第24話

「では、いってきます!」

「はい、いってらっしゃいませ」

「にゃっ!」

「あぁ!スマホ忘れてた!1週間電源きりっぱなしでした!」

「……………一応電源をお入れになりお持ちした方がよいかと」

「……………はい…うぉ!?すげぇ着信の数だ!」

「そ、そんな馬鹿なっ!タチバナ様のスマホですよっ!?」

「そ、そんなに驚かなくても……全部職場からだ」

「驚かせないでください、どうせ今から行くのですから気にしてもしかたありません、さぁ遅れてしまいますよ?」

「そうですね!じゃあ行ってきます!」


金曜日になった、最後の仕事としてデスクのかたずけと昨日アリスさんがくれた退職届をもって家を出た。今日はクエストはやらないとアリスさんにいわれた。


「おはようございます」

「!?大輔さん!!!!」

「え?大輔!」

「うぉっ!」


職場についていつもどおり鈴木さんと田中さんに挨拶をすると二人は一瞬驚いた顔をしたあと抱き着いてきた!あぁ二人とも朝からすげぇいい匂い…って!やばい!どうしたらいいのこれ!?


「あ、あの……」

「大輔さん!やめるって本当ですか!」

「え?ええ…あのそれよりちょっと離れ…」

「あんたが居ない1週間地獄だったんだからねっ!」

「え?それはどういう…」


なんとか二人を引き離しデスクに座って話を聞いた。


「係長ぜんっぜん!仕事してくれないのよ!全部わたしたちに回してくるの!」

「え?俺のやっていた仕事もですか!?」

「そうなんです!引継資料があればまだいいんですけどそれもなかったんで…」

「それは…すみません」

「い、いえ…けどなんで急に退職を…」


悲しそうな顔をする鈴木さんに耐え切れず正直に退職の話をした、まぁアリスさんとかのことは言えないから、知り合いがフリーになる後押しをしてくれたことと、会社がそのほうがメリットがあると判断したことだけだけどね。


「そ、そんな…」

「それって…会社に売られたってことじゃん!!信じらんない!!」

「社長はいい人だし、ずっとお世話になってた人ですから俺も納得して転職することにしたんで、ただ二人には迷惑をかけたみたいですみません」

「大輔さんが悪いことなんてありません!」

「そうよ!あんたを売った会社と仕事ができない上がわるい!」


二人は俺を攻めることはしないんだ、やっぱり二人はやさしい。


「立花!」

「係長おはようございます、約束通りデスクを片付けたら帰りますので安心してください」

「そ、そんなことより!お前1週間電話にもでないでどこに行ってたんだ!」

「え?普通に次の仕事の準備をしていましたが?」

「電話にもでない!家に行っても常に留守だったろ!こっちはそのせいで大変だったんだぞ!」

「大変だったのは二人で係長は丸投げしてただけみたいですが?」

「なっ!」

「本来俺は1ヶ月いるはずだったのを1週間でいいと言ったのも、その1週間も休暇消化でいいと言いたのも、俺からなんか引継もいらないと言ったのも係長じゃないですか」

「うっ!そ、それは!定時でかえるお前なんかがあの量の仕事をこなしているなんて思わなかったからだ!」

「……係長」

「マジでいってんの…大輔の仕事量しらないとか…報告受けてたはずじゃん…」

「う、うるさい!俺は俺で忙しかったんだ!!」


二人の視線と言葉に係長が逆切れをした。なんなんだこの人…そんなことより大声でそんなこと言ってもいいのかな…。


「ほぅ…岡崎君…色々話を聞かなければいけないようだね」

「あぁ!?…え゛…しゃ、社長…なぜ」

「立花君は会社の一方的な理由で退職するんだ、最後に礼と謝罪をしにくるのは当然だと思うがね」

「そんな、社長にはこれまで大変お世話になったのにそのようなことは」

「立花君そういってくれて幾分きもちが楽になる…すまないね」

「いえいえ!こちらこそわざわざご足労していただいて!」

「それは当然のことだよ…それに聞かせてもらったしね…君たちにも迷惑をかけてしまったようだね、すまん」

「いえ!そのようなことは!」

「そうですよ!社長が悪いわけじゃありません!悪いのは毎日仕事もしないで会社の子にちょっかい掛けたり出会い系アプリや競馬しかしてない係長その人ですから!」

「なっ!のりこ何を言って!」

「岡崎係長、何度も言いますがしたしくないのに名前で呼ぶのやめてもらえます?」

「なっ!」

「このさいだから言わせてもらいますがこの会社の若い子だったり私やみのりにセクハラまがいに声をかけたり触ってくるのも何度もやめるように言ってますよね?」

「…君って男は…」

「しゃ、社長!ちがうんです!これは!!」

「それはこれから調べればわかることだ!」

「うっ!」

「君たちには色々迷惑をかけた…社長として社員を管理できていなかった私の責任だ、申し訳ない」

「そんなことありません、悪いのはその人で私達は社長に1つだけしか不満はありません!」

「そうか…ありがとう…それで1つの不満とはなんだい?」

「大輔…立花さんをやめさせたことです!」


田中さんが俺のスーツの腕をぎゅっとつまむように握りながら社長にいった。


「それはすまない…私も心苦しいんだ…しかし役員会議できまったとこでね…」

「い、いえ…すみません…」

「すまないね…そのかわり今後の職場環境の改善には全力をつくさせてもらうよ」

「ひぃ!」

「さきほど田中君は君といったようだが?」

「おっしゃっている…意味が…」

「そうか…部長小野君課長中川君を交えてゆっくりと話をしようじゃないか」

「社長!おゆるしを!」

「いいから君は来なさい!立花君…最後の最後まで迷惑をかけてしまったね」

「いえ、社長…大変おせわになりました…それと今後もよろしくお願いします」

「!あ、ああ!約束させてもらうよ!また機会があれば食事にいこう!」

「はい!是非!」

「ありがとう…さぁ!さっさとこい!」


社長が係長をつれていった、係長はまるで死刑執行される囚人みたいにそのあとに続いて行った。


「ふぁぁ!!!やってやったわ!」

「ふふふ、あそこまで言って大丈夫かな?」

「あんなやつら首でいいのよ!それにこれで改善しなかったらこっちから辞めてやるわ!」

「えぇ!?」

「ちょっと!そんなこというのやめてよ!」

「いいじゃん!なんかあったらあんたもやめれば」

「無職になっちゃうわよ」

「大丈夫よ!ね?大輔社長

「え!?」

「大輔の腕があれば美人社員の2人くらい雇えるくらいにはすぐになるわよ」

「あっ!そっか!」

「いやいやいや!!そんなの無理ですって!鈴木さんもあっそっか!じゃないですよ!!」

「ふふふ!」

「私は結構本気なんだけどなぁ!」

「田中さんマジで勘弁してくださいよ、俺に二人の生活の責任なんてとれませんって」

「なにいってんの?二人で収まるわけないじゃん」

「え?」

「この際だからぶっちゃけるけど、この会社で大輔に目をつけてる子何人もいるんだからね?」

「え?そんなわけ…他の部署の方とは接点もないですし」

「大輔ぇ、女の情報網を甘く見たらだめよぉ?」

「え゛…」

みのりが一緒に楽しそうに食事してるって皆あんたのこと気になって調べてたのよ」

「えぇ!?」

「のりこ、あのってなによあのって…」

「将来有望株のイケメンから誰に誘われても冷たく断ってたあんたのことよ!」

「そ、それは…」

「そんなあんたとしまいに私までちょくちょくご飯してるんだから気にもなるでしょ」

「そ、そうだったんですね」

「そうそう!だからあんたが軌道に乗って人手をあつめてるっていったら結構あつまっちゃうかもよ?」

「そ、それは大丈夫ですよ!一人でこなせる量でセーブしますから」

「んじゃ、セーブしなきゃ私達くらいは雇えるってことじゃん?」

「そんなわけないでしょ」

「まぁまぁ、とりあえずなんかあったら連絡したいからさ、連絡先交換しようよ」

「え?」

「わ、わたしも交換してください!」

「え!?えぇ!?」

「RINEでいいからさ!」

「やってないです」

「え?やってないの!?」

「は、はい」

「アプリははいってんだよね?」

「え?ええ、購入時から入ってますから」

「じゃあ、アカウント作ってよ!教えるから」

「わ、わかりました」


その後、数分かけてアカウントをつくると田中さんが自分を登録してくれた。


「これでよし!ふふふ!電話番号も入れといたから」

「あ、ありがとうございます」

「こっちから頼んだんだからいいって!それにフレ1号だしね!」

「!!!!!!わ、私も登録するので貸してください!」

「うぉ!」


田中さんの言葉をきいて鈴木さんが焦ってスマホをうばい自分を登録してしまった。

その後、二人にきちんと引継をしてお昼少し前に退社できることになった。

最後に数か月後に結婚式がある中野明夫に退社と引越しの話をして驚かれた、引越し先がきまったら連絡することをつたえ退社した。


「おぉ~高級車だ」

「タチバナ様お疲れ様です、お乗りください」

「へ?アリスさん?」

「タチバナはやく乗りなさいよ」

「えぇ!?フィーネさんも!?」

「驚くのはそのへんでお早くおのりに」

「は、はい」


周囲の視線が怖くなったので急いで車に乗り込むと後部座席が対面式で俺と横に座ったアリスさんの前にはテトを膝に乗せ優雅になでているフィーネさんと緊張しているカリン先生がいた。


「あ、あのこの車は?」

「フィーネのものです」

「そ、そうなんですね、すごい車をもってるんですね」

「そんな大したものじゃないわ」

「そ、そうですか…それでどこに?」

「新居にございます」

「へ?」

「昨日話したじゃない引っ越すって」

「き、昨日の今日で!?」

「すでに引越しも終了しあらたに必要なものも購入済みにございます」

「はやい!仕事がはやすぎる!!」

「おそれいります」


驚愕しているうちに少し古びた4階建てのビルについた。


「ビ、ビルですね…」

「はい、職場も兼用ですので」

「あ、ああ、なるほど…そ、それで何階ですか?」

3階と4階にございます」

「じゅ、住居部?」

「はい」

「1階と2階は?」

「職場です」

「へ?」

「このビルまるまるなんだからわけるのは当然でしょ」

「えぇぇぇ!?家賃いくらなんですか!払えませんよ!」

「ご安心をご購入済みですので家賃はかかりません」

「え…」

「王女様救出の際の報奨金で購入いたしましたので」

「緊張してて聞いてなかったんですがビルを買えるくらいもらえたんですね」

「はい、それとすでに内部はリフォーム済みにございます」

「え!?だから速すぎるって!」

「おほめ頂きありがとうございます」

「とりあえずはいりましょ、疲れたわ」


つかつかと中に入ってしまったフィーネさんを追うように俺たちも新居にはいった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る