第12話 魔人

「ウ~?」


 僕は帰ろうと思いアステリアの上空にいた。その時神眼でぎりぎり見える範囲に黒い点がこちらに向かってくるのが見えた。


 僕はそのまま近づいてくるものをアステリアの上空で待っていると少し声が聞こえてくる。


「ジー」


 その声は徐々にはっきり聞こえるようになる。


「ジーニ~!」


 僕の名前を叫んでいたようだ。その黒い点は目視できる範囲まで来ていて物凄い速度で僕に衝突した。


「アウ?」

「ハッハッハ、お前がジーニか!」


 衝突した瞬間、僕はガードした。初めて僕はガードをしようと思いガードをした。いつも僕はダメージを受けないと思いガードしていなかった。だがこの男の力は僕にダメージを負わせられるほどの力なのだ。


 ちなみに僕はこの位強くなってました。


アステリア・ジーニ


 LV 1


 HP 5⇒7 [5000倍(秘匿)35000]

 MP 3⇒5 [5000倍(秘匿 25000]


 STR6⇒8 [5000倍(秘匿)40000]

 VIT5⇒7 [5000倍(秘匿)35000]

 DEX7⇒9 [5000倍(秘匿)45000]

 AGI5⇒7 [5000倍(秘匿)35000]

 INT4⇒6 [5000倍(秘匿)30000]

 MND3⇒5 [5000倍(秘匿)25000]


 スキル [神眼(秘匿)][超早熟][超大器晩成][匍匐の達人][格闘の基礎][空中散歩][魔法全集]


 称号 [小さくても力持ち][ハイハイ世界記録][一歳で熊を仕留めた][一歳で世界最強][救急救命士][暗殺家業][ダイヤモンドヘッド]


 レベル上がったままにしていないのに自力が上がっている!。自分で見て僕も驚いた。これはまさか!指輪の効果かな?って事は僕、装備も強くなるの?。と不確かな事を考えてもしょうがないよね。次行ってみよ~。


 僕の頭はどうやら[ダイヤモンドヘッド]らしいです。デシウスの大剣を受けて赤くなる程度だったからかな?、効果は頭の防御力2倍・・・もう好きにして。


「うっはっは、噂通り頑丈な赤子だ!」


 衝突してきたときはわからなかったけど、この人[魔族]だ!頭から二本の角を生やしているし肌が真っ赤。


 真っ赤な男は豪快に笑い僕を必要に殴ってくる。


「アッハッハッハ・・・痛え、堅いな、この坊主」


 ブックスクス!。自分で殴っておいて手を痛がってる。いい大人が赤ん坊をいじめるからさ。僕は悪くないもんね。


「キャッキャ!!」

「の野郎、かすり傷一つないのか!」


 正確にはHPが1だけ減りましたよ。そのダメージは最初の衝突のだけだけど。男は元々真っ赤な顔を更に赤くさせたように怒っている。


「じゃあこれはどうだ![フレアスパイク]」


 真っ赤なおじさんが魔法を唱えた。溶岩の棘が僕へと迫る。僕はすかさず、


「アイチュ!」


「どわ!」


 僕のアイスで溶岩の棘と真っ赤なおじさんは氷漬けになった。僕の初級魔法はもうすでに上級へと進化している。これじゃ、コキュートスブレスじゃんとこの世界にあるかないかわからないけど言ってみた。


「アウアウ?」


 真っ赤なおじさんはそのまま凍りっぱなしで動かないようなので僕はアステリアへと戻る。おじちゃんに衝突されたおかげでかなり離れちゃったんだ。ほんと名前も名乗らない人は嫌いでチュ。


「アイ?」


 僕はアステリアに着くと何かが無い事に気付く。


「ダウ?」


 僕はそれがあった所へとハイハイしていった。


「屋敷がないでしょう?悲しいですか?」


 さっきまでそこには誰もいなかった。確かにそのはずだった、不意に声をかけられ僕は声のする方を振り向く。


 そこにはスラっとしたタキシードの男が立っていた。僕はすぐに神眼で調べるけど名前しかわからなかった。名前は、


「フェイクと申します!。ジーニ様わたくしの名はフェイクです。いやいや私の連れが失礼しました~」


 体をくねくねとくねらせて上半身を僕の高さまで下げて顔を近づけて謝るフェイク。僕は嫌そうな顔を全開にしてフェイクを見つめる。


「分かっています分かっていますとも聞きたいんでしょ?聞きたいんでしょ?なんで私があなたの探している物が屋敷だという事を知ってるのか!!」


 うざい~とってもうっざーい。でも確かにフェイクが言っていることは正しい、僕は屋敷を探していたのだ。なので声を出さずにただ見つめるだけフェイクを見つめた。


「おお~赤ん坊からこんなに冷たい視線を受けるとはとて~も気持ちがいいですね~。確かにあなたと私の間で言葉は要りませんよね。そうですよねそうですよ」


 何故かフェイクは自分で納得したように頷く。僕は辟易としながらなおもフェイクを見続ける。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」



「あう?」


 タキシードの男フェイクは急に黙りだした。それを不審に思ってしまったジーニは声を出してしまう。それに対してフェイクはニヤッて口角を上げて喋り出した。


「お~ジーニ様が私に興味を示された~嬉しいですね嬉しいですよ。ではその嬉しさのあまり答えを言ってしまいましょう!!」

「ブ~」


 僕は少し苛立ちフェイクにつばを飛ばす。フェイクはさっと避けると大きく天を仰ぎ叫んだ。


「私が消しました!あなたの屋敷はこの街から消えたのですよ!!」

「だう?」


 僕はアステリアの上空から真っ赤なおじさんと戦闘する前確かに屋敷がある事を確認していた。真っ赤なおじさんとの戦闘はすぐに終わったはずだ、約2分ほどだろう、それから戻るのに1分だとしてもなくすには爆発などの異変が起こるのを目視できるはずだ。だがそれは確認できなかった。屋敷が無い事を確認する為屋敷のあった所へハイハイをして近づいて調べようと思った時、この男フェイクから声をかけられたのだ。


「ふふふ、更に!更に更に!!私に興味を示された~~~嬉しいですね~嬉しいですよ」


 フェイクは歓喜に襲われうずくまり小刻みに震える。


 僕はこの話ている間も神眼による情報の確認をしていた。屋敷の有無とフェイクの情報だ。だが情報は得られなかった。


 なんでフェイクの情報が得られないのかと思っているとその答えはフェイクによって明かされた。


「だから私はフェイクなのですよ!。嘘の魔人なのです。私は嘘であり嘘が私なのです。ですが私の口から出るすべての事が嘘とは限りませんよ。そうであるかもしれないしそうじゃないかもしれないのです」


 ってことはさっきの真っ赤なおじさんも魔人なのかな?魔族だと思ってた。ごめんちゃい。


「嘘かもしれないし嘘じゃないかもしれない、魔人なんていないしいるかもしれない。かもしれないを追求するとジーニ様も気持ちいいですよ~」


 とにかくうざいこの男、どうしてくれようかと思ったところ。魔が付くんだからということで光の魔法を投射してみた。


「バイボ」

「ギョワワワ~~・・・・・マジで死にますよ」


 僕が[ライト]の魔法をかけると少し避けたフェイクの半身が溶けていく。普通に死んでいてもおかしくないような怪我なのだが真顔でフェイクは話しかけてくる。僕はすぐに[ヒール]をかけるとフェイクは笑顔になり話し続けた。


「いきなり殺されかけるとは嘘の魔人の私もびっくりですよ。人をびっくりさせるのが大好きな私が人にびっくりさせられるのはいつ頃以来でしょうか、そうです!アドスバーン様以来ですよ!」

「アーイ?」


 アドスバーンって国名じゃないの?。ってアドスバーン様って言ってるって事は王の名前もアドスバーンなのか、様って言ってるって事は側近?、こんな人側近だったら毎日疲れるだろうな~。


 ジーニは嫌そうな顔をしてアドスバーンの気苦労を思う。そのジーニの表情を見てフェイクは更にしゃべり続けた。


「それにしてもいいのですか?私は屋敷を壊したのですよ、屋敷は消えているのですよ?」

「ブ~」


 僕は挑発にはのらないよ。いつでもクールな男でいろってどっかの有名人が言っていたし。クールじゃないね~って言われたくないよん。


「クールですね~冷え冷えですねー」


 お前に言われたくない!、そしてお前はもうちょっとクールになれ。そう思ったジーニであった。


 それでも確かに屋敷を壊された事を苛立っていないと言えばうそになる。自分の生れた所でもあるし初めての喜怒哀楽を味わった場所だったのだ。だがフェイクは得体もしれない男だ。この男の言葉には意思を感じないし軽い、その言葉に乗ってしまうと何か、なってしまいそうでジーニは軽くあしらっている。


「そうそう、屋敷を壊したのは私の八つ当たりなので詮索はしなくていいですよ。まったくあなたがいなければアドスバーン様は見事にアルサレムを滅ぼし、私の仲間の魔人を生き返らせてくれたのに・・・・」


 フェイクは両肩を落し落胆している。こう見るとこの男ピエロにそっくりなオーバーリアクションであり面白くなってきた。僕は口を挟まずにフェイクの動きを見ている。


「・・・・・チラッ」


 フェイクは自分で擬音を作りジーニを見やる。しかしジーニは魂のこもっていない視線をフェイクに向け続けた。


 何回かこのやり取りをした後、しびれを切らせてフェイクが口を開いた。


「無視!!無視!!!無視!!!!、これがどれだけ他者を傷つけるかわかっているのですか、あなたは!。私は今凄い重要な事を言ったのですよ!!」

「ダウ?」


 僕は無垢な瞳でフェイクを見上げる。フェイクもそれにつられて瞳を潤ませたがジーニがその両目をジャンケン!チョキ!でえぐると声も無く身悶えた。


「キャッキャッ!」

「・・・・はっはっは、面白そうで何よりですよ」


 フェイクは両目を抑えて初めて乾いた笑いをした。そして疲れたように何もない所から気絶している双子のルーズとフーズを取り出した。


「これ以上ここにいたら本当に殺されそうなんでね。アドスバーン様ではできなかった事を他の国の人でやりますので。それとこれらは返します。勝手に自分で帰るでしょう。では次あうその時までさよならでございます」


 双子を僕の前に放り投げてフェイクは姿を消した。僕はすぐに神眼で周囲を調べたけど見ることができなかった。神の眼でも見えない男フェイク・・・強くはなかったけど弱くもなかった・・と思う、だって攻撃はしてこなかったしわからないよね。ただあの真っ赤なおじちゃんと同じレベルだったらお父様やアルス王子達だったらどうなっていたのか僕は考えたくなかった。


「ブア~」


 双子に[キュア]を唱える。するとすぐに双子は起き上がり僕を見るや否や髪の毛を逆立てて警戒した。


 僕はその警戒を解くために双子を回復させる。


「ダ~」

「な、手が・・・・回復してる」

「ああ。僕の手だ」


 双子は歓喜して涙を流した。だが双子は僕にお礼も言わずに距離を取る。まあ敵同士なのでしょうがないけどさ。


「何故回復させた?」

「何故俺達はアステリアに戻ってるんだ?」


 双子は交互に話す。どっちがどっちかわからないけど僕は身振り手振りで説明するが双子は距離を離している為よくわからない様だった。僕のせいじゃないもん、頭悪いこの二人が悪いのさ。く~話せるようになったらチビったのチクルからな~~。


 僕が根気強く説明するとその熱に押され双子は僕への警戒を解いてくれて自分達の状況を話始めてくれた。


「俺達はアドスバーン様の命令で首都バーンへ帰っていたんだ」

「その途中の寝泊まりした宿から記憶がない・・・・」


 どうやらその時にフェイクに捕まったのだろう。でもなんでアドスバーンはこの二人と軍を撤退させたんだろう?。僕は首を傾げた。


 双子はスクッと立ち上がりジーニに礼をする。


「何か知らんが助けられたようだ」

「アドスバーン様からもお前には手を出すなと言われているし僕たちは帰るよ」


「ダ!」


 僕は手を上げて二人を見送る。二人からは恨みはあるだろうけど僕からは全くないからね。むしろ仲良くなってチビッたのをちらつかせて・・・・ニヤッ。


 そして僕はここにいてもしょうがないと思いアルサレムへと帰還するのだった。


 空を飛んでアステリアを見ると僕の頬を涙が伝う、経った一年しかいなかったけど僕の家だったんだ。悲しくないわけないじゃん・・・・。

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