2-5
「えー。あんたたちこんないいところ独占してるのー?」
「ブーム落ち着くまでの特別措置だよ。あんなとこじゃ落ち着いてご飯食べれないじゃん」
「それは確かに……うん、そのほうがいいかあ」
今どこにいる?
そんなシンプルなメッセージが送られてきてから数分後、男ばかり四人の空間に紅一点、霧島旭が加わった。
旭はいつも決まった女子グループで食べている、はずなのだが。
「あっち今日なんかちょっとカンジ悪くってさー。気分悪くて」
「何、どうしたの。物騒だね」
「山崎が来たのよ」
苦虫を3匹くらいたべたらこうなる。そんな表情で、圭の隣の空席に腰を下ろした。
そしてにっこり。今度は満面の笑み。
顔立ちが大人びている旭と全力美少年の圭が並ぶと、姉弟感がなんとも微笑ましい絵面になる。
「上手くやれてるみたいでよかった。いいとこに落ち着いたね、圭君。あ、場所じゃなくて人。グループの話」
「うん、声掛けてもらえて良かったなって思っていたところだよ。……気のせいかもしれないけど、あのクラスちょっと難しいよね?」
「――ご明察。よくわかったね」
「明らかに怯えてる人がいるから」
これには清良も二人も驚いた。
クラスの現状について、三人はまだ何も話していない。
正直なところ「あまりよくない」状態なのだ。それをそのまま伝えていいものか否か、判断が出来かねていたのである。
「……ちょっと、めんどくさいやつがいるのよ。いじめ……っていうほどじゃない、とはおもうんだけど」
「いやー……決まったターゲットがいなってだけで結構ギリギリアウトじゃない」
「アウトだよ」
アウト、と言い切ったのは清良だ。朝机の上に花が供えられているのを見たのは清良しか見ていない。
あれは確実に、冗談やいじりの範疇を越えていた。
「……圭君、まじな話少し気をつけたほうが良いかもしれない。そいつ……山崎っていうんだけど、多分狙われてる」
「――俺は顔も知らないのに狙われるのか」
清良の本気の忠告に、圭はすっと目を細めた。
美少年のその表情は、あらゆる意味で心臓に悪い。
温度がなくて、静かで。――ようは似合いすぎるのだ。
「……ちなみにそいつは、すっごく屈強で喧嘩最強みたいな感じ?」
「え、いや」
「それかめちゃくちゃ頭が良い」
「そんなことはないとおもうけど」
「頭はよくないわよ」
「……困った。怖さを全く感じない」
色々とイメージを膨らませようとしたものの、警戒を抱く程のものではないという判断に至ったらしい。
圭の表情から目に見えて力が抜ける。
「一言でいうと実家が太くて調子乗ってる系? お父さんが国会議員とかじゃなかったっけ」
「確かそう。お母さんの方も結構ゴリゴリのお嬢って話じゃなかったか」
「あーそうそうー」
哉汰と紘昭から与えられた追加情報についても
「それなんか関係ある?」
この一言だ。
育った国が違えばそのあたりの感覚も違うのだろうか。
見た目の儚さを盛大に裏切る胆の座りっぷりに、4人はそれぞれ困惑の表情を浮かべた。
実際、関係があるかといえば「ない」これが理想である。
だが数ある私立校の中でもこの学校は裕福な家の生徒が多く、親の職業が校内のヒエラルキーにも少なくない影響を及ぼしているのが現実だ。
清良の父親はサラリーマンだが、現在のポジションで堂々と平和にすごせているのはひとえに見た目と性格のおかげといっても過言ではない。
「……まあ、なんかあるのか。そういう風習が」
4人の「どうしようこれ」という様子を見て、圭の方がすんなりと折れた。
一瞬、ふんわりと目が泳いだような気がしたけれど、余計なツッコミをして話がこじれても厄介だ。
返事の変わりに、ひとつ、頷く。
「OK。気をつけるよ。俺だってトラブルは避けたいし」
「うん。ほんとそうして。最初のうちは出来るだけ一人にならないほうがいいかも」
とりあえず満足のいく返事をもらえた清良は、一人胸を撫で下ろした。
相手の強弱はともかく、トラブルを避けたいというのは本音だろう。最低限、ひとまずノーガード状態は回避できたはずだ。
「といいながら、ちゃっかり圭君の横をキープするモテ野郎の手腕、お見事ですねえ」
「こわ」
「ちょっとやめて二人とも!」
即座に茶化しに入った二人に全力で待ったをかける清良。
「頼りにしてるよ、清良」
わかっているのかいないのか。余裕の表情で乗っかる圭。
そんな男子達。旭が呆れ半分微笑ましさ半分といった様子で眺める。
「なんか見えてきたわ。あんたら、2年後も同じやりとししてそう」
からかわれるのはよろしくないが、「仲がいい」という意味でなら、清良としては大歓迎な未来だ。
だが勿論、一方通行ではどうにもならないわけで。
思わず圭を盗み見ると、圭はどこか大人びた、穏やかな笑みを浮かべ三人のじゃれあいを見ていた。
ほんとうに綺麗な。作り物のような顔。
(……これはこれで、読みにくいな)
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