メガネをかけたら

 高校1年生にして、メガネデビューした。

 おかげで黒板に書いてある文字が、4Kかと思うくらいはっきり見えるようになった。


 メガネデビュー当日の放課後。

 僕は人気のない廊下で、彼女の芽衣が遠くで窓を眺めているのが見えた。


 メガネをかけていなかったら、その姿が芽衣とはわからなかっただろう。

 僕はちょっとうれしくなって、彼女のもとに駆け寄った。


「芽衣ちゃん」

「もう別れよう」

 顔だけ振り向いた芽衣にそう切り出され、僕は耳を疑った。


 彼女は体も僕の方に向けると、はっきりとこう言ったのである。

「アンタ、女心が全然見えてないんだもん」

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