第45話
ユーファは、それからも館にずっとこもっていた。
そんなユーファの生活の中で、一つの変化があった。ユーファが注文した本を届けてくれる人間が、彼女の同年代の少年になったのだ。
彼の名は、シルメといった。
シルメは、読み書きを知らない少年だった。
ユーファは、そんな少年に過去の自分を見た。ユーファは、彼の自分が知っている知識を授けることにした。それは、かつての使用人の真似のようなものだった。だが、シルメは楽しそうにユーファから知識を吸収していった。
ユーファは、それを見ているのが楽しくなってしまった。
同時に、シルメが自由に出て行っている外に興味を持つようになった。本の世界ではなく、外の世界を見たいと願うようになった。
そんななかで、またギザが尋ねてきた。
「よう、ユーファ」
ギザは、そんなふうに気軽に挨拶をした。
「お前の気持ちは変わらないか?」
「……」
ユーファは答えなかった。
だが、ギザはそれですべてを見越していたようだった。
その日は、それだけで満足気に去っていった。
そして数日後に、ギザは一人の少年を屋敷に連れてきた。ユーファと同じぐらいの年頃の少年だった。上質な服を着た、上品な少年だった。
「初めまして、僕の名前はリシャというよ」
リシャと名乗った少年は、丁寧な礼をとった。
上品な少年は、ユーファをまるで貴婦人のように扱った。ユーファは、それにかなり居心地が悪い思いをした。こんな扱いをされたのは、初めてだ。
「僕は、君と同じように生まれた子供だよ」
リシャは、そう言った。
ユーファは、驚いた。
「じゃあ、あなたは魔力がないの?」
ユーファの質問に、リシャは頷いた。
「まったくないよ。どうして両親が優秀だったのに、僕に遺伝しなかったのかは全く分からないけれども」
リシャは、そう言った。
ユーファは、しげしげと禁忌の子を見た。禁忌の子は、にこにこと笑っていて穏やかそうだった。
「君には、魔法の才能がある。それは、神からの贈り物だよ」
リシャの言葉に、ユーファは眉を寄せた。
リシャは魔力を神からの贈り物と言っていたが、本当にそう思っているのだろうか。自分たちは、神から隠れるように息をしている存在だというのに。
「あなたは、私が魔法使いになることを望んでいるの?」
ユーファは、尋ねた。
「望んでいるよ」
とリシャは答えた。
直感的に、ユーファは嘘だと思った。
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