよ」
「え? お水で洗うんじゃないの?」
こっちに向き直るエンケリンちゃん。
「あぁ、お水はお水でも洗浄魔法だよ」
「えっ!? 洗浄魔法って、お皿洗ったのだよね?」
「そうだよ」
「あれって、すごくぐるんぐるんするんじゃ……」
とても不安気になるエンケリンちゃん。
「へ? ……あぁ、大丈夫だよ。お皿の場合はぐるんぐるんしたけど、自分にはそんな事してないよ。ね? オーパ爺?」
「そうじゃのう」
「ほらね?」
「そうなんだ。じゃあお願いします!」
「うん。じゃあお目目とお口を閉じてね?」
「うん」
そう言うと素直に目と口を閉じるエンケリンちゃん。
「じゃあ行くよ……」
私が魔法を発動させようとした時、
「リ、リーベスお姉ちゃん!」
「わわっ!? ど、どうしたの? エンケリンちゃん?」
エンケリンちゃんの上げた声にびびる私。
「……うんと、なにも見えないとこわくって……」
不安そうにそう言うと両手を差し出してくるエンケリンちゃん。
ん?
「……手を――」
「ああ! はい。これでいい? エンケリンちゃん?」
ちょっと恥ずかしそうにして言おうとしたエンケリンちゃんを遮って、差し出されたエンケリンちゃんの手を、両手で包み込む様にして握る私。
「うん! ありがとう! リーベスお姉ちゃん!」
ほわぁぁ…………か、可愛い過ぎる……。不安げな表情から、微羞恥、にっこり笑顔の三段活用に思わず頽れて悶えそうになるのを何とか堪える。
ふぅーー……。落ち着け私。しかし、こんなに幸せで良いんだろうか?
「リーベスお姉ちゃん?」
はっ! いかん! また固まっていた!
「それじゃあ洗浄魔法を掛けるね?」
「うん」
握ってるエンケリンちゃんの手に力が入るのが分かる。初めての事だもん、緊張するよね。
だから私も包み込んでいるエンケリンちゃんの手を握る力をちょっと強くする。すると、エンケリンちゃんの手に入っている力がちょっと抜けた。
「それじゃあいくよ?」
「……うん」
「……洗浄!」
その瞬間エンケリンちゃんを水が包み込む。そして直ぐに水が消えていくと、そこには金色に輝く御髪の天使が居た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます