テリヤキバーガーの怨念

 いつものファーストフード店があるところに行ってみたら、そこはもぬけの殻になっていた。ガラスの扉には「テナント募集中」と書かれた看板が貼りつけられている。

 大好きなテリヤキバーガーを、また食べたいと思っていたのに、もうそのチャンスはなかった。

 無力感に襲われながら、僕はその場を去る。


 しかしもぬけの殻になった店の向かい側では、新しい店が建っていて、中から行列が続いていた。

 その店はまた別のファーストフード店のようだった。

 一体何事かと思いながら、僕はその行列の一番後ろについてみる。


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 30分ぐらい行列を待ったあとで買い、自宅で取り出したのは新感覚の「かがやきバーガー」だった。

 横から見えるソースが異様に光り輝いている。それはコーティングされた感じではなく、宇宙の星のように自然に輝いているみたいに神々しい。

 僕はそのきらめきに魅了されるまま、かがやきバーガーを口にしてみる。


「うまい……」


 天にも昇るような味に、僕はすっかりとりこになってしまった。とりつかれるままに二口目、三口目とかじりついている。かがやきバーガーを知る前にどんなファーストフードを味わったのかについては、我ながらまるですっかり忘れたみたいだった。


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 その夜、僕は何となく息苦しいと思って目を覚ました。


「ウラギリモノ」


 呪わしい声がいきなり聞こえ、僕は「ヒッ」と声を上げながら飛び起きた。

 周囲を見渡してみると、自分以外は誰もいない。


 気のせいかと思い、僕は再び枕に伏せる。

 そのとき、枕の柔らかさが、いきなりハンバーガーのパテのそれに変わったみたいに感じた。

 パン生地に埋もれたように息が苦しくなり、背中にテリヤキソースをかけられたような感触さえ漂った。リアルにテリヤキソースのおいしい香りさえ漂う。まさか僕があのバーガーの中のハンバーグに仕立てられているというのか。そう思うと、僕は恐怖のあまりに目を見開いた。


「ウラギリモノ、タベテヤル」


 再び呪わしい声が聞こえ、今にも怪物に食べられそうな恐怖感が押し寄せた。


「ガブッ!」


「ギャアアアアアアアアアアッッッ!!」


 本当にハンバーガーに背中をかじられたような感じがして、僕はパニックのあまりベッドから飛び降りた。

 無我夢中で部屋の電気をつけると、ベッドには何もない。


 あわてて背中を触ってみると、手には何もついておらず、におっても何も感じなかった。

 しかし確かに声はした。

 それはテリヤキバーガーの怨念だ。


 かがやきバーガーに乗り換えた者に、テリヤキバーガーが無念を晴らそうとしているに違いない。

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