第57話

「モネ!ルイ!カミューはどこ!?」

「その辺で野垂れ死になさっているのではないでしょうか」

「もうすぐ城へ行くのよ!?探してきて!」

「…かしこまりました」

「そのままでもよいのでは」

「馬車の説明を城でしてもらわなきゃならないのよ!」


本来ならば事前に移動手段の確認を城のものがなさるのですが今回は王妃様が必要なしと判断なさったため当日お披露目となっています…カミューは馬車の作成を任されつい1時間前ほどまで最終チェックをしていました。


「アンリ、ザイード準備はできてるわよね?」

「もちろんよ」

「抜かりはねぇよ、なぁ?」

「はい!…それで姉さん」

「なに?ナダン、時間がないから用件を手短にいってくれる?」

「タチバナ様はどちらに?」

「え゛…」

「はぁ~…私がみてきます」


肝心のタチバナ様を忘れるとは…まぁ、今日は全員がバタバタとしていて誰もついていなかったのでどうせ部屋で右往左往なさっていることでしょう。


「がぁ~…ふゅ~」

「………………」


私たちは最大のミスを犯したかもしれません…。


「仕事以外が駄目だというのを忙しさのあまり失念しておりました……ふん!」

「ふぐっ!がっは!」

「おめざめですか?」

「か、川がみえました……」

「渡らずにもどってこられてなによりです」

「はぁはぁはぁ…」

「そのようなことよりも城へ参りますのでご準備……はぁ~このような日に限って……」

「え?」

「最後にいつご入浴を?」

「え!?い、いつだったかな……」

「今すぐ浴室に移動を」

「は、はい!って…え?ア、アリスさんなんでついてきて…」

「お時間がございません、私が洗って身だしなみもお整えいたしますのでお急ぎを」

「いやいや!自分で!」

「仕事以外ダメなが時間内にそれをおできになられるとでも?」

「が、がんばり…」

「無理です、このやりとりも時間の無駄なのでさっさと脱ぐ!」

「ひぃぃぃ!!!た、タオルもないのに!!!」


本当にこの方は手が焼けます、もうみているというのに。


「う、うぅ…もうお婿にいけない…」

「元々いけるとでも思っておいでだったのですか?」

「うぐっ…」

「はぁ~…頭をこちらに」

「え?は、はい…あ、ありがとうございます」

「いえ、では参りましょうか」

「はい」


髪のセットもおわり服装も登城用のあらたなものに着替えましたしもおつけしたのでこれでタチバナ様の準備は万全です。


「随分時間がかかったようね」

「す、すみません…寝てました…」

「申し訳ありません!私どもの不備に!」

「いや、モネちゃんもルイちゃんも起こしてくれたの覚えてるから…」

「ぎりぎりまで仕事をなさっておいででしたので仕方ありませんよ」

「ナタリーさんありがとうございます…」

「タチバナさん、こちらをおのみください」

「カリン先生ありがとうございます…ん!?かぁ~!!!」

「ちょっとカリン!なにを飲ませたのよ!!」

「お疲れの体に効くお薬ですよ」

「あ、ありがとうございます」

「はぁ~…あとは全員乗るだけですね?」

「ええ、今最終チェックをしているわ」

「わかりました、ではこちらに乗っていてください」

「え?あ、ありがとうございます…」

「フィーネ、カリン、タチバナ様を」

「わかったわ」

「おまかせください」


手を引き馬車に案内したのであとは二人に任せておけばいいでしょう。


「カミューは?」

「あちらです」

「………………」


荷馬車の中に荷物と一緒くたにされているのがうっすらみえたので…まぁいいでしょう……。


「出発します!」


私達の馬車はナダンが御者をつとめてくれます、ほかの数台の馬車はフィーネのが御者をつとめてくれるようです。


「ちょっと!」

「お静かに、御髪と服装が乱れてしまいます」

「ぐぬぬぬ…」


移動中のわずかな時間にもこの方はウトウトなさりとうとう私の膝の上に倒れるようにお眠りなられてしまいました。無理やり起こして髪型が崩れないようにきをつかいます。


「タチバナ様、起きてください」

「ん?」

「城につきましたよ」

「ふぇ!?す、すみません!」


城につき急いで乱れた衣服をなおしてさしあげカリンにを飲まされたタチバナ様は無事に王妃様とエミリー様とお話になられ出発することができました。


「なんですか?この馬車ぜんぜんゆれません!シートもふかふかです!」

「まぁ、車よりは劣るけど馬車の中では快適なほうじゃないかしら」

「タチバナ様が設計をなさり今回のために作った特別なものにございます」

「すごい!タチバナさんはほんとうにすごい方なのね!」


ロキとテトを抱きしめながら興奮するエミリー様にナタリーが自慢げにしておりますがタチバナ様とカミューの功績だと思います。


「それでタチバナ様は?」

「少々お疲れのようでお眠りになられております」

「そうですか……もしかして私のために相当なご無理をさせてしまったのでは……」

「いえ、そのようなことはありませんのでお気に病むのはおやめください」

「はい」


今回は私とナタリーとフィーネがエミリー様に同乗させていただいており、後ろの馬車にはカリンとモネそしてルイがお眠りになられているタチバナ様と朽ち果てようとしているカミューの面倒をみてもらっています。


「おいおい…あいつまだ寝てるのかよ」

「そのようで」

「大丈夫なのか?」

「はい!ただこの一週間ほぼお眠りになられていなかったらしいので今はゆっくりさせてあげてほしいです」

「え!?そ、そんなにお忙しかったんですか?」

「ええ、8つの引き受けていた依頼をこなし馬車の改良もなさってくださったのよ」

「さ、さすがタチバナ様……すげぇ……」

「エミリー様には内緒にしておきなさいね」

「は、はい」

「んであのカミューポンコツも一緒にねてんのか」

「はい、3日ほど徹夜をしたようで朽ち果てようとしております」

「今回は変な物くってねぇだろうな」

「それは大丈夫かと」

「わからねぇぞ?ああいうナチュラルなやつはなにやっかわかったもんじゃねぇからな」

「ははは、ザイードさんさすがに大丈夫ですよ!徹夜するためにせいのつくものでも食べてたなら別ですけどね!」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「カリン!」

「は、はい!」

「私もいくわ!」


ナダンの言葉に一抹の不安が頭をよぎったのは私だけではないようです!


「カリン様!タチバナ様のご容体が!!」

「なっ!?いまいきます!!」

『………………』


不安が的中したような気がします……。


「な、なぁ…足ひっぱられるまえにあいつ捨てていったほうがいいんじゃねぇか…」

「奇遇ですねザイード…私も今一瞬それが頭をよぎりました」


カミュー………………。


「はぁはぁはぁ……」

「うぅ…すみません……まさかご一緒になるとは思ってもおらず…で、でもですね!タチバナ様にお会いする前にマウスウォッシュするつもりだったんです!!」

「だ、大丈夫ですから……気にしないでください……うぉ!?」

「もうあなたはタチバナ様に近寄らないで!」

「ちょ!ナ、ナタリーさん!はなし…」

「うぅ、本当にもうしわけありません…」


タチバナ様を胸に抱きしめまるで子供が大事なものを取られない様にしているようにも見えますがあれではタチバナ様がもちません。


「ナタリー、タチバナ様が死んでしまいます」

「え?タ、タチバナ様!?大丈夫ですか!?」

「あっはっはっはっは!あいつ乳で窒息しかけてやがるぜ!」

「姉さん…」

「もう!二人ともなにをしているんですか!タチバナさんもう大丈夫ですからね、私がつきっきりで容体をみてさしあげますから」

「まちなさいよ!どこに連れ込もうとしてるのよ!」

「添い寝しながら容体をみなきゃなりません!主治医としての判断です!」

「そんな治療あるわけないでしょ!」

「はぁ~…モネ、ルイ、タチバナ様をやすませてあげてください」

「アリス様、かしこまりました」

カミュードブは荷馬車に案内いたしましょうか?」

「大丈夫です、カミューはまず身だしなみを整えてきてください」

「……はい」

「アリスさん?なにかあったんですか?」

「いえ、なんでもございません」

「そ、そうですか……」


はぁ~…困ったものです……。


「本日の宿に到着いたしました」

「なにかあれば対応してくれるんでしょ?」

「あれだけおめぇの式がウロウロしててそんなことあるのかよ」

「さぁ?今はまだ大丈夫かもしれないわね」

「はぁ~…まぁ俺とアンリと」

「タチバナには知らせなくても大丈夫よ、ね?」

「にゃぁ~…」

「はっ!おめぇらが動くなら俺なんてますますいらねぇだろ」

「ワン」


いつのまにかザイードも抵抗なくロキたちを撫でたりしています…慣れとは恐ろしいものです。


「物凄く豪華な宿なんですけど」

「王族がおとまりになられるのですから当然です」

「ああ、そうですよね」

「エミリー様にはテトがついていますのでご安心ください」

「おぉ~さすがテトだ!それなら安心ですね!」

「そうですね」


食事もエミリー様のお部屋で食していただき我々も各自の部屋へ移動しました。


「お?さすがだなぁ、起きてたんかよ」

「ザイードさんのほうがはやかったじゃないですか」

「へっ!俺は一応本職だからなぁ…んじゃ今日は共闘といくかぁ」

「そうですね、近寄られる前にやれたらいいですね」

「まぁな、とりあえず全部はるなよ?情報がほしいからな」


気配を感じたからきたけど、やっぱザイードさんはすごいな、かなり前からきたみたいだ。


「何人いるとおもう?」

「んー…そうですねぇ、俺が数えられるのは1…6?」

「いいところだが正解は17だ」

「えぇ…あ、あそこか」

「正解だ、んじゃいくぜ?」

「はい」


宿の周りの物陰や屋根の上に隠れている人たちを数えたけどまだまだだった。


「こっちは二人だ、めんどくせぇから全員で一気にかかってきてくれねぇか?」

「!!!!」

「あ、そちらにいる方々もでてきてくださいね」

「………………」


ザイードさんが少し広い通りの真ん中でこえをかけたけど全然でてきてくれない……。


「こういうときってどうしたらいいんですか?」

「ん?ああ、あの屋根からかおだしてるやつに石でもなげつけてやりゃぁいいんじゃねぇか?」

「ほぉ!やってみます!」

「おもいっきりやれよ?かわさるぜ?」

「わかりました!」


さすがザイードさんだぜ!場数がちがうからな!


「これでいいか……ふん!」

「!?ひっ!」

「え………………」

「おらおら!隠れてても狙い撃ちすんぞぉ!」

「くっ!!!」

「えぇ…」

「くっくっく!すまねぇな!」

「俺…殺人犯に…」

「なにいってんだおめぇ、ここでこいつら仕留めねぇと姫さんをやったあとはまた別のターゲットをやるんだぜ?」

「え…」

「野放ししてりゃぁこいつら金を積まれりゃぁ誰でも何人でもやるんだよ、いいのか?」

「…………くぅ!俺は姫様もみんなも守ります!」

「それでいい…いくぞ!」

「はい!」


満足げに笑って背中をバンとたたいてくれたおかげでモヤモヤがすこしすっきりした気がした。


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