第27話 呪われていた元剣聖
「そんなわけ……」
そこまで言って、先日、俺は魔力量が少ないから測定が簡単そうだと言った時、ヴィリが何か口ごもったことを思い出した。
あのとき、魔力量は多いと言いかけていたのかもしれない。
「それこそ、精霊の力を借りないと、一生、絶対に勝てないと思わされるほどにね」
「そう、……だったのか。俺は魔法が使えていたのか」
「そうだよ。魔導師ではないが、魔法を使える魔法使いといってもいいかもね。それも凄まじく強い魔法使い」
俺には自分が魔法を使えていたとは信じられなかった。
だが、ヴィリがそういうのだから、そうなのだろう。
「信じるけど、それなら、俺が魔法を使えるって教えてくれても良かったのに」
「教えたところで……と、いうのはあったかな。僕のせいでグレンは足を痛めてしまっているし」
「ヴィリのせいではないけどね」
そうは言いつつも、魔法を使えると教えてくれなかったことと、足を痛めたことの関係はわからなかった。
足を痛めていたら、どちらにしろ身体強化の魔法を使っても剣士としては活躍できない。
そういうことだろうか。
疑問に思ったことはとりあえず聞いてみよう。
「ところで、足を痛めたことと――」
「うん、終わった」
話しかけた途中で、オンディーヌがジュジュに魔力を与え終えた。
ジュジュは気持ちよさそうに眠っている。
「ありがとう。オンディーヌ」
「気にしないで。グレン。足の調子はどう?」
「まだ治ってはいないが……確かに症状は軽くなったからね」
俺の足を見ながら、ヴィリがいう。
「……グレン。疑問に思ったことはない? なぜ足が治らないのか。治癒魔法が効かないのか」
「少しは思った。だが、まあ、骨や筋肉に根深い傷が付いたんだろうと考えていたな」
「その足の怪我、呪いなんだよ。ジュジュとの呪いと一部が同じ、魔力が失われる効果がある」
「…………そうだったのか」
「それが答え。グレンの膨大なはずの魔力は呪いに吸い取られて、枯渇していたんだ」
ヴィリの研究が終わり、俺が魔法を使えるとわかったときはもう遅かった。
既に呪いのせいで、俺の魔力が無くなっていたのだ。
そして、その呪いはヴィリをかばって受けたもの。
だから、ヴィリは俺に合わせる顔がないと思ったのかもしれない。
「魔力を与えることができれば、症状は緩和しただろうけど、オンディーヌたちはグレンに魔力を与えることはできなかった。相性が悪いからね」
「悪くない。グレンと私の相性は悪くない」
「うん。そうだね。でもグレンとジュジュほどではない。というか、グレンとジュジュは呪いのせいで魔力回路の臨界面が……いややめよう」
難しくなりそうだと思ったらしく、ヴィリは説明を途中でやめた。
「よくわからんが、呪いが似ているからつながりやすくなったってことか」
「そういうこと。そしてジュジュとオンディーヌは互いに精霊だからね。魔力を与えやすかった」
オンディーヌからジュジュへは両者とも精霊だから魔力の受け渡しが可能だった。
そして、ジュジュから俺へは呪いによって、つながったということらしい。
「……俺はジュジュを保護したつもりになっていたが、救われていたのは俺だったのかも知れないな」
「うん。そうだね。元々のグレンの魔力量が多かったから、死なずに済んでいたとはいえ弱りつつはあったし」
「あと十年ぐらいだった」
オンディーヌがしっかりと俺の目を見ていう。
「十年で死んでたってことか?」
「そう」
思ったより深刻だったらしい。
俺を救ってくれたジュジュは俺に抱っこされて気持ちよさそうに眠っていた。
「で、ここからが肝心なんだけど」
「え? これ以上に肝心な話があるのか?」
これまでの話で充分驚かされている。
それにとても大切な話だったと思う。
「これからダンジョンに行くわけだけど」
「……うん、そうだな」
元々、今はダンジョンへの準備の途中である。
「グレンは足を痛めた後も鍛錬をやめてなかったし、肉体は衰えてないよ、安心して」
「それはありがたいが、勘みたいなのは落ちてるだろうさ」
「ま、すぐ取り戻せるよ。グレンは子供の頃から大人になるまで、ひたすら戦いに生きてきたわけだし」
「そうだといいけど」
「で、オンディーヌたちとジュジュのおかげで足の調子もいいでしょう?」
「そうだな。感謝しかない」
「それにグレンは身体に魔力が流れる感覚を覚えたでしょう? それに足が光ったように見えたとか?」
確かにオンディーヌがジュジュに魔力を与えたとき、魔力っぽい何かの存在をはっきりと知覚できた。
ヴィリがいうには、昔から無意識下で魔力を感じ取っていたらしいが、知覚できたのは初めてだった。
「知覚できたかどうかっていうのが、魔法では大切だから。その光を身体に
「解呪さえできれば、グレンはヴィリをぶっころせる」
鼻息の荒いオンディーヌに、
「怖いこと言わないでよ」
ヴィリは苦笑していた。
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