第6話 AK47

そんでもって、次の日曜日の早朝。


私は多摩市の人気のないに山間部の某所に狩猟部の面々と一緒にきていた。


「あのー、本当にこんな格好でやるんですか」


私は迷彩服に軍用ブーツ。ブッュハットといわれるツバの広い帽子。さらには食料や様々なキャンプ用品ツールが入ったバックパックを背負い、はっきりいって、異様な恰好だ。


朝一の電車できたから他の乗客に見られなかったが、駅員に見られた時は、死にたくなった。


エアガンだけは抜き身で持ち歩くわけにはいかないので、釣り竿用の大型のバックに入れて、全員運んできた。


「じゃーん、今日これがたまちゃんの使うエアガンだよ」


狩谷部長から手渡されたのはAK47アサルトライフルという、旧ソ連を中心に世界中で使われた傑作アサルトライフルだということだ。


「これ、ストックがないんですけど」


わたしは手渡されたAK47をマジマジと見た。Ⅿ16や64式と違って、武骨というか野暮ったいといか、はっきりいってデザイン的にはかっこいいとは言えない。

でも、頑丈そうで、武器として何とも言えない安心感を与えてくれる。


「これは折り畳み式のストックなんだ」


AK47の両側に金属製の棒が二本平行についていて、棒の先に半月型の金属の肩当になっている。狩谷部長は折り畳みストックを伸ばし、固定してくれた。


伸ばしたストックは金髪ツインテールちゃんが前に持ってたMP40とそっくりだ。


「はい、これは海外製じゃなくて、東京マルイのだから、初心者のたまちゃんでも問題なく使えるよ」


海外製のエアガンはものにもよるが、電気系統に不備があり、専門店などで調整しないと満足に使用できないものも多いという。


「AK47はね。世界で一番多く作られたアサルトライフルで、コピー品も含めれば数憶丁は作られてるから。それだけ武器として優れているということなんだ」


部長の説明を聞きながら、そんなに沢山作って、どうするんだろうと思ったが、まあ、世界中いつでもどこかで戦争してるし、嫌なことだが、兵器の需要はいつでもあるのだろう。


「エアガンだから、内部の構造は東京マルイの他の製品とほとんど同じなんだけどね」


わたしは改めて、腕の中のAK47を見つめた。ずっしりと重いが、64式などと違いプラスチックを多用しているので、女の私でもなんとか使えそうだ。


その後、他のメンバーも各々エアガンを取り出して、作動をチェックした。


狩谷部長はⅯ16にグレネードランチャーを付けて、カラースプレーで迷彩をしてある。


副部長の有坂先輩はRPK74という、これまた旧ソ連の銃だが、普通のライフルより、かなり長く、いわゆる分隊支援火器=軽機関銃というもので、アサルトライフルより強力な火器だそうだ。また長い銃身を支えるため銃身の先に二脚が取り付けられていた。


「やっぱりロシア製にはドラム弾倉じゃないとね」


RPK74には通常、バナナ型の30連マガジンを装着するそうだが、有坂先輩の銃には大型の缶詰のような丸い形の弾倉が取り付けられている。


「露助の銃でマシなのはPPSH41とトカレフだけよ」


そう言ったツインテールちゃんの銃はスターリングmk2.


この銃はイギリスのサブマシンガンで円錐型の銃身にグリップと引き金が付いてるだけという、ものすごくシンプルなデザインの銃だが、この銃で一番目立つのは、普通銃の下部に付いてる弾倉が左側の真横に付いてるところだろう。なんでもこの銃はWWⅡの時に、イギリス軍が開発したステンマークというサブマシンガンの後継機種で、この銃も折り畳みストックになっている。


服装も皆、それぞれの銃の国の軍隊のものを着衣していて、なんだか、仮装行列のようだ。人気のない山の中でよかった。街中でこんな格好していたら、間違いなく警察に通報されるわ。


「さてと、これで準備完了・・・」


その時、いきなり私の後ろの茂みから巨大な人の背丈はあるミノムシが立ち上がった。


「ひい!」


私は思わず腰を抜かしそうになった。


「部長、ダメじゃないですか、南部ちゃんのこと紹介してないですよ」


有坂先輩に言われた部長は、私の後ろに立っている巨大なミノムシに近づき、頭のてっぺんを掴み、ぐいっと、後ろに下した。


すると、中から死んだ魚のような目をしたショートカットの少女の顔が現れた。


「ああ、悪い、悪い、こいつ、2年の南部一色。こいつも、アッシらの部員だからよろしくな」


わたしは恐る恐る、目の前の巨大なミノムシのような恰好をした少女に目をやった。


この服なんなの。


「・・・南部よ。よろしくね」


死んだ魚の目をした少女の口から可愛い声が聞こえてきた。


「驚いたか。これはなギリスーツといって、スナイパーが森やジャングルの中で身を隠す特殊なスーツなのさ」


狩谷部長が説明する。


確かに全身についたヒラヒラが落ち葉のように見える。


「で、南部は今日何持ってきたんだ」


「Ⅿ14、×6のスコープ」


「GHKのガスブロ?」


「違う、マルイのやつ」


「まあ、野外でガスはキツイはな」


門外漢の私に、部長と南部先輩の話ははちんぷんかんぷんだ。


「とりあえず、これが、わが「狩猟部」の全員揃ったわけだ」


全員の準備が完了したのを確認すると狩谷部長が、まるで小学生が探検ごっこを始めるかのように、大声で叫んだ。


「そんじゃ、まあ、全員揃ったところで、サバゲーおっぱじめるか!」

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部活はミリ飯食って、異世界でサバゲーすることです 南極ぱらだいす @nakypa

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