第48話

 その後、帰郷していたシルメが帰ってきた。


 帰ってきたシルメは、なぜか意気消沈していた。だが、その理由はユーファには明かされなかった。


シルメは、こういうところがある。


ユーファに心配かけまいと、多くの説明をしないときがある。それはシルメが、ユーファを妹のように思っているからだろう。年下に心配はかけられない、と思っているのだ。


 ユーファは、シルメの気持ちを優先した。


 なにも気づかないふりをして、シルメに接した。


 シルメはリゼリザの紹介でギザと会い、彼の弟子になることになった。


 才能があったシルメは、ギザの元で順調で成長をしていた。ユーファはリゼリザの元で修行をしていたが、折を見てギザにリシャのことを聞きに行った。


 ギザはリシャのことを何でも教えてくれたが、そのことをシルメに教えようとはしなかった。ギザは、リシャの問題を自分たちの代で終わらせるつもりなのだろう。ユーファも、シルメにリシャのことは話さなかった。


 ユーファも、シルメの心配をかけたくはないと思ったのだ。


 それと同時に、リシャのことは自分の問題だと思っていた。


シルメを巻き込めない、と思ったのだ。


だから、ギザに話を聞きに行くときは、シルメには気付かれないように気を付けた。


「そもそもは、リゼリザが生まれたことだ」


 ギザは、そう切り出した。


 一人の天才が生まれたことがよって、魔法使いたちは魔法に新たな道が開けるのではないかと沸き立ったらしい。


「魔力が高いあいつは、他の魔法使いよりも長い時間魔法を使い続けることができた。そこから、常に魔法を発動させられれば不死にも届くと考えられた。その考えから生まれたのが、リシャとお前だ」


 だが、生まれてきたリシャは魔力を持っていなかった。


 ユーファは、思う。


 きっと不死にさせたかったのは、リシャの方なのだろう。だが、大人たちの思惑に反してリシャは魔力を持たなかった。不死になれなかった王子は、不死になる方法として魔法使いを食べるという方法に縋りついたのだろう。


「魔法使いを食べるっていうのは……私以外でもいいの?」


 リシャは、ごくりと唾を飲み込んだ。もしかしたら自分だけではなく、魔法使いのリゼリザも狙われることかもしれないと思ったからだ。


「食べるのは……お前以外では効果が薄いらしい。お前とリシャは調整された同士だから、相性がいいらしいんだ」


 ギザの言葉に、ユーファは少しほっとする。


 リゼリザを自分の運命に巻き込まなくてよかったと思ったのだ。


「それに魔法使いを食べさせる案は……当初あった案だが、人道的じゃないということで却下された。いや、リゼリザと俺が却下した。今の王も、それには賛成してくれた」


 ユーファは、驚いた。


 自分の身を守っていたのは、ギザとリゼリザであったのだ。


「お前の親は、魔力が高い家系から選ばれた。だが、リシャは王族だという理由だけで選ばれた。魔力の有無は、そこに関係があるのかもな」


 ギザは、そう言った。


 ユーファは、自分の実の親のことを思った。顔も見たこともなかった相手だ。だが、実の兄弟同士で子供を作った彼らはどんな精神だったのだろうか。


「お前は、大人の思惑で生まれてきた。でも、大人の思惑で生きなくていいんだ」


 ギザは、そう言った。


 ユーファは、少しだけ気が楽になった。


「私も、ギザたちみたいな大人になりたいわ」


 他人を守り、国を守る大人。


 そういうものに、ユーファはなりたいと思ったのだ。


「憧れを持つのはいい……。ただ前の世代には縛られるなよ」


 ギザは、そう言った。


 縛られるとは、どういう意味だろうかとユーファは思った。

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