第48話 駄菓子屋の神を、言いくるめてみよう!小学生×駄菓子屋ばばあの面倒な戦いは、続くのだった!

  社会はうそばかりじゃないのかと思いながらも、どこかでは、神を信じていた。

 「ねえ、本当だよね?約束だよ?」

 「ああ。かわいい小学生に、手を上げたりなんかしないよ」

 …?

 小学生?

 そのときになって、ようやくヒビキは、自身の姿の変化が解けていなかったことに気付けた。

 「そうか。ずっと、身体が、軽いままだったもんな。今さらになって言うのもおかしいが、背も、縮んでいたよな。俺の目線は、確実に、低くなっていた。忘れていたよな。俺は、駄菓子屋通いをしていた頃の子どものころに、戻っていたんじゃないか。この事実、まじかよ…」

 おばあちゃんは、さらに、攻撃を加えてきた。

 「あんた、どうしちゃったんだい?一体何に、驚いているんだい?ほら、叱ったりなんかしないから、あたしに、面白いことでも聞かせてくれないかね?」

 神を前にして、たくさんの観念を強いられていた。

 その状況では、駄菓子屋神であったおばあちゃんに逆らえないであろうことは、誰の目にも、明らかだった。

 「…」

 神が、何も言えなくなった小学生を、攻め続けてきた。

 「あんたさあ…。小学校で、面白いことでも、なかったかい?最近の小学校とはどういうものなのか、おばあちゃんにも、気になるんだよう。おばあちゃんにも、孫がいるしねえ。あんたと同じくらいの、年齢だ。素晴らしい小学生、さ。ひゃははははは」

 神に挑発された小学生の心は、ゆらいだ。

 「耐えろ、俺」

 こぶしを、握りしめた。

 「耐えるんだ、俺」

 呼吸を、整えた。

 「じゃあ、教えてあげるよ。おばあちゃんに、小学校の先生の面白いところを、教えてあげるよ」

 「そうかい、そうかい」

 「わかったよ。おばあちゃん。小学校での面白いことを、話すよ」

 おばあちゃんの目が、夜道のネコのように変わった。

 「良い子じゃないか」

 自信をもって、こう付け加えてみた。

 「もし、僕の話に真実が見つからなかったら、僕の負け。僕の駄菓子愛をあげるよ。けれど、真実が見つかりそうだったら、そっちの駄菓子屋を見せて欲しい。約束だよ?」

 おばあちゃんの目が、急激に速度を上げて光り出した。

 「おばあちゃんたちの駄菓子屋を、見たいのかい。もう、あんなところには、いきたくなくなったんだがねえ…。まあ、良い。じゃあ、あたしを、言いくるめてみな!それができたなら、お前の望みを叶えてやっても良いよ」

 「約束だよ?」

 「良いだろう。取引だ」

 小学生ヒビキは、心を固めていた。

 「おばあちゃん?あのね?」

 「なんだい?」

 「小学校の先生ってさ、面白いんだよ?」

 「そうかい、そうかい。何が、あったんだい?」

 「あのね?」

 「ああ」

 「聞いてよ?」

 「聞くさ」

 「僕は、おばあちゃんを、ぎゃふんと、言わせてあげるからね?」

 「何だい、そりゃ?」

 「ふふふ」

 「まあ、良いか。小学校の先生の話、だったね?」

 「うん」

 「小学校の先生は、素晴らしい大人じゃわい。激務だっていうのに、負けない。あんなに忙しくても、がんばっている。立派な大人じゃ、ないかね」

 「うん」

 「おばあちゃんも、立派だけれどね。ひひひ。立派じゃなければ、やっていられない」

 それを聞いて、ヒビキの口元がゆるんだ。

 「じゃあ、おばあちゃん?」

 「何だい?」

 「先生が立派じゃなかったとしたら、どうするの?」

 「何だって?」

 今度は、おばあちゃんの口元がゆるんだ。それを、見逃さなかった。

 「良いかい?がきんちょ。先生が立派じゃなかったら、おばあちゃんの負けだ。おばあちゃん、あんたに、謝るよ。この闇の駄菓子屋は、閉店だ。店を、たたもう。そうしてあんたを、おばあちゃんたちのソサエティまで連れていってあげよう」

 「本当?」

 「ああ、本当さ」

 それを聞けたヒビキは安心しながら、おばあちゃんに向けて、開いたスマホを差し出していた。

 「おばあちゃん?これを、見て?」

 おばあちゃんに、ある動画を見せた。

 「さあ、取引だ!」

 今度は、ヒビキの目が、輝いていた。

 おばあちゃんに見せたのは、TVのワイドショー番組の、あるコーナー、あるシーンだった。

 「先生が、同僚の先生に、嫌がらせで、駄菓子の酢昆布を大量に食わせていた映像」

 「先生が、万引きをしていた映像」

 「先生が、駅で歩く女子高生にわいせつな行為をしていた映像」

 そんな実態が、映されていた。

 「な、何だい?これは…」

 「僕は、ようやくこの事実に、気付けた。今の教育者の中には、こういう人も、いたってわけさ。真面目な先生が、気の毒でならないよ。さあ、どうだい!学校の先生が、忙しくて忙しくて、混乱していたのはわかるよ。けれど、その忙しさからくるストレス解消のやり方が、こうなってしまうこともあったわけだ。駄菓子屋にいくことで心を落ち着かせられた子どもとは、違うだろう?こうさせないためにも、大人でも、気楽に駄菓子屋にいけるようにするおまけは、有効じゃないのかな?」

 「この、ガキめが…」

 「これが、一部の先生の、現実だ。これを見ても、学校の先生が立派だって、言えるのか?もしも、言えたというのなら、その人はすでに、まともな社会人とは思えないね!」

 言い逃れようのない事実を突き付けられ、おばあちゃんは、がっくりときていた。

 「あんたって子は…」

 「ほら!おばあちゃんも、見たでしょう?これでもおばあちゃんは、小学校の先生を、立派な大人だって、言えるの?」

 「言ったね?」

 「ああ」

 「この、ガキめ!…言ったね?うちの子にも、言われたことがないのに!」

 「どう?」

 神を、追い詰めていった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る