第19話
ヒューイは、槍の達人に拾われた。
槍の達人が乗ってきた馬車に乗せられて、ヒューイは王都にやってきた。王都は今まで見たことないような数の人間がいて、そのほとんどの人が山から下りてきたヒューイを嫌なものでもみるような目で見ていた。ヒューイは王都で暮らす人々からしてみれば、汚れ過ぎていたのだ。ヒューイは、まるで浮浪児のような外見hak[ha。
槍の達人は、ヒューイを知り合いの館に連れてきた。
その知り合いの館には、本があふれていた。玄関から、見える限りの空間が本で埋まっているような館だった。その家の奥から、人が出てくる。
「ローウェイ様、お久しぶりです」
現れたのは、若草色のワンピースをまとった少女だった。特徴的な緑色の髪を長く伸ばした少女は、槍の達人をローウェイと呼んだ。
「ユーファ、久しぶりだな。悪いが、この汚いガキを風呂にツッコんでもらえないか?」
ローウェイの言葉に、ユーファは頷く。
「ええ、分かりました。師匠には会っていかれますか?」
「ああ」
ヒューイは、ユーファに手をひかれた。とっくの昔に槍は奪われている。何がどうなっているか分からないが、今はこの少女に従うしかなそうである。
「私は、ユーファ。見習いの魔法使いよ。あなたは?」
「……ヒューイ。あのおっさんに連れてこられたんだ」
「そうなんだ。じゃあ、槍を使う才能があるのかもね」
くるり、とユーファは振り返る。
その顔には、はじけるような笑顔が浮かんでいた。
美しい笑顔だった。
ヒューイが、今まで見たことがないような。
その笑顔に見惚れていると、ヒューイは服をはぎ取られた。そのまま風呂場に押し込められる。目を白黒させていると、ユーファも一緒に入ってきた。服は着たままで、ヒューイを後ろか浴槽に突き落とした。
体を洗う知識は、ヒューイにもある。
だが、森での沐浴の経験はあっても沸かした風呂に入る経験はなかった。暖かな湯に全身をつけるという行為に、ヒューイはえらく混乱する。
「暴れないで、綺麗にするから」
ユーファは、そう言うとワンピースを脱いだ。白い肌に、ふくらみ始めた乳房がヒューイの眼前にさらされる。未発達な女の体の輝きは、ヒューイには眩しく感じられた。
「さて、汚れたワンちゃんを洗いましょうね」
そういって、ユーファは布でヒューイの皮膚をこすり始めた。
それは幼い頃に父親にされたような磨かれ方で、ヒューイはどうにもこそばゆい気持ちになった。
「ユーファ! ユーファ、どこだい!?」
部屋の奥から、少年の声が聞こえた。
その声は、段々と近づいて来る。そして、風呂場のドアを勢いよく開けた。
「ユーファ、君は何をやっているんだい!?」
ドアを開けたのは、背の高い少年だった。ユーファよりも少しだけ年上だと思われる少年は、頬を赤くして怒鳴っている。彼はできるだけ、ユーファのほうを見ないように心掛けているようだった。
「君、自分の歳を考えてごらんよ。子供ではないんだよ。うん、子供ではないよ。なのに異性と一緒にお風呂にはいるだなんて……」
「まだ、成人してないわよ。この子もね。子供が子供を洗っているだけ。問題ないでしょう。シルメは、お硬すぎるわ」
ユーファは頬を膨らませるが、シルメと呼ばれた少年は声を荒げる。
「ユーファ、常識の話をしているんだよ!」
シルメの話は正しい。
ヒューイは何も言わなかったが、彼も異性に体を洗ってもらうには育ちすぎた年齢であった。無論、ユーファも。
「……分かったわ。あとは、あなたに任せる」
ユーファは、シルメに布を渡して風呂場を出ていった。
シルメは着ていた服を脱ぐと、ヒューイのことを洗い始めた。ユーファよりも優しい手つきだった。
「君は、ローウェイ様が連れてきた子だね。俺はシルメ。剣の師匠のギザ様に師事している者だよ」
シルメは、そう語る。
ヒューイは、なにも喋らなかった。語るべき言葉を持たなかった。シルメは、そんなヒューイに微笑みかける。
「君は、きっとローウェイ様が鍛えることになるんだろうね。うん、そうだろうね」
シルメの言葉が、ヒューイにはよく分からなかった。
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