第28話

ヒューイは、その夜に師匠であるローウェイを城に呼び出した。


「どうした、ヒューイ」


 当たり前のことだが、ローウェイは初めてあった時よりも老いていた。それが、一緒にいた年月を思い起こさせる。


「ずっと疑問に思っていたのですが、どうして師匠は私にユーファ君への恋心を自覚させたのですか?師匠は、シルメ君とユーファ君が婚約することをご存じだったんでしょう」


 ヒューイの質問に、ローウェイは笑った。


「婚約の件は知っていたさ。でも、初恋は叶わないもんだ。それに、あのじゃじゃ馬魔法使いよりもずっといい女に出会うって」


 ヒューイは、目を伏せた。


「師匠、尊敬していました」


 ヒューイの言葉に、ローウェイは苦笑いする。


「よせやい。今更だろ」


「いえ、もう言えなくなるので」


 ヒューイは持っていた槍で、ローウェイの胸を突いた。


 ローウェイは、目を見開く。


「……おまえ、どうして?」


「古い時代は、今日で終わりです」


 ヒューイは、ローウェイから槍を引き抜いた。師の血で赤く汚れた槍で、ヒューイは師匠の頭部を狙う。ヒューイの槍は、ローウェイの額を貫いた。


 血で汚れた槍をぬぐい、ついでに持ってきた小瓶に槍の先をつけた。どろりとした液体が、槍の先から滴り落ちる。


 あと二人の達人も、ヒューイが殺さなければならない。


 ヒューイは師匠の死体を隠し、何食わぬ顔をしてシルメの師匠であるギザの元へ向かった。ギザはこれから、王の護衛に向かうところらしく正装に着替えていた。


「ギザ様、ローウェイ様の代わりに来ました」


 ローウェイと同年代の男ギザは、ヒューイの言葉をいぶかしんだ。


「ローウェイの代わりに?」


「はい」


 ギザは少しばかり考えて、結論をだす。


「……分かった。一緒に王の元へ行こう」


 ギザは、ヒューイに背を向ける。


 ヒューイは、その隙を見逃さなかった。


 ギザの無防備な背中に、ヒューイは刃を突き立てる。その衝撃に、ギザは目を丸くする。ヒューイは、すぐに槍を抜く。


「ヒューイ!?」


 ギザは、自身の剣を抜く。


そして、ヒューイに切りかかった。だが、ヒューイはその刃を叩き落とす。


「つ……槍に何かをぬったか」


 ギザは、苦しみながらもヒューイに尋ねる。


「はい、毒を塗りました」


 膝をついた、ギザ。


「シル……メ。シルメも殺すのか?」


 ギザは、そう尋ねた。


 その目には、とっくに自身を飛び越えた弟子への心配があった。


 そのギザに向かって、ヒューイは槍を振り下ろす。


 あとは、魔法使いだけだった。

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