第70話

「ものすごく良い宿じゃないですか!」

「ありがとうございます、本日はこの宿の最上階はタチバナ様のとなっております」

「へ?」

「最上階って言っても3階建てだけどね」

異世界こっちの世界はどうかわかりませんが年越しの宿泊費は高いんじゃ」

「こちらも同じようなものですが少々がありまして」

「そ、そうなんですね…とりあえず入りましょうか」


宿の外観ですでに緊張なさっておいでですが……大丈夫なのでしょうか。


「タチバナ様ご一行様でございますね?当宿へおこしいただき誠にありがとうございます」

「お、お世話になります」

「ふふふ、早速お部屋へとご案内いたしますのでこちらへ」

「え?受付は…」

「のちほど私が行いますのでご安心ください」

「ナタリーさんよろしくお願いします」

「はい、かしこまりました」

「ではこちらへ」


キョロキョロと挙動不審な動きをしておりますが…先ほどから会う女性従業員たちがもれなく全員見とれているようです…ナタリーだけではなくモネとルイ、カミューとレティーまでが視線に気づいているようですが当のご本人はまったくお気づきになられておりません。


「あ、」

「どうなさいましたか?」

「普通に連れてきてしまったんですけどテト達は大丈夫なんですよね?」

「はい、当宿はよほどひどい従魔以外はおつれ可能となっております」

「どれくらいがひどいの範疇なのかわからないけどうちの子達は賢いから大丈夫ですよね?」

「事前に確認済みです」

「よかったぁ~」


連れ込みが駄目な場合、入り口でおとめになられるとおもうのですが…。


「本日こちらの階を貸切となっておりますのでごゆるりとおくつろぎくださいませ」

「ありがとうございます」

「なお各階に大浴場とタチバナ様のお部屋には部屋湯がございますのでお楽しみくださいませ」

「え!?すごいですね」

「ふふふ、ありがとうございます」


自身にあてがわれた部屋が広すぎたのか落ち着かない様子で、結局すみに移動なさり壁によしかかりながら部屋の中をキョロキョロみております…貧乏性の極みです。


「にゃぁ~?」

「ん?散歩にいきたいのかい?」

「ホォ」

「ああ、テトは寒いの嫌いなのか、少し窓をあけるからルフは飛んできてもいいけど遅くなる前に返ってくるんだよ?レイは冬眠するのかな…部屋に温泉があるから桶にいれてあげようか…」

「フゥ~~」

「気持ちいいか、よかった」

「ロキは…寝てるのね…」

「ふにゃぁ~…Zzzzzzzz」

「フゥ~…Zzzzzzzzz」

「レイのぼせないようにね……なんだか俺も眠くなってきたなぁ……Zzzzzz」

「タチバナ様失礼いたしま……」

「可愛いですね」

「ええ、とても」

「はぁ~…ルフまで戻ってきて寝ているのでしたら窓をおしめになられなければお風邪をひいてしまいますよ」

「んっふぅ~…いい匂い……」

「!!……ま、またですか……」


ロキとテトがそれぞれタチバナ様の腕を枕に眠り窓辺にある椅子にはルフがとまりながら眠り部屋湯の桶には浴槽からあふれるお湯が入るようになっていてレイが気持ちよさそうに目をつぶっています……そして毛布をかけてさしあげようとしたところ、また抱き着かれ身動きがとれなくなってしまいましたが……幸せそうにだらけ切った顔を見ると力が抜けて抵抗できません。


「アリス様……」

「見ていないで助けてほしいのですが」

「……はい」

「ふぅ~…助かりました」

「……わざとではありませんよね?」

「……わざとにみえるのですか……?」

「そうですね、アリス様にかぎってそんなことはありませんよね」

「察してくれてうれしく思います…どうせ食事はこの部屋ですしそれまでお休みいただきましょう」

「「はい」」


怪しむ二人を引き連れ皆を起こさない様に部屋を出ました、テト達も私たちの気配だときづいているせいかまったく起きる気配はありませんでした。


「あら」

「はぅ♡」

「ほのぼのですねぇ~♡」

「た、たまりません!」

「はぁはぁはぁはぁはぁ……タ、タチバナ様ぁ♡」

「はぁ~…モネ、ルイおこしてさしあげてください」

「「かしこまりました」」


全員を席に案内し二人に起こしてもらいましょう。


「タチバナ様、お食事の準備ができました」

「お目覚めください」

「んっふぅ~」

「タチバナ様?お目覚めのお時間ですよ……あ……」

「んん~むにゃ…んふぅ~…やわらかい……」

「モネなにを……」

「ほ、ほどけません……」

「しかたありませんね……あ……」

「んー……すべすべでムニムニだぁ~…」

「あぁ!二人ともなにを!」

「たすけてください」

「はなれません」


やはり二人もタチバナ様に拘束されてしまいましたか……。


「はぁ~…ナタリー、カリンたのめますか?」

「ええ!まかせて!」

「おまかせください!」

「先輩!わたしが!」

「「あ゛ぁ?」」

「ひぃ!!」

「タチバナ様ぁ~」

「タッチバナさぁ~ん!!」

「……」

「わかりましたか?」

「は、はい……不思議です……まったく身動きが取れません」

「力が入っていないのに……おどろきでした」


ナタリーとカリンに拘束を解いてもらった二人が深く息をはいていますが私も不思議でなりません。


「タチバナ様、お食事のお時間ですよ」

「さぁ、皆でお食事をしましょう!」

「ちょ!アリス先輩!お二人とも添い寝を!」

「しかたないわねぇ…ルフ?たのめるかしら」

「フォ!?……ホォ!」

「にゃっ!?」

「キャン!?」

「フシュー!?」


フィーネが優しく声をかけると眠っていたルフが目を覚まし翼をひろげ一鳴きするとテトたちも驚いたように目をさまし添い寝しようとしていた二人の上にテトとロキが飛び乗り邪魔をしそのままタチバナ様の顔を舐め始めました。


「うひぃ!く、くすぐったい!!ん?ぬおっ!?ナタリーさん!?カリン先生も!」

「……おはようございます……お食事のお時間です」

「え!?ああ!すみません!うとうとしてました!お待たせしてすみません!」


飛び起きたタチバナ様が隣にいる二人を見て驚いておりましたが間髪入れずにモネとルイが席にご案内しました。


「随分ぐっすりだったわね」

「いやぁ、ロキが眠ってるのをみたらついつられてしまって」

「そう、まぁいいわ食べましょう」

「そうですね!おぉ!凄い豪華ですね!」


全員でグラスをかわし食事がはじまりました、今日はモネやルイそしてカミューとレティーも席についていてタチバナ様も嬉しそうにしております。


「ふわぁ~…このお肉すごくおいしい…こんなおいしいお肉食べたことないです」

「そ、そうですね!最高です!お肉最高ですよね!」

「レティーもカミューさんもこのお肉そんなに気にいったんですねぇ、もしよかったらどうぞ」

「え!?そ、そんな!いただけませんよ!」

「そうですよ!」

「いやいや、せっかくだからどうぞどうぞ!」

「え、あの……ありがとう…ございます」

「ありがとうございます」

「俺は魚を楽しみにしてたんで全然大丈夫ですよ!」

「え…さ、魚ですか?」

「ん?そうだよ」

「タチバナ様、それはすでにテトが」

「え゛……」

「にゃぁ~ん?」

「くぅ!テトならしかたない!ロキもルフもレイもおいで!食べたいものがあるかな?」

「くぅーん!」

「ホォ」

「フゥ」

「せっかくだから一緒にたべようね…お?おいしいかい?んふふふふ、みんな可愛いなぁ」


せっかくの豪華な料理ですがほぼテト達にさしあげてしまってますが物凄く幸せそうなお顔をなさっているせいで誰もおとめできません。


「失礼いたします」

「どうなさいましたか?」

「追加の料理をお持ちいたしました」

「頼んでおりませんが…」

「当宿からのサービスにございます」

「ナタリーどういうことです?」

「え?しらないわ…女将?」

「いつもがお世話になっているお礼です」

「ご主人?あの…すみませんがご主人は」

「主人は職人をしておりまして、ガンホーともうします」

「ガンホーさんですか…って!えぇぇ!?親方がご主人なんですかっ!?」

「はい、当宿は私のほうの稼業でして結婚するときにやめようとおもったのですが主人が続けろと言ってくださいまして」

「さすが親方だ…」

「ふふふふふ、ありがとうございます。当宿も主人が色々手を加えてくれまして」

「なるほど!親方は腕は超一流ですからね!」

「おほめ頂きありがとうございます、日ごろの感謝として主人から皆様へと」

「えぇ!?仕事を回してもらっているのはこちらなのに!」


結局笑顔の女将に押し切られ料理を受け取ってしまわれました…それにナタリーも驚いているので本当にサプライズなのでしょう。


「おいしい!」

「ありがとうございます」

「よかったわねダイスケ」

「ええ!最高ですよ!」

「食事が終わったらせっかくのお風呂なんだから入りましょ」

「そうですよね!」

「当宿自慢の温泉にございます、貸し切りですので大浴場も混浴としましたので皆様でお楽しみください」

「ぶっ!お、俺は部屋のお風呂で充分です!」

「あら、じゃあ一緒に部屋湯にはいりましょう」

「な、なに言ってるんですか!?」

「入りましょっていったらそうですねって言ったじゃない」

「一緒にじゃないですぅぅぅぅ!!!」

「ふふふ、ウブなんだから」

「本来でしたら新しい露天風呂もご用意できたはずなのですが」

「何か問題でも?」

「今の露天風呂と新しい露天風呂を洞窟でつなぐ予定だったのですが」

「岩盤を抜けないのですか?」

「ええ、数センチ掘るだけで結構な時間を要してしまい頓挫しております」

「そこが抜けたら完成なの?」

「はい、新しい露天はすでに完成しておりまして、そちらから順調に掘り進めていたのですがあと数メートルでというところで」

「では既存の露天側から工事は可能なのですね?」

「え?ええ、すでにある露天側から掘り進めたんですが5メートルほど掘ったところでやはり岩盤に…迂回も考えたのですが予想より」

「大きいのですね、それを抜いたら崩落するということは?」

「主人の知り合いが専門家で調査してもらったんですがそれはないとのことです」

「そうですか…タチバナ様どうなさいますか?」

「え?」

「女将あなたついているわね」

「え?」

「安心なさい、その岩盤ぶちぬいてあげるわ」

「へ!?ど、どのように…」

「うちにはダイスケがいるんですもの大丈夫よ、ね?ダイスケ」

「へ?」

「モネ、ルイ準備を」

「かしこまりました」

「あの…アリスさん?」

「料理をいただきましたし他にも優遇をなさってくださっているお礼をなさってはいかがですか?」

「えぇ!?」

「タチバナ様なら烈震で一撃です」

「で、できますかね!?」

「ではやらずに?」

「ぐっ!…やるだけやってみます…ど、道具はあるんですよね?」

「当然にございます」

「さ、さすがすぎる…」


一宿一飯の恩義ということでタチバナ様にがんばってもらいましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る