第10話 調査開始
1台の馬車が事件の舞台となった森を目指している。
リュウジとアオイは、ワミカの町からゲートを使い、スケアという大きな村に到着した。
調査対象の香蘭の森は村からおよそ、10㎞ほど離れた場所である。
朝の6時に出発し、スケアの村から御者台に乗って同行していたアオイは、今朝からのリュウジの行動に驚きの連続であった。
まず、朝、起こしに行ったら、既にリュウジは起きていた。
朝から上半身裸で部屋の梁にぶら下がり、懸垂をしていた。筋肉からほとばしる汗の量を見るとかなりの筋肉トレーニングをしていたようだ。
そして昨日届いた装備。黒く染められたファブリックアーマー。
大きなポケットが両胸にあり、ベルトにはポーチが装備。足は防水加工がされたブーツ。
頭には材質が何か判別できないヘルメットにゴーグル。フェイスマスクで顔が判別できない異様な姿なのだ。
装備は凝っているが重量はなさそうで、かなり軽量化されている点も驚きであった。
これから行く場所を考えれば、防御力を上げる重装備を予想していたアオイには意外であった。
さらに驚くべきは武器の少なさ。短剣が2本。2本とも変わった形状であるが、短剣に違いはなく、その攻撃力は他の武器と比べても見劣りする。
短剣の他には組み立て式の携帯ボウガン。矢は5本だけだ。
背負った背嚢都ウェストポーチに何が入っているか分からないが、大した武器はなさそうだ。
(一人で行くと言うから、てっきり重装備の破壊力のある武器を装備すると思っていたけど……)
もしかしたら、これから行く森の危険度を測り間違えていないか、アオイは心配になったが、それを表立っていう雰囲気ではなかった。
やがて馬車は森の入り口に到着する。リュウジは荷台で眠っていたようであったが、馬車が止まると動き出した。
「私はギルドに帰ります。それでは2日後に迎えに来ます。しかし……本当によいのでしょうか?」
アオイは心配そうにそう尋ねた。これからリュウジが入っていく森はただの森ではない。
数は少なくなったとはいえ、凶暴なグレイウルフの群れが巣くう森なのだ。
さらに遭遇率は低いながらも、人間にとって危険なモンスターも生息する。
そんなところに一人で行くのは自殺行為だ。
重装備で魔法も使えて火力が半端ないというのならともかく、軽装備で武器はナイフ2本だけでは死にに行くようなものだ。
「問題ない」
アオイの心配など意に介さないリュウジは振り返りもしない。装備で表情は全く見えないが、その後ろ姿に迷いはない。
「では、無事に帰還を祈っています」
アオイはそうリュウジに告げて、馬車を出すよう御者に支持する。森の出口とはいえ、この辺りも危険がないわけではない。
「クエスト調査官はいくら強いと言っても、さすがにこの森に一人で探索とは、少し油断しすぎではないですかね」
御者もそう心配そうにリュウジを見送っている。だが、アオイも心配であったが、リュウジのプロフィールを調べてその心配も幾分は解消されていた。
「冒険者ランクB」
クエスト調査官であっても、ほとんどがランクCであることを考えると、リュウジと言う男は、冒険者としても相当の力量があると思われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます