第49話 調合と、融合?ゲームだって、同じようなものだったんじゃないだろうか?

 かわいそうになってしまうくらいのポコポコヒットの攻撃を、目指していた。

 もう、少し…。

 「ふん…。そうやって、このおばあちゃんを言いくるめようとしていたんじゃないのかね?甘いね。おばあちゃんは、あんたのような小学生には、負けないんだからね」

 神は、しぶとかったのだ。

 諦めたくは、なかった。

 「諦めたら、そこで、試合終了だぜ?」

 あの子が、言ってきたような気がした。

 新たな話題につなげて言いくるめてやるしか、なくなった。

 「まったく…、最近のガキは…」

 ヒビキは、その言葉を聞き逃さなかった。神の嘆きを利用しない手は、なかった。

 「最近のガキは、何だっていうの?」

 この、鎌をかけるような神の誘導が、逆襲の決め手だった。

 「あんたも、しつこい子だねえ。…わかったよ。教えてやるよ」

 裏ソサエティの神は、就職活動中という、新卒の肩書きをもった孫の1人について、語ってきた。

 際どい会話に、稲妻が下りるようだった。

 「良いかい?聞きな。おばあちゃんの孫はねえ、ゆるゆるとした教育を打ち切られてから、努力をする生活を強いられるようになってしまったんじゃよ。かわいそうに」

 「ふーん…」

 内心、こう思ったものの、口には出さなかった。

 「…何、言ってんだよ。この、ばばあ。努力するのなんて、当たり前じゃないか。俺の母さんだって、努力してきたんだぞ」

 言えるわけが、なかった。

 神の機嫌を損ねてしまっても、試合終了になっただろうからだ。

 神の孫は、キラキラ輝く、新卒世代。両親に、愛を目一杯受けて育てられ、満足のいく教育環境で、不自由ない生活を送ってきたのだという。

 その子は、自信をもって、就活をがんばっていたそうだ。

 今までの人生で、その子は、がんばれば道は開かれるという感覚を感じて生きてこられたそうだ。だから、就活だって、がんばればがんばっただけ、満足いく会社に入れるものだと信じていたわけだ。

 が、その子は、悩みの中だったという。

 がんばればがんばっただけ道が開かれた生き方には、尊さがあった。けれども、その感覚は、長続きするのか?私は、移りゆく社会に適応できるのか?

 …そう、悩みの中だったということだ。

 その子は、日々、何とも捉えようのないつらさに包まれていたのだという。

 「…ふうん。それはそれは、大変なことだね。それが、おばあちゃんの孫なんだね?僕のお母さんも、そんな感じで悩んでいたんだよね」

 ついつい、感情的になりそうだった。が、神は、怒りなどしなかった。

 「ほう。あんたのお母さんも、同じようなものだったとはね」

 むしろ、あざ笑ってきただけだった。

 「…今どき世代の人って、かわいそうだよね」

 先制攻撃を、仕掛けてみた。

 「生意気なんだよ!ガキが!」

 神は、見事に、乗ってきた。

 「あんたも、浅はかだねえ。何が、かわいそうなもんかい?おばあちゃんは、あんたのようには、思わないね。この、小学生めが!どうして今どき世代の子が、かわいそうになるんだい。努力ができる環境で、生きられたんじゃないか。素敵な話じゃあ、ないかね。その子が、かわいそうなもんかい。そんなのは、過保護じゃよ。わがままじゃ」

 どこかで聞いたような返答を、してきた。

 「ふうん。どうして、過保護でわがままなだけだと思うの?」

 畳みかけた。

 そこで神は、口を大きく滑らせた。

 「その孫はなあ、就活という今の時期になって、タイミングに混乱しはじめたそうなんじゃな。がんばらなければならない就活を体験させられて、あることを悟った」

 「何を?」

 「結局は、薬局。結局は、社会に出てもがんばって生きていかなければならないんだろうなあと気付いたんじゃな。死に至る病。つまりは、絶望を感じたわけじゃな」

「おばあちゃんの孫は、かわいそうだね」「だから、違うわい!今どき世代の子が、

かわいそうなもんか。社会人っていうのは、そういうもんじゃろう?私は生きにくいよ、じゃと?就職氷河期世代の子たちに、失礼じゃろうが。まったく…、私っていつまでがんばれば、生きやすくなるの、じゃと?何を、言っておったんじゃ!あれが、私の孫かい。ポンコツよのう…」  

 「…それで、お孫さんには、何て言ってあげたの?」

 「お前は、かわいそうではないが、かわいそうになるくらいの考え方をする子じゃのうって、言ってあげたわい」

 「へえ…」

 「孫には、困ったもんじゃよ。オンリーワンっていう教育が終わってホッとできたと思えば、あのざまなんじゃからな」

 格好の論争に、なっていた。

 「大変なんだねえ。おばあちゃんのお孫さんは、かわいそうだねえ」

 「だから、かわいそうじゃないと言ったろうが!この、小学生めが!」

 「そうだったね、ごめんね」

 「まったく…これだから、今どきの小学生は…」

 神の孫の悩みからわかってきたように、なるほど、わがままさがあったんじゃないのかと、感じられた。

 孫の悩みには、アンビバレントな背反要素が、巣食っていたようだ。

 不自由でない生活を送ってこられたのにも関わらず、生きやすくないのだという。

 自分自身では成果が出せても、誰かに、良いねと言ってもらえないことで、自己が満たされないということだ。

 「その孫は、どうして、そんなあやふやな状態になってしまったんだろう?」

 神を目の前に、考えてみた。

 ヒビキや母親たちの世代は、努力をし、がんばってきても泣かされちゃった世代だ。今の話に出てきた孫も、努力をしてきた世代だったろう。その生活に、何かの秘密があったような気がしていた。

 努力をキーワードにすると、就活以外に、受験などの競争場面についての考えが浮かんできた。そこでここは、受験について考えてみるとととした。

 受験などは、満足、結果、生きやすさの説明には、うってつけの言葉になっていたのではないだろうか?

 受験といったものには、目標値が設定されていた。

 「なぜ、目標値が必要だったのか?」

 そう考えたことは、なかっただろうか?

 「なぜ、ハードルが設定されたのか?」

 ゲームでも、同じだ。モチベーションを作るということの、重要性…。

 目標値をクリアするため、また、はつらつ便りを取りにいくために必要となったのは、何か?

 エウレカへの、地図か?

 納得のできる、努力か?

 今どき風にいえば、効率の良い努力だ!






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