第29話

 ユーファの師匠の元へ、ヒューイは急ぐ。


 ユーファの師匠は、盲目の魔法使いである。魔法使いは、魔法の発動に本を使用する。書かれていた文字を読み上げることで、魔法発動の補助をしているためである。そのため、魔法使いが盲目であることは普通ない。


だが、ユーファの師匠リゼリザは違う。


ヒューイは呼びかけもなにもなしに、リゼリザに切りかかった。だが、その前に風圧がヒューイの槍を押し返す。


「おや、ヒューイ。どうかしたのか?」


 リゼリザは、尋ねる。


 その両目は、閉じたままだ。


「つっ……!」


 ヒューイは力ずくで風の盾を突破しようとするが、押し返されていく。


 リゼリザは、微笑む。


「僕の隙をついて、殺そうとしたね。だけど、そうはいかないよ」


 リゼリザは、炎の魔法を発動させる。


 しかも、風の盾を発動させながら。


ユーファは優秀な魔法使いであるが、それよりも優秀な魔法使いなのがリゼリザである。彼はその膨大な魔力から、例外的に本を使用しない魔法使いだ。本のサポートを不必要としているので、演唱も必要がない。さらに、その莫大な魔力から、魔法を発動させ続けることもできる。


 魔法の炎が、ヒューイの体を包む。


 ヒューイは、炎が燃え移った自分のマントを脱いだ。魔法の炎で燃えるマントを彼はリゼリザに、覆いかぶせる。


 リゼリザには優秀な魔法使いだが、大きな弱点がある。


 それは、盲目であるということだ。


 戦闘において、咄嗟の判断ができない。


 いつもならば、咄嗟の判断を下すのはローウェイとギザであった。だからこそ、ヒューイはこの二人を先に殺したのだ。


 引火したマントをかぶせられたリゼリザは、悲鳴を上げる。


 リゼリザは、すぐに水の魔法で鎮火させる。だが、それは大きな隙だった。


 ヒューイは、リザリザの喉を突いた。


 悲鳴を上げることもできなくなったリゼリザは、黒焦げになった皮膚で突かれた喉をひっかいた。ヒューイは、その様子をしばらく見ていた。しばらくすると、リゼリザは息絶えた。


 ヒューイは、そのことにほっとする。


 これで、王を守るものはすべていなくなった。

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