第20話
「そうなんですよ、結局3日間しか安藤さんと一緒になれませんでしたよ」
「そうなのですね」
「ええ、けど俺のいる部署はシステム関係なんで元々派遣さんとかがこない部署なんで部署変更は安藤さんにとってもよかったんじゃないですかね?」
「そうですか」
「はい、外注は元いた上司がフリーランスになって今でも引き受けてくれてますしね」
安藤さんがきてから4日目の朝、なぜか急に部署変更になったと係長から言われた。まぁ俺の顔を見たら逃げるから仕事になってなかったし安藤さんの分も結局俺がやっていたからこの3日間夜のクエストもこなせずにいたからいいんだけどね。
「今日は金曜の夜なんで土日あわせて一気にやってしまいたいですね!」
「心得ております、まずはカードをご覧ください」
「はい」
〇 登 録 者 タチバナ ダイスケ
〇 L V 48
〇 ラ ン ク E+
〇 最高達成LV S
〇 達成回数 40
〇 未達成数 0
〇 保有金額 83,600ガル
〇 登録従魔 テト(クトゥール♀)
「ふぁ!?」
「どうなさいましたか?」
「800万こえちゃってる!アリスさん!800万こえてますよ!!」
「円換算ですとさようにございますね」
「な、なんか…たいした苦労もしていないのに…怖いですね」
「タチバナ様が頑張った結果かと、それにテトやこの部屋の必要なもの、快気祝いの食事代など経費はきちんと支払って残りがこれです」
「そ、そうだった…できないなりに一生懸命がんばったからかな…」
「そうですね」
「なんか対面で仕事をして感謝されるとやる気がでるし、結果をすぐ相手にみられるのでガッカリさせたくもないんで自分なりにがんばってるつもりなんですが…それにしてもこの金額は怖い!」
「質素が染みついてしまっているからですね、稀に見る小物感はいたしかたありません」
「ふぐっ!……あと数か月後にはまたあのデスマーチが始まってしまうんで今のうちにがっつりとクエストをこなさなきゃ」
「そのデスマーチとは何でどれほどの期間を要するものなのですか?」
「だいたい半年から9か月くらいのスパンでくるシステムの一斉メンテなんですが期間は速くて10日、なにか不具合や変更箇所があれば20日とか1か月というのもありました」
「そうですか…ふむ、タチバナ様」
「はい?」
「そろそろ独立なさってはいかがですか?」
「独立!?フリーにってことですか?」
「はい」
「フリーになればたしかに時間的余裕はできますけど、俺は他につながりがないんで仕事の依頼をもってこれませんよ!」
「そうでしょうか?元上司の方はやられておいでなのですよね?」
「そうですよ!そもそも元上司は陽キャでしたし!自慢じゃないですけど俺コミュ障ですからね!」
「…………」
「…………」
「やめて!テトまでそんな目でみないで!」
「はぁ~…とりあえずこちらもそのように長期間クエストをこなせないのは問題なのでこちらでも対応を考えさせていただいても?」
「対応ですか?」
「はい、今後のこちらでの仕事も私が管理可能なようでしたら独立なさってくださいませんか?」
「え?アリスさんそんなことまでできるんですか?」
「上に相談してみてですが」
「アリスさんの負担が半端ないんじゃ」
「要領の問題ですので大丈夫です」
「そ、そうですか」
「ということで、上に報告させていただき必要な対応を取らせていただきます」
「え!?決定!?」
「では、本日のクエストですが」
「もう触れさせてもくれないっ!!??」
その後、独立の話題には一切触れさせてくれないで異世界で朝市の品物を運ぶ仕事をこなし金曜の夜がすぎていった。まぁいくらアリスさんといえどそう簡単にできる問題じゃないしいずれって感じで考えておけばいいよね。
「よぉーし!ダイスケ引け!」
「はい!うぉぉぉぉ!!!!」
「よぉーし!いいぞぉ!もうちっとだ!よし!ゆっくり緩めろ!」
「ぐぎぎぎぎぃぃ!は、はいぃぃ!!」
「オケーだ!」
「ふひぃぃぃぃ」
「親方!あいつ会うたびバケモンになってきてないっすか?」
「ああ?あいつはギルドで色々やってっから俺らとはLVの上がり方がちげぇんだろうよ」
「そ、そうっすか…もう最初のころの面影もねぇっすよ」
「そうだな!まぁ中身が変わってねぇんだ!いいじゃねぇか!」
「まぁそうっすね!」
土日は何度目かの親方の手伝いをした、今回は空き家の屋根の修理や壁の補修なんかで資材を屋根に滑車を使って引き上げたり色々、力仕事をこなした。
「おう!ダイスケご苦労だったな!今回もいい仕事してくれたぜ!」
「ありがとうございます!」
「くっくっく!ほらこれ依頼書だ!」
「はい!また何かあれば声をかけてください!」
「おうよ!」
「ダイスケ!今度時間があったら一杯やろうぜ!」
「おぉ!ぜひぜひ!」
「じゃぁまたな!」
「はい!ありがとうございました!」
親方や皆はいい人たちだからすごくいい雰囲気で仕事ができていつ引き受けてもやりがいを感じてしまうな!資材を運ぶことしかできないけど………。
あ、そうだ!資材を運んでた時に見つけた蜂と巣を駆除したんだった、たしかそういうのはナタリーさんに渡せばいいってガルドさんに教えてもらったんだった。
「ナタリーさん、すみません」
「はい?タチバナさんどうなさいましたか?」
「今日の依頼の途中であのでかい蜂と巣をみつけて駆除したんでもってきたんですが」
「え!?わ、わかりました、それでどちらに?」
「荷馬車に積んであるんですけど」
「わかりました!すぐに職員を向かわせますので!」
「お願いします」
なんだろ?今回は毒ユリを使わないで袋と煙でいぶして駆除したから心配なのかな?
「お、お待たせいたしました…あれはこちらですべて引き取ってもよろしいのですか?」
「俺が持ってても仕方ないので引き取ってもらえるならうれしいんですが」
「かしこまりました」
「いつもはアリスさんにお願いしてるんですけど、今回は突発的なものだから迷惑かなって思って、ガルドさんがナタリーさんに持っていけばいいって前にいってくれたのを思い出したんでもってきたんですよね」
「そ、そうですか、こちらはいつお持ちいただいてもかまいませんよ」
「いえ、次からは私に持ってきていただいてかまいません」
「え?アリス」
「あれ?アリスさんもここに用事があったんですか?」
「タチバナ様の帰りが遅いのでこちらに顔をだしてみただけです、それにテトは今日はカリンの元にいるので」
「ああ、そうなんですね!すみません遅くなりました」
「いえ、それでタチバナ様、次からはこのような場合でも私が対応いたしますので私の元へもってきてください」
「わかりました!あ、ついでもこれ今渡していいですか?」
「はい、たしかに」
「じゃあ、俺テトを迎えに行ってみます」
「かしこまりました、向こうの家に夕食をご用意しておりますのでカリンを誘ってお戻りください」
「おぉぉぉ!!ありがとうございます!」
異世界にきてたまにだけど週末はカリン先生も食事にきてくれたりして家がにぎやかで楽しいんだよなぁ!これもアリスさんのおかげだなぁ!
「ちょっとぉ~、別にギルドに直接納品してもいいじゃない」
「タチバナ様は交渉などができる方ではないので」
「値切ったりしないわよ!」
「それになにか吹き込まれでもしたら困りますので」
「それこそしないわよ、そっちと揉めるはさすがの私もごめんよ!」
「個人的なことも含めてです」
「………そんなことしないわよ」
「…………」
やはり女性関係も私が目を光らせなければなりません、タチバナ様の財も含めて守るのも担当としての役目です。
「さてと!テトはいい子にしてるかなぁ!おっと!すみません」
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんって、もしかしてタチバナ様ですか?」
「え?そうですが……どちらかでお会いになりました?」
「い、いえ。私はアリス先輩の後輩でアニーの担当をしておりますカミューと申します」
「え?安藤…アニーさんの担当さんですか、アリスさんの後輩なんですね、よろしくお願いします」
「え?は、はい!こちらこそ!それでタチバナ様はこちらにどのような御用が?」
「ああ、カリン先生のところに行くところだったんですよ」
「え?カリン先輩のところにですか?どちらかお怪我でも?」
「カリン先生の後輩でもあるんですね、いえ怪我じゃなくてテトっていう黒猫を預かってもらってるんで引き取りに、ついでにカリン先生も食事に誘おうと思いまして」
「く、黒猫ですか…」
「ええ、すごく賢くて可愛い子なんですよ」
「そうですかって!え!?カリン先輩を食事にお誘いになるんですか?」
「え?そうですけど…結構週末は一緒に夕飯を食べてくれるんですよね」
「そ、そうなんですね…」
「ええ、時々アリスさんが作ってくれるんでそれを皆で食べてるんですよね」
「えぇ!?あのアリス先輩がっ!?」
「あの?」
「い、いえ!」
「タチバナ様、遅いとおもっていたらこんなところにいらっしゃったんですか?」
「ああ、ぶつかりそうになってつい!ではカミューさん俺はこれで!」
「え!?あ、は、はい…」
「カミュー?」
「ひぃぃぃぃ!!せ、先輩!ほんと偶然だったんです!!すみません!!」
「はぁ~…次からは気を付けてください」
「わ、わかりました!」
油断も隙もありません。
「立花ちょっときてくれ!」
「え?はい」
楽しい日曜日をおえて翌日、出社して始業すこし前に係長と部長そして課長の3人に呼ばれ向かった先は社長室だった。
「やぁ、立花君急に呼び出してすまんね」
「いえ…あのどのような要件でしょうか…」
「ふむ、実はね?あるところから君を独立させて支援したいと申し出があってね」
「へ?」
「我が社としては痛い話なんだが…君が独立することによるメリットもまた大きい話でね…」
「そ、そうですか…わかりました…社長には色々お世話になってますしいつまでに引継ぎを終わらせればいいですか?」
「今月いっぱいでどうかね?」
「大丈夫です!どうせ定時きっちりに帰っているこいつがやってる程度の仕事でしたら私だけでも十分ですよ」
「ほぅ?そうか…なら君任せようじゃないか…では立花君引継ぎを」
「それも必要ありません、私が振り当てている仕事ばかりなので」
「そうか」
「はい、ですので今週一週間もいてもらえれば十分ですよ」
「…わかりました、では引継ぎも必要ないようですので独立の準備もありますし今日から1週間休暇消化でもいいですか?」
「ああ問題ない!そのまま帰ってくれてかまわんよ」
「わかりました…では私はこれで、金曜日にデスクのかたずけなどをしに来ますので」
「わかったわかった」
「立花君、急な話ですまんな…なにかあればいつでも言ってきてくれ」
「ありがとうございます。社長には良くしていただきありがとうございました」
あそこまであからさまに要らないと言われてしまえば、さすがの俺も引くに引けない。とりあえず急いで帰ってアリスさんに話をきいてみよう。
俺はたまたま休憩中でいなかったのか鈴木さんや田中さんにも何も言わずデスクに戻り荷物をもって退社した。
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