窓
僕の世界はいつだって"窓"が全てだった。
そこからは色々見れた。
綺麗な空。楽しそうな運動会。怖い顔をした人。綺麗な花。花の中でも特に桜が綺麗だったな。
楽しそうに笑う子どもたち。
「いいなぁ。僕も外に出てみたいな。」
そんなことを思いながら日々を過ごしていた。
怖い顔の人が来た日の夜にはよく、あの子がここに来た。いつも泣きながら入ってくる。
そんなあの子を僕は慰めて、一緒に寝たり、遊んだり、たくさんお話したりしてはあの子は外に出ていった。ずっと、これのくりかえし。
けどある日、あの子は
「もうでたくない」って小さく呟いた。
とても消えそうな声で。
これを聞いた時、僕はチャンスだと思った。
「あの子が出ないなら、僕が出れるんだ」ってワクワクしながら外に出た。
出る時あの子は心配そうに、でもどこか嬉しそうに僕を見送ってくれた。
その姿を見て僕は、余計に期待感に胸を躍らせて外に出たんだ。
でも、でて、わかった。
あの子がした表情の意味が。やっと。
"外"は怖いところだった。ものすごく怖いところ。
僕は逃げるように帰ると、そこにはあの子と綺麗なお姉さんがいた。
びっくりしたけど、あの子が懐いてたから、悪い人では無いのはすぐにわかった。
害がないのが分かると
緊張の糸が切れてしまって僕は意識を手放した。
その日から僕もあの子も"外"に出ていない。
気づけば僕たちの周りは優しい人に溢れていた。
少し、怖い人とか苦手な人はいるけど"外"の世界程ではなかった。
今、"窓"から怖い顔をした人や楽しそうな子どもたちは見えない。でも、僕はあの日に体験した恐怖を忘れられず、今日もここで一日を過ごす。
暗闇 慧 @Sui_1052
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