第18話 結界魔法

 いや、何よ勝ったって? 人生に? それには同意。

 幼女と同部屋で同棲とか人生勝ち組でしょ!


「おおい! そろそろ手伝ってくれんかのう」


 外からオーパ爺の声が聞こえた。


「はーい!」


 そう元気に返事をするエンケリンちゃん。


「リーベスお姉ちゃんはゆっくりしてていいからね?」


 そう言って外に向かおうとするエンケリンちゃん。


「私も行くよ」


 いやいや、幼女を働かせて自分はくつろいでるとか無いからね?


「いつもやってる事だから大丈夫だよ?」


「一緒が良いから」


 私がそう言うとエンケリンちゃんは目を見開いて驚いた後、ふにゃっとした笑顔で言った。


「私も一緒がいい!」


 そう言うと私の手を取ってオーパ爺のもとに向かう。


 早くもお触りタイムアゲイン! 有難う御座います! ああ幸せ……。




「んむ? お前さんも来たのか。それじゃぁエンケリン、シュトゥーテの世話を頼むのう」


「うん!」


 そう言うとエンケリンちゃんは私の手を話してシュトゥーテの方に向かった。


 ああ……至福の時間が終わってしまった……。


「お前さんにはこっちの荷物を運んでもらうかのう」


 そう言って馬車の中の木箱達を示すオーパ爺。


「これは?」


「村から買い付けてきた商品と、こっちから持っていった商品の残りじゃな」


「これって暫く置いとく物なの? 直ぐに売ったりするんじゃなくて?」


「んむ? そうじゃな。明日にでも大部分は引き取って貰うのう」


「それじゃあ今日降ろしてから、また明日積むの? 手間じゃない?」


「まぁそうじゃが、このまま馬車に積んでおったら無用心じゃろう」


 ん? あぁ、そりゃそうか。鍵も付いてない上に布張りだ、そのまま置いといたら持って行って下さいと言ってる様なものか。


「あぁ……そうだね。……じゃあはいれない様にすれば良いかな?」


「んむ? なんじゃと?」


「えっと、人とか動物とか魔物とかが入れない様にすれば問題無いかな?」


「……そんな事が出来るのか?」


「うん。出来ると思うよ。試しにオーパ爺だけ入れない様にするから、やってみて良い?」


「……やってみとくれ」


「うん。」


 えっと、馬車の中で考えた結界魔法の排除対象をオーパ爺に設定して……あぁ反撃は無しにしとかないと、で範囲は馬車を箱型に覆う様にっと、これで良いかな?


「結界」


 そう言って馬車に向かって手をかざす私。何のエフェクトも無いから、魔素の流れや濃さが分かる人じゃないと何も起きてない様に見えるだろう……。私痛い人じゃないよ?


「お前さん?」


 可哀想なものを見る目をされる私。だから私は痛い人じゃないって!


「いや! ちゃんと出来てるからね!? 見えないだけだから! ほら! 馬車の前に見えない壁があると思ってそっと触ってみて!」


 未知の物事に対して恐る恐る動くオーパ爺。その手が馬車に触れようとした直前、その手が見えない壁に当たる。


「なっ、なんじゃこれは!」


 そう言って見えない壁をぺたぺたし出すオーパ爺。


「おおっ本当に見えない壁があるぞい」


 そう言って見えない壁を素手でがんがん叩き出すオーパ爺。


 って、


「ちょっと!? 何してんの!? 手ぇ痛くなるからやめて!?」


 慌ててオーパ爺を止める私。


「なんじゃ、どの位硬いのか確かめておったのに……」


 物凄く不満げにそう言われた。いやいや、せめて素手はやめよう?


「まぁ確かに強度は確かめたいよね……」


 う~ん、どうしよう……。

 よし! やっぱりデモンストレーションは必要だよね?


「ちょっと待っててね」


 私はオーパ爺にそう言って準備を始める。


 先ずは土壁を生成、高さと横幅1.5m、厚さ20cmだ。オーパ爺に触って貰ってなかなかの頑丈さを確認してもらう。

 次に土の木槌作る。イメージは白黒の双子が使ってるような大槌だ。土製なんだから木槌じゃ無いって? だったら土槌だ。語呂悪。その土槌もオーパ爺に確認して貰う。


「あっ、すっごい重いから気を付けてね?」


 こんな事で怪我なんてされたら困る。多分持てないし。


「なんじゃこれは!? びくともせんぞ!?」


 やっぱりね。それを軽々と持ち上げて、野球のバッティングよろしく構える。


 この時点でオーパ爺は唖然あぜんとしている。まだ始まってもいないのに。


 周りに結界を張るのも忘れない。多分、ばーん! と爆散する感じになるだろうから破片の飛散防止だ。


 よぉし、じゃあいきますか!


「ふん!」


 おもいっきり土槌を土壁に向かって振り切る!


「のわー!」


 来るであろうインパクトの瞬間の衝撃が全く無く、何の抵抗も無く振り回される土槌。


「うわーなに!? なに!? どうなってんの!? 回ってる!? わー!?」


 土壁に当たって減速する筈がそれが無く、頭が重い土槌に遠心力が加わり、ぐるぐると廻る私。


 ばーん!


 ふー、やっと止まった。結界ぶっ叩いちゃったよ……あ、やば、オーパ爺腰抜かしてるよ……そりゃ目の前の結界ぶっ叩かれたらびっくりするよね。


「ご、ごめんね、オーパ爺。大丈夫?」


「……流石にこれは冗談にしても質が悪いんじゃないかのう」


 あ、怒ってる……。そりゃ結界なけりゃ死んでるもんね。


「いや、不可抗力なんだよ! 先ずは土壁をばーん! てする予定だったんだけど空ぶっちゃったみたいで……!?」


 そうして見た。さっき作ったあの綺麗な土壁が変形しているのを。そう、まるでクッキーの型抜きをした後の残りの生地の様に綺麗にり貫かれているその様を。


「なんじゃこりゃ!?」

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