第78話 不法な召喚対策
感心しているジュジュの頭をヴィリは優しく撫でた。
「だから、今は全ての魔導師は王都で生まれると言われることもある。まあ正確に言うなら全ての魔導師は王都で一人前になるってことだけど」
精霊を召喚し、契約してやっと一人前の魔導師とみなされる。
それが現代魔法の常識である。
「なるほど。王都だけなら、ヴィリの目も届くということか?」
「召喚に関してはね。そういうシステムを作った。システムの仕組みは……」
「仕組みの説明はいい。どうせわからん」
「そっか。でもシステムも絶対ではないよ。巧妙に隠されたらわからない」
ヴィリたちは、精霊が召喚されたら大体わかるらしい。
そこでふと疑問に思う。
「ん? 召喚されたことがわかるなら、そこに向かえば敵がいるんじゃないか?」
場所と時がわかれば、シルヴェストルならすぐに見に行ける。
そうすれば、召喚主が届け出している正規の合法的な魔導師かどうかわかるだろう。
「それがね。システムの仕組み的に、把握するタイミングが少し遅れるんだ」
「少しってどのくらいだ?」
「一時間ぐらい」
「ふむ。結構遅れるんだな」
「遅れる理由は、こちらが召喚の事実を把握する仕組みの根本的な――」
「いや、仕組みの話は今はいいかな」
「そっか」
一時間あれば、遠くに逃げることができるだろう。
急いで駆けつけても、敵を見つけるのは難しい。
「だが、一時間後に駆けつけても敵が拠点にしている場所はわかるんじゃないか?」
ジュジュを召喚するために、あのバカは大きな魔法陣を描いていた。
魔法陣は描くのに時間がかかるし、用意も大変だ。
自分たちが好きに使える空間が無ければ難しい。
「場所も把握するのは難しいんだ。次元が違う……いや精霊の世界とこちらの世界のずれが大きいからね」
「なるほど?」
恐らくヴィリは、俺にもわかるように正確さを犠牲にして説明してくれたのだ。
それでも俺はよくわからなかった。
「まあ、とにかく場所の把握も難しいってことだな」
「そういうこと。場所もわからないし、時間も一時間遅れ。だから敵を捕まえるのは難しいんだ」
「だけど、不法に召喚された精霊の数は大体わかると」
「そう」
「ネコのことは把握してたのか?」
「不法に召喚された精霊がいるということは、把握してたよ。召喚時刻は、グレンが保護する前日の真夜中だね」
「にい?」
俺は首をかしげるネコの頭をわしわしと撫でた。
そんなネコを優しい目で見ながら、ヴィリは言う。
「あのバカに魔法的に禁じたのは、精霊との契約術式だけじゃない。召喚自体も禁じてたんだ」
「……つまり召喚しているのは別の奴か」
「そういうこと。それでそいつは今も召喚をしている」
「数は?」
「ネコが最初。それから新たに二体召喚されている」
「二体もか」
「そう。被害精霊が最低でも二体と考えた方が良い」
そして、その数は時間とともに増えていくのだろう。
苦しむ被害精霊を、これ以上増やさないためにも、速やかに敵を捕まえなければならない。
時間とともに敵の戦力も増強してくはずだ。
それを防ぐという意味でも、速やかに防がねばなるまい。
「召喚自体を一時的に禁じることはできないのか?」
「できる。だけど、それをすると、契約済みの精霊の大半が苦しむ。死ぬ精霊も少なくないはずだ。……そうだね。えーっと、精霊にとって大切な魔力の流れを不自然な状態に強引に変えないといけないからね」
ヴィリは言葉を選んで、俺にもわかるように説明してくれた。
だんだん、説明がわかりやすくなっている。
もしかしたら、俺の理解レベルに合わせるのが上手くなってきたのかもしれない。
「なるほど。それならば、召喚自体を禁止するという手は取れないな」
苦しむ被害精霊を救うために、新たに苦しむ精霊を産み出しては意味が無い。
「俺がジュジュと一緒に精霊を探さなければならないという理由がわかった」
「じゅ!」
ジュジュも、今までの会話を理解しているかのように、力強くなく。
きっと、ジュジュは話の内容を理解しているわけではない。
だが、精霊が困っているということと、それを自分なら助けられると言うことは理解したのだ。
「お願い。グレン。精霊の召喚術式を確立した者としても、悪用されている現状はなんとかしたいんだ」
「そうだな。もちろん手伝うよ」
「ありがとう」
ほっとした様子でヴィリは笑顔になった。
会話に一区切りがついたころ、シェイドの作ってくれたゆで卵は無くなった。
ジュジュもネコもお腹がいっぱいになったようで、うとうとし始める。
そんなジュジュとネコをヴィリに任せて、俺は皿を持って台所に移動する。
俺は皿を洗ったりゆで卵の殻を捨てたり、後始末をしながらヴィリに尋ねた。
「で、ヴィリ。場所に多少の当たりぐらいは付いているんだろう?」
「よくわかったね」
「王都は広い。当てもなく歩き回ったら、一周するのに何日もかかるからな」
「大体は絞っているよ。それでも広いけど」
そういいながら、ヴィリは鞄から大きな地図を取りだして机に広げた。
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