第54話 お風呂
体を洗った後、みんなで湯船に入る。
ヴィリは湯船の中で手足を伸ばす。
すると泥人間と化したグノームがヴィリをマッサージしはじめた。
「グノーム、気持ちいいよ、ありがとう」
「お安いご用だ。肩が凝っておるな!」
「あー、そこそこ」
ヴィリは泥の風呂のなかで、泥人間にマッサージされているのだ。
よくわからない状態である。とにかくドロドロだ。
「じゅっじゅっ」
ジュジュは、俺にしがみついたまま、尻尾をバシャバシャさせる。
呪いが解けたおかげで、尻尾も大分長くなった。
「よく考えたら、ジュジュとお風呂に入るのは初めてだな」
洗ってあげたことは何度かある。
だが、一緒に湯船に浸かるのは初めてだ。
「ジュジュ、手足と尻尾、あと羽に違和感はないか?」
「じゅい」
昨夜の間に大きくなった手足と尻尾、羽を、湯船から持ち上げて改めてじっくりと見た。
泥を拭って、きちんと確認していく。
「ふむ。痛くないんだよな」
「じゅ」
尻尾を揺らし、手足をバタバタさせる。背中の羽もパタパタ動いていた。
「この羽の大きさだと、まだ飛べなさそうだなぁ」
「じゅぅ」
優しく触りながら、羽を調べる。
「じっじじっじ……」
「む? 気持ちいいのか?」
どうやら羽を触られるのが気持ちが良いらしい。
すると、ヴィリをマッサージしていたグノームが言う。
「お、ジュジュさまもマッサージをうけておられるのだな」
「じゅぅ~」
「グレン。ジュジュさまは呪いが解けたばかり。マッサージは効果が高いはずだ」
「そうなのか?」
「うむ。呪いで縮こまっていた末端部分に血液と魔力が流れ始めたばかりだからな。魔力も滞りやすい」
そう言われたらそんな気がしてくる。
「我も手伝おう。ヴィリ。ジュジュさまのマッサージに集中する」
「ああ、もちろんいいよ。ありがとう。充分楽になった」
グノームが俺たちの方へとやってくる。
すると、水面から俺の指ぐらい細い小さな手が十本ほどにゅうっと伸びた。
その手がジュジュの手足と羽、そして全身をマッサージしていく。
「じじゅぅぅ……」
ジュジュはとにかく気持ちよさそうだ。
「おお、凄いことができるんだな。グノームは」
「高濃度の土が混ざった泥の風呂だからできるのだ。グレン、ジュジュさまの全身をお湯に浸からせてくれぬか」
「ああ、わかった」
俺にジュジュの首の後ろを持ってお湯に浸からせる。
すると、お湯自体がうごめいて、ジュジュの体を包んでいく。
グノームは真剣な表情で、お湯を操っている。
いや、操っているのはお湯ではなく、お湯に混じった土なのだろう。
ジュジュは気持ちよさそうに目をつぶって、よだれを垂らしている。
一方そのころ、シェイドは仰向けになって泳いでいた。
シェイドはシェイドで楽しんでいるようだった。
俺たちは泥風呂を堪能し、ジュジュがグノームのマッサージを堪能した後、綺麗な水の風呂で泥を落とす。
そして、軽く体を洗ってから外に出る。
ジュジュとシェイドの体も拭きながら、窓の外を見ると明るかった。
「夕方までは、まだまだ時間があるな」
「そうだねぇ」
気の抜けた様子のヴィリが返事をしてくる。
「なんかこう。明るい間に風呂を入るとなんとも言えない気持ちになるな」
「後ろめたい感じ? 昼間から酒を飲むみたいな?」
「いや、後ろめたさはないな。そうだな、得した感じ」
「そっか。気持ちはわかるかも」
服を着て外に出ると、近くにあった長椅子に座ってのんびりする。
風呂で熱くなった体を気持ちよい風が冷やしてくれる。
「この風ってシルヴェストルか?」
「そだよ」
「ありがとう、シルヴェストル。心地よいよ」
「じゅうじゅ!」
ジュジュとシェイドも気持ちよさそうだ。
ジュジュはいつものように俺に抱っこされている。
そしてシェイドは、俺の太ももに顎を乗せて、寝息を立てていた。
「なんか、こう。犬っぽいな」
「確かに」
誰がとはいわなかったが、ヴィリには伝わったようだ。
シェイドは、眠たそうにしながら目を開ける。
「うにゅ?」
「シェイドも寝てて良いぞ。呪いあけなのはシェイドも同じだしな」
「
そんなシェイドにヴィリが言う。
「壊さないように気をつけてくれるなら、シェイドもお風呂場で遊んでも良いよ」
「いいのか?」
「いいよ。ストレスたまることもあるだろうし。注意点はオンディーヌに聞いて」
「わかったのである!」
シェイドは嬉しそうに尻尾を振る。
益々犬っぽい。
しばらくのんびりしていると、オンディーヌがやってきた。
「水とおやつを持ってきた」
「おお、ありがとう! ちょうど喉が渇いていたところなんだ」
「じゅ!」
ジュジュもお腹が空いていたらしい。
呪いあけのジュジュは、体が正常に戻る過程の途中にある。
お腹が空いて仕方が無いのだろう。
俺はジュジュにおやつをあげながら、オンディーヌにもらった水を飲む。
「やっぱりオンディーヌの水はうまいな」
「ふひひ」
オンディーヌは嬉しそうに微笑んでいた。
一休みした後、俺たちはもう一度風呂に入った。
そして、次に風呂からあがった頃には、空は夕焼けで赤く染まっていた。
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