第61話

 町は、静かなものだった。


 そんな静かな町をヒューイは、いぶかしむ。


「この規模の大きさの町なのに、どうして住民が一人も見当たらないんでしょうか?」


 ヒューイの言い分は、もっともである。


 ヒューイとゲリアが町を周っていると、男が現れた。巨漢の男は軽々と巨大な斧を持っており、ヒューイたちを睨んでいた。その表情は、とてもではないが薪を作る様子には見えない。


「よそ者が、この町に何の用だ」


 巨漢の男は、尋ねた。


 ゲリアが自己紹介しようとすると、それをヒューイが制した。代わりにヒューイ自身が、口を開く。


「私たちは、この町に人探しに来たものです。この町にシルメとユーファという二人組が来ませんでしたか?」


 ヒューイの言葉に、巨漢の男はにやりと笑う。


「おまえら、武器を持っているな。ということは、この町を襲いに来たヤツラだろ」


 巨漢の男は、そう言った。


 ゲリアは、きょとんする。ヒューイは、舌打ちをした。


「どうやら、人の話を聞かないタイプのようですね」


 ヒューイは、槍を構える。


 男はヒューイに向かって、斧を振り下ろす。男の攻撃は力強いが、ゲリアから見ても大味な攻撃であった。


ヒューイは、その攻撃を楽々と避けた。


その避けたヒューイに、男が斧の横なぎを喰らわせる。男の最初の一撃を避けるために体制を崩していたヒューイは、次の反撃に移れないでいた。


 ゲリアは二人から距離を取りながらも、少し慌てていた。ゲリアの目には、ヒューイは苦戦しているように見える。男は腕力に有無を言わせてくるタイプだと思ったのだが、意外に素早い。その速さに、ヒューイは苦戦しているようである。


 男は必要に、ヒューイとの距離を詰めてくる。


 男が持っている斧は、持ち手の部分が短い。そのために、距離を詰めなければ攻撃があたらないのだ。おそらく、あの斧は戦闘用のものではない。そのため、攻撃しづらい構造をしているのだ。それでも、ヒューイを追い詰める男の手腕はさすがとしか言いようがない。


「おいおい。強そうな槍を持っているわりには、よけ続けるだけかよ」


 屈強な男は、そう言ってヒューイのことをせせら笑う。


「あなたの殺すのはいつでもできますよ。でも、殺すと厄介なことになりそうだったので止めているんです」


 ヒューイは、男の攻撃をよけ続ける。

 

 その顔は、涼しいものだ。もしかしたらヒューイは手加減しているのだろうか、とゲリアは思った。


 ヒューイは、突然しゃがむ。


男の斧が、ヒューイの頭上をかすめた。そして、ヒューイは槍を男の望元に突き付けた。


「田舎の力自慢にしては、強かったですね」


 ヒューイに槍を突き付けられた男は、悔しげに唇を噛んだ。


「昔、兵士だったじい様に教わったんだ。くそ、俺はこの町の守り人をしているんだぞ」


 男は苛立っていたが、男の様子を見るために町の人々が姿を現していた。人々は、男のことを心配しているようだった。


「ああ……なるほど。あなたが街を守っていたから、町の周囲に罠がなかったんですね」


 ヒューイ、男の言葉に納得する。


だが、槍を男から外すことはなかった。


 油断する気はないらしい。


「改めて、自己紹介します。私は、ヒューイ。シルメとユーファという二人を探しています。あなたの名前は?」


 ヒューイの言葉に、男は眼をぱちくりさせた。


 どうやら、名前を尋ねられるとは思わなかったらしい。


「俺は、ユア。……名前までは知らないが、昨日の夜に二人組がやってきたぜ」


 ユアの言葉に、ヒューイはほっとしていた。


 どうやら、シルメたちは無事にこの町にたどり着いていたらしい。


「ヒューイちゃん、よかったね。シルメちゃんたちが無事で」


 ゲリアはそう言うが、ヒューイは少しばかり考える。


「ユア。あなた、まさかシルメ君にも勝負を挑んだんですか?」


 ヒューイは尋ねた。


 ユアは、町に来たばかりのヒューイに勝負を挑んでいる。ならば、シルメにも勝負を挑んでいる可能性は十分にあった。


「当たり前だろ。俺が、村を守っているんだからな」


 ユアは、胸を張る。


 ヒューイは、槍を構えたままユアに詰め寄った。そんな彼の表情は真剣そのもので、ユアはそんなヒューイの様子に驚いていた。


「でも、あなたシルメ君に負けたんですよね」


 ヒューイの言葉に、ユアは言葉に詰まる。


 図星だったらしい。


「なんで、わかるんだよ」


 不満げなユアに、ヒューイは言う。


「シリア君が、あなた程度に負けるはずもありませんから」


 そう言うと、ヒューイはユアから狙いを外した。


 まるで、ユアなどいつでも倒せると言っているようだった。ユアにもそれは伝わったらしく、納得がいかない顔をしていた。だが、負けてしまった手前なにも言えないようだった。


「そうだよ!熊以上に強い奴だったよ」


 ユアが、怒り出す。


 どうやら、シルメとユアの戦いは簡単に勝敗がついたらしい。


「おまえ、あいつらの何なんだよ。おまえも鬼のように強いけど」


 ユアは、いぶかしげにヒューイを見る。


 町の人々も不審げに、ヒューイを見る。ユアはその様子を見て、再び舌打ちをした。そして、町の人々にヒューイが敵意がない人物だと紹介した。


すると町の人々が次々と現れて、ヒューイを囲んだ。特に子供たちは、興味津々でヒューイを取り囲んだ。慣れない子供から逃げながら、ヒューイはユアの言葉に答える。


「私は、あの二人の幼馴染です。こっちは……何なんでしょうね」


 ヒューイは、ゲリアを見て首をかしげる。


 ゲリアは、苦笑いをした。


「旅の荷物……というところでしょうか」


 考えた末に、ヒューイはそう答えた。

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