第35話 ダンジョン探索の始まり
学園の飛竜ウインドロードが降り立ったのは森の中だ。
その森の中の道なき道を歩いて、ダンジョンへと向かう。
「やはり歩きにくいですね。体力を使わないようにゆっくり行きましょう」
「はい。それがよろしいですわ」
休憩を挟みつつ、ジュジュにもご飯をあげたりしながら歩いて行く。
途中、俺は気になったことをリルに尋ねた。
「オンディーヌから魔力を貰っていましたが、ダンジョンの魔物に警戒されないでしょうか?」
精霊王ではなくても、ヴィリが近づいたら精霊王の魔力の気配を察して逃げるという話だった。
フェリルと、そしてジュジュには精霊王オンディーヌが魔力を与えている。
フェリルの中のオンディーヌの気配を察して逃げないだろうかと心配になったのだ。
「それは大丈夫ですわ。学院長はオンディーヌさまたちと契約していますから、魔力回路を一部共有されているので近づけないだけですわ」
「なるほど。そういうものなのですね」
魔法というのは奥深いものらしい。
二十分ほど歩くと、うっそうと茂った森の中に、突然石造りの小さな建物が現われた。
ダンジョンの入り口だ。
建物の高さと幅は俺の身長の二倍ぐらいあった。
「人工物っぽいですね」
「可能性はありますわ。古代の遺跡かも」
ダンジョンの入り口自体は広く、フェリルが入るのに何の支障も無いだろう。
「ヴィリは通路が狭いと言っていたが……」
「中に入ると狭くなっているのだと思いますわ」
入り口は広く中が狭い構造なのだろうか。
俺は入り口から中を覗く。
入り口すぐのところが少し広めの部屋になっており、そこから地下への階段が続いているようだ。
階段自体は、フェリルがギリギリ通れる程度。
「確かに中は狭そうですね。とりあえず、ダンジョンに入る前に改めて点検しましょう」
「はい。そういたしましょう」
俺とリルは互いに装備を点検する。
そして、ジュジュとフェリルに水と食べ物を与え、自分たちも水と食べ物を口にする。
ご飯を食べ終わると、ジュジュはうとうとし始めた。
「ジュジュ、これからダンジョンだよ」
「じゅ~?」
「俺が守るから安心して眠っていていいよ」
「じゅ」
本当は背中に背負った方が良いのかも知れない。
だが、背後から攻撃されることもある。
前も後ろも、危険度は大差はない。
それに、俺の背中には、ヴィリが用意してくれた冒険道具の入ったリュックがある。
俺は眠っているジュジュの頭を撫でて、気合いを入れ直した。
「さて、行きますか」
「はい!」
「がう!」
「まず、ヴィリにもらった
起動しておけばダンジョンの地図が自動生成されるとのことだ。とても便利だ。
起動した自動地図製作装置はポケットに入れておく。
こうしておけば、必要なときにいつでも見ることができる。
その他の魔道具も全ていつでも使えるように改めて確認していく。
俺の装備確認が終わる前に、リルは既に準備を終えて待ってくれていた。
「お待たせしました」
「グレンさん、指示はお任せいたしますわ」
「リルさんも経験豊富なのでは? それに私には長いブランクがありますし、強力になった魔導師と組んだ経験もほとんどありません」
ヴィリ以外の強力になった魔導師とは組んだことがない。
「学院長が、お任せするようにと」
「ふむ、ヴィリがそういうなら、それがいいのかもしれませんね」
もしかしたらヴィリは前時代の戦闘方法を学ばせたいのかもしれない。
「あの、グレンさん」
「どうしました?」
「互いに名前を呼ぶことにしましたが……そろそろ敬語も抜きにいたしませんか? そのほうが咄嗟のときによいかと」
「確かに。ではそうしようか」
「はい」
「じゃあ、俺が先頭でいこう。その後ろにリルさん、
「お任せを」「がう」
最新のセオリーはしらないが、十年前は剣士が前を歩くのが基本だった。
精霊契約後のヴィリと組んだときも俺が先頭を歩いていた。
しかし、フェリルのような精霊を前衛として扱うか後衛として扱うか判断に迷うところではあった。
だが、フェリルは、リルよりは確実にタフにみえる。
だから殿を任せることにしたのだ
俺はヴィリから貰った携帯用魔法ランプを肩に固定し、ダンジョンの中に入っていく。
「これは便利だな」
携帯用魔法ランプには専用のアタッチメントがあり、肩で固定できるようになっている。
おかげで手をふさがずに前方を照らすことができるのだ。
「……ぷしゅー」
そして、そのころにはジュジュは静かに寝息をたてはじめていた。
ゆっくりと進みながら、足の調子を確かめる。
先ほどオンディーヌに魔力を貰ったおかげで、調子がよい。
痛みもほとんど無いし、短時間ならば自由に動かすこともできそうだ。
リルもフェリルも落ち着いていた。
ヴィリが経験豊富と言っていただけのことはある。
明らかに素人ではない。
「リルさんはダンジョン探索の際はいつもどんな感じで?」
「そうですね。魔法で罠を探知しつつ敵襲を察知し、遠距離から罠を壊して、魔物を倒しながら進みますわ」
敬語をやめるように言ったのに、リルは余り口調が変わっていなかった。
人には、それぞれしゃべりやすい口調がある。
リルはこのぐらいがしゃべりやすいのかもしれない。
そんなことを考えていると、
「敵襲!」
そう、リルが叫んだ。
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