第61話
「あれはどんな意味があるトレーニングなの?」
「…わかりません」
「そもそも固定されていないあんな細い物の上でなんで動けるの…」
「…わ、わかりません」
「お、恐ろしいまでの体幹の強さとバランス能力ですね…」
「そうですね…アンリにも尋ねたのですが…驚愕した顔で硬直したまま答えてはくれませんでした」
「じゃあ、あれはタチバナの必殺技シリーズのトレーニングということね」
頭と両手の甲に小鉢に水を入れたものを乗せ直径10センチほどの棒を立てた上に親指だけでお立ちになりさまざまな動きをなさっています…曲芸師にでもなるおつもりなのでしょうか…。
「ふぅ~…」
「おつかれさま、ねぇタチバナそのトレーニングにはどんな意味があるの?」
「ありがとうございます、これは体の重心を確認するのと親指をつかえるようにするためと体幹もきたえちゃおうっていうもの…だと思いたいです」
「こ、効果はわからないのね…」
「効果はありますよ?1つ超強力な必殺技が作れましたからね!」
「え゛…そ、そうなのね…」
「はい、ただどれだけ効果があるかはわからないってだけですね!」
「ナタリー」
「ええ、たぶんアンリから話はいってるとはおもうけど一応ザイードに知らせてくるわ」
忙しく動くナタリーを不思議そうにお見送りになられましたが不思議生物はあなただと私は言いたい。
「技を見るために何が必要だ?」
「え?」
「おめぇの超強力っていう技を見るために必要なもんだよ」
「水瓶はもう割れますからねぇ…なんか硬い樽に水をなみなみ入れて3つ用意してもらえれば見せることはできますよ」
「カミュー出番です、鉄製の樽を3つ用意してください」
「え!?急にそんなことを言われても!」
「無理ならレティーに」
「や、やります!すぐにご用意いたします!!」
カミューは調達能力と工作だけは評価できます。
「どうでしょうか!」
「鋼じゃねぇか!」
「ど、どこでこんなものを…」
「秘密です!どうです?私は有能じゃないですか?」
「おぉ!カミューさん凄いですね!さすがアリスさんの後輩さんですよ!」
「タチバナ様!ありがとうございます!!」
タチバナ様だけが素直に喜んでおります…自分で有能アピールする者は大概ポンコツだとあとのメンバーは理解しているようです。
「まわりに人はいねぇ、今ならこいつの馬鹿技を使っても大丈夫だ」
「ひどい!?」
「タチバナ様とりあえずお見せいただけますか?」
「…まぁいいですよ…まず樽を1つ使いますよ?」
「どうぞ」
背丈ほどあるそこそこ厚みのある鋼製の樽になみなみと水が入っている前にお立ちになり呼吸を整えておりますが…まさか殴って穴でもあけようというのでしょうか…。
「ふぅ~…いきますよ!…はぁ!!!なみなみ掌底!」
『!!!!!!!!!!!!!!』
「おぉ!うまくいった!どうです?かっこいいでしょ!」
強く踏み込んでの双掌底…しかもわずかに時間差を使っていました…樽の中の水が振動して樽ごと破裂してしまいました…。
「ま、まぁ、い、いい技なんじゃねぇか?なぁ?」
「は、はい…」
「そ、そ、そう…ね…」
「おぉ!3人に褒められると嬉しいですね!じゃあ!もっとすごいの見せますね!」
「お、おお」
ザイード達に褒められ有頂天なタチバナ様は次に二つくっつけた樽の前に立ちました…なにをなさるおつもりなのかもうわかりません…。
「これはまだ調子がいい時にしか成功しないんですよねぇ…ふぅ~…」
タチバナ様と樽2つが直線上にならぶとまた深い深呼吸をなさいました…まさか二つ同時に破壊しようとなさっているのでしょうか…。
「いきます!なみなみ掌底!通り抜けバージョン!!」
『……………………………………』
「やった!成功だ!どうです?すごいとおもいません?」
掌底を叩き込んだ樽ではなく後ろの樽だけを破壊なさいました…どういう原理なのかもはや意味不明ですが…これは…。
「…………………」
「あれ?そこまですごくなかったのかな……やっぱ二つ同時に破裂させたほうが派手だったかなぁ……」
「い、いや…い、いい技だったぜ?」
「本当ですか!?」
「お。おう…あとはもっと発動時間を短くできりゃぁいいんじゃねぇか…な?」
「え、ええ…そうね」
「なるほど!さすがですね!ありがとうございます!」
「お、おう……気にすんな」
「タチバナ様…もう一度だけお見せくださいますか?」
「ん?もちろんいいよ!ナダン君!」
最後に残った樽も軽々と破壊してしまいました…これは生物を内部から破壊する恐ろしい技となりますが…当然のことながら…ご本人はそのことにお気づきになられておりません…。
「ザイード……」
「皆まで言うんじゃねぇよ…あのパンチを食らえば貫通しちまう…貫通できねぇものも今の掌底で内側からぶっ壊されちまうんだ…もうどんだけ頑丈な鎧もあいつにゃぁ意味がねぇ…」
「そ、そうですね…」
「すごいですね…タチバナ様…」
「そう?ナダン君ありがとう!けど、これくらいの硬さならトルネードスクリューパンチで簡単に貫通できるんだけどね!」
「そ、そうですか…は、はは…さすがです…」
当然のようにいとも簡単に言っているところを見ると事実なのでしょう…しかし今の問題は…それではありません…。
「タチバナ様…技の名称を今一度お教えいただけますか?」
「え?えっと0距離炸裂パンチとトルネードスクリューパンチ、あとなみなみ掌底です!」
「名前って大事なのね…」
「おう…すげぇ技もこれほどがっかりするとは俺も思わなかったぜ…」
「ね、姉さんお助けしてさしあげたほうが…」
胸をはり鼻息荒く自信満々にお答えいただきましたが…壊滅的過ぎてどこを手直ししていいかわかりません…さすがのフィーネも言葉をはっすることがでていないようです。
「なんてったって必殺技ですからね!やっぱり技名を叫びながら撃った方がかっこいいですよね!」
もはやいたたまれず見るに堪えられません…。
「前にお見せいただいた蹴り技はなんとう名称でしたでしょうか?」
「ジャンピンググレート旋風脚かなぁ、それともローリングいなずまキックのことですかね?」
「………ありがとうございます」
「いえいえ!」
「ア、アンリ…あなた師匠なんだから…あなたが」
「無理よ!手の施しようがないじゃない!」
「じゃあ…ザ」
「無茶いうんじゃねぇよ」
「アリスあなた担当なのだからなんとかしたら?」
「そうね」
「そうですよ!」
「先輩ならできます!」
こういう時だけ立場を押し付けてくるというのもいかがなものかと思います。
「はぁ~…タチバナ様」
「はい?」
「すばらしい必殺技でした」
「おぉ!ありがとうございます!!」
「そこで1つお願いがございます」
「え?なんですか?」
「先ほど教えていただいた技の数々の名称ですが」
「はい」
「それぞれ記念に私達に名をつけさせていただけませんか?」
「!!!!!!!!!!!!」
「え!?それはいいかもしれませんね!ぜひお願いします!」
「ありがとうございます」
「ちょっとアリス!」
「道ずれとはやってくれたわね」
「なんのことでしょう、では尋ねますがすべて私がきめてしまってもほんとうによいのですか?」
「うっ!それはそれで…気に入らないわね」
「ではそういうことで」
全員が名をつけやすそうな技を奪い合うように話し始めました。
「あの、ちなみにタチバナ様はどの技が一番気に入っておられるのですか?」
「え?そうだなぁ…爆裂流星群アタックも捨てがたいけど…やっぱり0距離炸裂パンチか…んートルネードスクリューパンチもすてがたいかな!」
「そ、そうですか」
「ナダン!掘り下げないで!」
「あ、新たな難題ワードが…」
「タチバナ様…爆裂流星群とはどのような…」
「あぁ、これを思いっきり投げつけてそのすきに距離をつめて連撃をいれる大技です!」
直径1センチほどの金属の球を私が持たせている道具袋から一掴み取り出しみせてきましたが…どうやら散弾のようにお使いになられるおつもりのようです…。
「でもね?この技はべつにこの球がなくてもできるのが最大のミソでね!」
「へ?」
「角度が大事なんですけど、この角度でこうやって地面を殴りつけると地面がくだけて似たような効果になるんだよ!ああ!あとまだ完成してないけど水でもやれる予定なんだよ!」
「…そ、そうですか」
「うん、完成したらナダン君にもコツをおしえてあげるね」
「あ、ありがとうございます…たのしみにしています」
「おぉ!がんばるよ!」
突飛な発想力を形になさる出鱈目な力がおありになるので…これはもう止めようがありません…。
「なんか疲れちまった…わりぃが護衛に回らせてもらうぜ」
「お、俺も行きます!」
「わ、私もご一緒いたします!」
「私はエミリー様の様子をみてくるわ!」
ナダンに続いてレティーとアンリすら逃げ出してしまいました…。
「タチバナ…すごい技だからすこし考える時間をくれるかしら」
「もちろんですよ!」
「ありがと…」
フィーネが渾身の仕切り直しを口にしてなんとか場を納めました…問題を先延ばしにしただけですが今はそれで十分です。
「タチバナ様…まずはご入浴をなさったほうがよろしいかと」
「え?そうですね!」
「私がご案内します」
「ナタリーさんありがとうございます」
ナタリーがタチバナ様をお連れしてくれました。
「カミュー後片付けを」
「は、はい!」
「はぁ~…常に想像とは全然違う成長をみせるわね」
「フィーネでも見えないのであれば相当ですね」
「体つきも凄いことになっていました」
「そうでしょうね」
「筋密度が異常です!」
「オーラも凄いことになっているわ」
「そうですか」
「ええ、あれで性に目覚めたらすごいことになるわよ?」
「目覚めることなどあるのでしょうか」
「あはははは!どうかしらね!」
「理性が欲よりうわまわっていらっしゃるので大丈夫だとおもいます」
「そうね」
「ですが今朝もですがお疲れがたまっていると布団がもりあがるほどの膨張なさってますからね!いつ目覚めるかはわかりませんよ!」
「カリン…そういうところだけはしっかり見ているのね…」
「え?えへへへへ…つい!」
照れ隠しで笑うカリンをあきれたように見ているフィーネですが一瞬何かを思い出していたような気がします…はぁ~下世話な話は聞いているとつかれます。
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