第55話 精霊の状況
その日の夕食は、ヴィリとオンディーヌと一緒に俺の小屋で食べた。
食後、俺はお茶を飲みながら、ヴィリに尋ねた。
「そういえば、昨日精霊を助けて欲しいっていっていたけど」
「うん。言ったよ、呪いに苦しむ精霊を、グレンに助けて欲しいんだ」
「苦しんでいる精霊に心当たりあるのか?」
「いま、調査しているところだよ。でも確実にいる」
「そうか、早く助けられたら良いな」
「ほんとにね」
ヴィリは真剣な表情で頷いている。
机の上に仰向けで乗ったジュジュのお腹をこちょこちょ撫でながらオンディーヌが言う。
「グレン。精霊は認めた人としか契約しない。そこのヴィリが編み出した契約術式を使ってもそう」
「そうだろうな。精霊の方が人より強いし、無理矢理強要するのは難しかろうさ」
魔力の桁が、人と精霊では違うのだ。
それに精霊が物理的に受肉しなければ、人は精霊に手出しすることはできない。
俺が近くにいるはずのシルヴェストルを知覚できないようにだ。
そして、精霊は精神的、魔力的な存在。受肉しなくても精霊は困らない。
精霊より強い人間がいたとしても、霊体化されれば、絶対に勝つことができないのだ。
「だけど、無理矢理支配下に置く方法を考えた奴がいるっぽい?」
「ぽい? オンディーヌにも確証は無いのか?」
「うん。確証はないけど、精霊たちの間で噂になっている」
「そんな方法があるのか……、あ、それが呪いを使う方法か?」
「そう」
魔法の分野では人は精霊に基本的に勝てない。
だが、呪いは魔法ではなく、神の奇跡、神の御業なのだ。
精霊を支配することができても、おかしくはないだろう。
「僕の専門は魔法で、呪いは専門外なんだよ。オンディーヌたちもそう」
「呪いは、魔法とは全く別物。そもそも神は意味不明な存在。神の考え、神が振るう力の理論など、考えるだけ無駄」
人にとっては、まさにそうだ。
蟻が人の思考を推測できないように、人は神の思考を推測できない。
「精霊にとっても、神は意味不明な存在なのか」
「そう」
「意味不明なりに、呪いについて調べてはいるけど、難しいねえ」
オンディーヌと違って、ヴィリは神についての解析を諦めてはいないらしい。
「ヴィリは諦めが悪いんだな。良い意味で」
「それが取り柄だからね、むしろそれしか無いと言ってもいいかも」
「そんなことはないさ。ヴィリにはいいところが沢山あるよ」
「ありがと」
「……調子に乗るな」
オンディーヌが不機嫌そうにぼそっと言った。
その後、ヴィリとオンディーヌは帰って行った。
そして、俺はジュジュとシェイドと一緒に床につく。
「じゅぷぃー」
「すぴぃー」
ジュジュとシェイドは、ベッドに入ると五秒で眠りについた。
ジュジュもシェイドも、呪いあけで、まだまだ休眠が必要なのだろう。
「明日からどうするかな」
ヴィリたちが、呪われた精霊に関する情報を手に入れるまで俺に出来ることはない。
精霊王シェイドだけでなく、精霊の上王ジュジュまで呪った奴らなのだ。弱いわけはない。
「いつ、呪われた精霊の場所が分かっても良いように、訓練でもしとこうかな……」
そんなことを考えている間に、俺も眠りに落ちたのだった。
その夜、ジュジュはお腹が空いたと二回鳴いた。
そのうち一回はトイレもしたかったらしい。
初日のように漏らさないで、トイレがしたいと教えてくれたのだ。
ジュジュの成長が著しくて、感動してしまった。
次の日の朝。俺が目を覚ますと、オンディーヌが既に部屋にいた。
「……また気づかなかった」
やはり勘が鈍っている。
寝ているときだろうと、誰かが近づいてきたら、素早く起きれなければならないのだ。
「今日は姿を消してきた。それに実体化したらすぐグレンは目を覚ました」
「そうか。それならまあ、仕方ないか。殺気を放っていない姿を消した精霊に気づくことは不可能だし」
姿を消した精霊を知覚することは不可能だ。
殺気でも放っていない限りは絶対に無理だ。
どうして殺気にだけ気づけるのか、ヴィリに尋ねたら、殺気は魔法のような物だからと言っていた。
よくわからないが、そうなのだろう。
「普通は殺気には気づけないけど。グレンはすごい」
「そうかな」
「そう。だけど、これだけ話しているに、シェイドは起きない」
俺の横ではジュジュとシェイドがお腹を天井に向けて、気持ちよさそうに眠っていた。
ジュジュは赤ちゃんなので眠っていて当然である。
「シェイドも疲れているんだろうさ」
「むう。ジュジュは昨日何回起きた?」
「二回かな」
「グレンは疲れてない?」
「大丈夫だよ。トイレに連れて行って、ご飯を食べさせたらすぐ寝るし」
ちなみに、二回ともシェイドは熟睡しているようで、全く起きる気配は無かった。
それを言ったら、シェイドがオンディーヌに叱られるので、言わないでおく。
やはり、シェイドは疲れているに違いない。
その後、起きてきたジュジュとシェイドと一緒に朝ご飯を食べたのだった。
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