夜行性動物園

「ねえ、本当にここの動物園でデートするの?」

 彼女の美里が、僕にジト目を向けた。

 その様子は、呆れかえっているみたいだった。

 その動物園は、正門が厳重に閉じられ、周辺がにぎわう様子もまったくない。


「あれ、おかしいな……」

 僕はスマホを取り出し、目の前の動物園を調べた。

「もしかして、定休日なんじゃないの?」

 美里が疑心暗鬼の様子で僕を問い詰めた。


「そんな、動物園は子どもがたくさん訪れるぐらいだから、土曜日が定休日だなんてありえないよ」

 僕はそういなしながら、初デートの舞台である動物園の公式ホームページにアクセスした。


「あっ」

 僕はその動物園の見落としていた真実に気づいた。

「ここ、夜行性専門の動物園だ」

 太陽に照らされながら、僕は地上でひたすら気まずさを感じている。

 目の前の動物園は、ただ営業時間外なだけ。夜行性の動物しか展示していないからだ。


「おバカ」

 美里の冷たい一言が、僕の耳に突き刺さった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る