第57話

 山から下りると小さな村があった。


村にたどり着いたゲリアは、ほっとする。おそらくユーファを連れたシルメもたどり着いていることだろう。


「早く、シルメちゃんたちと合流しようよ」


 ゲリアは、ヒューイを急かした。


 ヒューイは、村の様子を無言で見ていた。


「どうしたの?」


「村が小さすぎます。ここには、医者がいないかもしれません」


 ゲリアは、改めて村を見た。


 村は自給自足で生活しているような小さな村であり、たしかに医者が住んでいるような場所には見えなかった。王都に住んでいたゲリアにとっては、医者は街に当たり前にいる存在だった。だが、医者というのは圧倒的に少ない。医者がいるのは、もっと大きな村や町だ。


「ゲリア君。悪いですが、この村に医者がいるかどうか聞いてきてください」


 ヒューイの言葉に従い、ゲリアは村人を探す。


 農具を担いでいた村人を見つけたゲリアは、その人に話しかけた。


「すみません。この村に医者はいませんか?」


ゲリアが話しかけた村人は、首を振る。どうやら、この村に医者はいないらしい。ゲリアは、ため息をついた。おそらくシルメたちも、この村にはいない。もっと大きな村を目指して移動したはずだ。


「近くに医者がいる村とかありませんか?」


 ゲリアは、そう聞いてみる。


「それなら、北の方向にある町だよ。昔、王都にいたっていう医者が引退して住んでいるんだよ」


 それを聞いたゲリアは、ほっとする。


きっとシルメたちもその町を目指したに違いない。ゲリアは、そのことをヒューイに報告した。


「そうですか……。その北の町まで、距離がありそうですね」


 ヒューイは、空を仰ぐ。


すでに空は赤くなっていて、夜になるのはもうすぐだった。


「今日は、この村に泊まりましょう」


 ヒューイの言葉に、ゲリアは驚く。


 てっきりヒューイは、すぐにシルメたちを追うと思っていた。


「シルメちゃんたちを追わなくていいの?」


 ヒューイは、首を振った。


「足手まといがいるのに、夜の山を越えるのは危険です」


足手まといと言われたゲリアは、何とも言えない気持ちになる。足手まといという言葉は真実であるが、もう少し言いようはなかったのだろうか。


「じゃあ……シルメちゃんもこの村で宿を探したのかな?」


 そう考えて、ゲリアは少しほっとした。


 この村で、シリアたちと合流できると思ったからだ。そうなれば、ヒューイとの気まずい旅も終わりを告げることになるだろう。


「いいえ……シルメ君たちは、先に進んだでしょう」


 ヒューイは、そう断言した。


「あまり言いたくはないですが、ユーファ君は本当にぎりぎりそうでした。シルメ君は、このままではユーファ君は持たないと判断するでしょう。多少無理をしてでも、夜の森を突破すると思います」


 足手まといもいませんし、とヒューイは言う。


 ゲリアは、ため息をつく。


「悪かったね。足手まといで」


 そんなことを言ったゲリアに、ヒューイは不思議そうな顔をする。


「足手まといは私のことですよ。……恥ずかしながら、この間は私が足手まといになってしまいましたから」


 その言葉を聞いたゲリアは、意外に思った。


「ヒューイちゃん、強いのに……」


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