再会

 フェルサがテスジェペに到着した。高速に飛行できるように改造したスレイサに乗って半日程で着いた。

 テスジェペの地下都市の入口に着陸して操縦席から降りたフェルサをラックが迎えた。

「会いたかったぜ。フェルサ」

「ああ、俺もだ」

 フェルサはラックと握手をして喜んだ。

「ちゃんと連絡しろよな。お前の兄貴として辛いから」

「何で勝手に俺の兄貴になってんだよ。でも嬉しいよ」

 二人は話しながら地下都市に入った。

「ベリフとチャミはゾルサムへ町の立て直しに帰ったよ。区切りがついたら戻って来る」

「……レンディは?」

「ああ、いるよ。この作戦のリーダーだ。コンファはモスランダに帰ったよ」

「そうなんだ。レンディは一人で頑張っているのか」

「ちょっとカリカリ気味だけどな。まあフェルサと会ったらもっとカリカリしそうだが」

「そう言うなよ。あいつも必死なんだ」

 フェルサはため息をついて微笑んだ。

 研究室に入ると水色の作業着姿のレンディが技師達に作戦の説明をしていた。

 レンディとフェルサは目が会ったが、すぐにお互いに目をそらして打ち合わせが終わるのを待った。

「よお、レンディ。大変だな」

 ラックがレンディに声をかけた。

「お前も手伝えよ。フェルサ、久しぶりだな」

 さっきのよそよそしい雰囲気と変わってレンディの顔が穏やかになった。

「ああ、レンディも元気そうだな。それとごめん……あの時、食ってかかって」

「気にするな。私も言い過ぎたと思っている。すまなかった。でもお前にはお前の戦いをして欲しかったのは本当だ」

 フェルサも「ああ、わかっているよ」と穏やかに答えた。

「お前はやっぱり血より油の匂いが似合っている。設計図の件だな。もう頼んである」

 レンディは技師から薄型の端末を受け取るとそれをフェルサに渡した。

「ありがとう。俺達も戦うよ」

「良かった。少し話をしないか」

 近くの席でラックも含めて三人は話をした。

「そうか……コンファが長老の代理になったんだ」

「ああ、私が帰るべきだったのだが、ここの長老とお父様が話し合ってそうなった。ベリフ達は一旦帰る事になったが、向こうで仕事の引継ぎが終わったら戻ってくるよ」

「まあ、そういう事だから安心しな」

 ラックが水を飲みながら答えた。フェルサは笑った。

「お前は本当に変わらないな。今何をやっているんだ」

「ギランクスに潜入してお宝を盗む計画を立てているんだ」

 ラックはにっこりとフェルサに答えた。

「ラック……そんな事を考えている暇があるなら私達を手伝えよ」

 レンディがため息をついて呆れた。

「俺、そういうみんなで一緒に頑張ろうとか向いてないし」

「ああ、わかるわ、それ。窮屈だもんな。ハハハ、やっぱり俺達似ているよな」

 二人が明るく話しているとレンディが「お前ら……」と睨んだ。

「いや、そういう訳じゃないんだ。じゃあ俺、戻るわ。必ず応援に来るからさ。頑張れよ」

 フェルサが苦笑しながら言って立ち上がった。

「ああ、待っているぞ」

 レンディが微笑んで右手を差し出した。フェルサはレンディと握手した後、ラックと一緒に部屋を出た。

「レンディ、痩せたな……」

 フェルサは暗い表情で呟いた。

「ああ、いつも気を張ってさ。見ていると辛くなるよ」

 ラックも重い口調で答えた。

「あいつ、いつもそうだからな。自分の気持ちは後回しでさ」

「だけどそれであいつは強くなれたんだろ。俺はいつもフラフラしているけどさ、そういう所はあいつを尊敬しているんだ」

 フェルサは「へえ、意外だな」とラックを見た。

「フェルサだってそういうレンディに言われたから、おとなしくグノンバルで修業しているんだろ」

「まあな。俺達も頑張らないとな」

 二人は雑談しながら地下都市を出た。

「じゃあ、またな」

 フェルサはスレイサに乗ってラックに手を振った。

「ああ、待っているぜ」

 ラックも手を振って見送った。

 フェルサの乗ったスレイサは音を立てて離陸すると噴射口が紫色に輝き高速でテスジェペを後にした。

「凄いな。あっと言う間に飛んで行った。あっ、そうだ。トトに餌をやる時間だ」

 ラックは急いで地下都市に戻った。

「レンディ、待っていろよ」

 フェルサは機体の下に広がる雲の海を眺めて呟いた。

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