目が覚めたら気持ち良かった件

 目が覚めると見知らぬ部屋だった。

 見覚えのないベッドに寝かされていて、天井は電気がひとつ灯っているだけで、周辺は薄暗い。

 そして僕は、全身を揉みほぐされていることに気づいた。

 それも人間の手ではない。


 独立した白い手が6つぐらいあり、それぞれが独りでに動いて、僕の全身のツボというツボを刺激していたのだ。


 そう気付いたころには、すっかり気持ち良さを受け入れていた。

 体中からストレスというストレスが洗い流されたような感じだ。


「これで終わりです。気持ちよかったですか」

 白い手のどれかから、デジタル的な音声が流れた。

「はい、最高です」

 僕は流れのままに本当のことを答えた。


「それなら施術をした甲斐がありました。それではあちらからお帰りください」

 僕は言われるがままにベッド降りて、出口を通る。


 そこはビルの廊下みたいだった。あらためて屋外に出ると、見知らぬ建物ばかりが周囲に建っていた。

 まるで都会の一角のようで、見覚えはない。そもそも僕は郊外の田舎暮らしだ。

 ここからどうやって家に帰ろうか考えると、またストレスが充満しそうだった。

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