第18話

 幼い頃、ヒューイは森の中に住んでいた。


父親と仲間たちと一緒に、山道を歩く商人などを襲って生計を立てていた。十人足らずの仲間たちはヒューイをのぞけば皆が大人で、その中でヒューイは一番下っ端だった。そのため、嫌な仕事はいつもヒューイに押し付けられていた。


そのころのヒューイは、獣のような生活をしていた。仲間たちと会話はしていたが、文字は知らず、品位もなにもなく生活をしていた。自分たちに歯向かうものたちを男は殺し、女は仲間たちが犯した。


 森の中で仲間たちが女を犯す嬌声を聞きながら、自分も将来はああなるのだとヒューイは思っていた。獣のような姿であったが、かまわなかった。なぜならば、ヒューイは人も獣であると思っていたから。


 そのころ、父親に槍を持たされた。長い棒にナイフを括り付けただけの槍だったが、初めての武器に興奮したことを覚えている。


 その興奮のままに、ヒューイはその武器で人を殺すようになった。逃げ惑う商人の男たち。その連れの女たち。時には、子供をヒューイは殺した。殺していくうちにヒューイは、自分が与えられた武器が酷く脆いことに気が付いた。


 もっと丈夫な武器がなければ、たくさん殺すことはできない。


 ヒューイは、襲った商人の荷物を一番に物色するようになっていた。探しているのは、より強い武器であった。


扱いやすいのならばもっといいが、今のヒューイにはそんな贅沢はいえなかった。やがて、ヒューイは本物の槍を手に入れた。大人用の槍は子供のヒューイには大きすぎたが、それでも本物の武器にヒューイの心は高鳴った。


 これでもっと人が殺せる、と思った。


 ヒューイは、このころ十三歳になっていた。


 普通の男の子なら、異性に興味を持ち出す年頃だった。だが、ヒューイが興味を持ったのは殺人だけだった。仲間たちは、そんなヒューイを段々と恐れるようになっていった。


 なにせ、ヒューイは女をさらってきても興味を全く示さなかったからだ。ためしに男をさらってきても興味を全く持たない。仲間たちにおいて、ヒューイは異質だった。


 そんなヒューイの日々を変えたのは、一つの出会いからだった。


 その日もヒューイは、仲間たちと共に商人の馬車を襲っていた。違っていたことは、その日の馬車には達人が護衛として乗っていた。後から聞いたが、その馬車は王族に献上する金を乗せた馬車だったらしい。だから、護衛に達人が乗っていたのだ。


 槍の達人は、壮年の男だった。


その男は槍を構え、襲ってきたヒューイの仲間たちを次々と土に伏せていく。その光景は、ヒューイにとって初めての光景だった。仲間たちが子供のように吹き飛ばされ、次々山へと逃げていく。まるで歯が立たない。


 気が付けば、ヒューイは一人でそこに残されていた。


 仲間たちは、ヒューイを残して逃げていったのだ。


「ん?お前、子供か?子供なのに盗賊なんてしているのか?」


 槍の達人は、ヒューイのことをしげしげと見つめた。それが気に食わなくて、ヒューイは槍を持って達人に向かっていった。


「おっと」


 だが、ヒューイは簡単に達人に槍を奪われる。赤子の手をひねるかのように、簡単に。


「お前、槍を誰から教わった?」


 達人は、ヒューイに尋ねた。


「誰からも」


 ヒューイは、そう答えた。


そのことに、達人は少し驚いているようだった。


「その様子から見るに、お前って仲間に見捨てられたのか?なら、お前は俺と一緒に来るか?」


 達人は、そう尋ねた。


 ヒューイは、その言葉の意味が分からなかった。


「一緒に、人を殺すのか?」


 ヒューイは、そう尋ねた。


 槍の達人は、その言葉に苦い顔をした。


「子供が、そんなことを言ってるんじゃねぇよ」

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