第41話

 シルメは、一心に修行に取り組んだ。


 元々の才能もあっただろうが、その努力のおかげもあってシルメはいつの間にかギザの一番弟子になった。ギザは、そんなシルメに彼の身長ほどもある大剣を与えた。


 大剣を与えられるとき、ギザはシルメにどのような剣士になりたいかと尋ねた。そのときシルメの頭に浮かんだのは、ユーファだった。


 彼女を守りたい、と思った。


 だが、彼女を恋人のように思ったことはなかった。


 彼女は、家族だった。


 シルメは、家族を守りたかった。


 だが、シルメの本当の家族は離散していた。そのため、家族を守るとは言えなかった。シルメは、守るべき人と同じものを守ると宣言した。


「この国を守ります」


 ギザは、それを聞いた途端に大笑いした。


 それに、シルメは驚いた。


 ギザに師事していたシルメだったが、自分の師匠がこんなふうに笑う姿は初めてみた。


「それは、ユーファの受け売りか?」


 ギザの言葉から、ユーファの名前が出たことが意外だった。


「ユーファを知っているんですか?」


 シルメが尋ねると、ギザは頷いた。


「ユーファは、俺様の親戚だ」


 その言葉に、シルメは驚いた。


「ユーファは、リゼリザ様の親戚と聞きましたよ」


「俺様とも親戚なんだよ。それでもって、ユーファのことをリゼリザに知らせたのも俺だ」


 だとすれば、ユーファの恩人はギザということになる。


 ギザの紹介がなければ、ユーファはリゼリザの弟子にはなれなかったのである。


「……ユーファは、家族をなくした俺にとっては唯一の妹のような存在です。ユーファは、いつかリゼリザ様の跡を継ぐと聞きました。そのとき、ユーファと同じものを守る存在でありたいのです」


 シルメは、本当の気持ちをギザに言うことができた。


「ユーファは、この国を守るのが夢なのか?」


 ギザは、シルメに尋ねた。


「そう言っていました」


 ギザは、不安そうな顔をする。


 だが、すぐにそれをかくした。


「それは心強いな。ギザ、俺たちは王の護衛を主な仕事としている。ユーファと共に、その跡を継ぐか?」


「はい、自分にその実力があるのならば」


 シルメは、そう答えた。


 ギザは、少しだけ表情を曇らせた。


「お前の故郷の村を襲った飢饉。あの飢饉は、王が優秀であれば防げた被害だ。お前は、それでも王を守るか?」


 ギザの言葉に、シルメは狼狽する。


 今まで、王の仕事というものを意識したことがなかった。今初めて、王が失態を犯せばどうなるかを知った。それでも、国を守ることは王を守ることだとも知った。


 自分が守るのが無能な王であれば、守れば守るほどに国は衰退するかもしれない。それで、人々が苦しむかもしれない。それでも、自分たちは王を守るのだ。国を守るというのは、そういうことなのだとシルメは知ったのだ。


 何と答えるべきか、とシルメは一瞬迷った。


 だが、答えは決まっていた。


「俺は、王を守ります」


 シルメは、そう答えた。


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