何でもできるけど

 僕は高校において、常に学年成績トップクラスだった。

 国語、数学、理科、地理、歴史、英語、どれも好きだった。

 というより全体的に勉強が好きだったというのが正しいだろう。

 数学者になるのもいいし、科学者になった自分も面白いと感じた。

 歴史学者として偉人のエピソードを掘り起こしてもいいし、国語が得意だから小説家になってもよかった。


 加えてサッカー部員としても、レギュラー随一の得点力で活躍した。

 これなら将来はサッカー選手として世界に進出するのもいいな、と実感した。

 とにかく僕は、希望のある大人になった自分を、いろんな形で想像していた。


 そんな日々が続いた末、僕は高校3年生のときに進路指導を受ける。

 先生からシンプルなことを問われた。


「将来、決まっているの?」

「いっぱいあるんですけど……」

「君の体はひとつだけだから、将来のことはひとつに絞らないと。何もかもはできないのは、わかってるよね? そのうえで、将来何になりたいか言ってごらん」


「ええと……ああ……うう……」


 僕は何ひとつ答えられなかった。

 やりたいことがありすぎて、ひとつに絞れない。

 ということは、将来に対するビジョンが何も浮かんでいないも同然だ。


 これじゃあ夢のない、冴えない大人になってしまいそうだ。

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