第51話

ユーファに逃がされたゲリアは、山道を転がり落ちるように下山して王都にたどり着いた。王都は相変わらず賑やかさで、ゲリアはそのことにほっとする。


自分が森の中であった三人のことなど、まるで夢であったかのようだった。だが、残念ながら夢ではない。森であった三人は、王が探せと命じた三人の達人の弟子に間違いないだろう。


「報告しないと……」


 ゲリアは、少しばかり戸惑う。


 ヒューイには殺されそうになったが、他の二人は人格的に無害そうな人間だった。しかも、一人は女だ。竜を倒した三人ではあったが、ゲリアには反乱分子には見えなかった。


「王様は、どうしてユーファちゃんたちを探せなんて命じたんだろうね」


 ゲリアは、あの三人を探せと命じた理由までは聞いていない。下手に聞いて藪蛇をつつくことを恐れたこともあり、聞かなかったのだ。


「クーデターのときに、あの三人の師匠が殺されたってことは……。王様の王子様時代の因縁なのかな」


 なんにせよ、ゲリアが首を突っ込んでいい案件ではないだろう。


 ゲリアは、そう納得した。


 ゲリアは、城へとおもむいた。現王の名前は、リシャといった。五年前にクーデターを起こした張本人であり、ゲリアを森へと派遣した張本人だ。


 王に謁見したゲリアは、頭を下げた。


リシャは、ゲリアと同じ年頃の男である。穏やかそうな外見をしており、彼が五年前にクーデターを起こしたとはゲリアには未だに信じられない。


「森の中で、あの三人は生きていたんだね」


 リシャは、そう確認した。


「はい。竜を倒したので、達人の弟子に間違いないと思います」


 ゲリアの報告に、リシャは満足したように頷いた。その様子をみたゲリアは、人知れずほっとする。


「君が三人を見つけた場所の周辺に人をやろう。今ならば、彼らに追いつけるはずだ」


リシャは、人を呼ぶ。


彼に呼びつけられた人間が、きっとユーファたちの元へと行くのだろう。ゲリアは、少し不安になった。だが、藪蛇をつつくのはゲリアにとっては得策ではない。だが、ゲリアの脳裏にはひどい火傷を負ったユーファの姿が離れなかった。


 ゲリアは、拳を握る。


 今、このことを聞かなければ後悔すると思った。


「王、あの三人をどうする気なのですか?」


 ゲリアの質問に、リシャは笑った。


 その微笑に、ゲリアは背筋に冷たいものを覚えた。本能的であったが、ゲリアはその微笑を危ないと思ったのだ。


「僕は、彼女をこの城に招待したいだけだよ」

 

 結局、王は三人をどうするかを話さなかった。

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