第43話 病的な新卒社会に裏切られてパニックは、駄菓子屋も、同じかな?
明らかに、笑い声だった。
「どこかにエスカレーターがあると思ったら、大間違いだ」
何かを見抜かれていたように、歯がゆかった。
「社会は、ねえ。定年退職世代のおじさん思考のように、甘いものじゃあ、なかったんだよ」
「…」
「おい、小学生!社会は、甘いチョコレートのように甘いものじゃあ、ないんじゃ!甘くないチョコレートにハチミツをかけても、表面は甘いが、本質は甘くならないじゃろ?それと同じようなものなんじゃ、なかったのかい?」
「何、言ってんだ?お前は」
背筋が、寒くて、仕方がなかった。
「…ヒビキ君、失礼をしたね?甘いということの、駄菓子屋的な例えだよ」
「何をいうかと、思えば…」
「甘い吐息で、かわいそうだねと哀れんでもらえる生き方は、苦しい。神との駄菓子屋論争のように、苦しいだろう?」
「…」
「かわいそう、かわいそう。君だって、知っていただろう?今どき世代の子たちは、かわいそうなんだそうだ。今どき世代の子は、新型ウイルス社会ということもあって、学校にいけない状態が続いたよね?それが、かわいそうだっていうんだよ。本当に、そうなのかねえ?そんなにも、勉強がしたいのか?実は、単純明快に、友達に会いにいきたいだけなんじゃ、なかったのか?生きる言い訳にしたいんじゃ、ないのかねえ?何が、かわいそうなものか!怒られなくても、叩かれなくても、挫折しなくても社会に出られる身分を、何だと思っているんだよ!就職氷河期世代の人は、その何百倍も努力して、泣かされたんだぞ?今どき世代の子は、かわいそう?そんな捉え方は、傲慢の極みだ!」
ヒビキには、ほんの少し、エスカレーターが、憎くなってきた。
が、どこかでは、どうしても、うらやましくなってしまうのだった。
かわいそうと思える心とうらやましいと思える心とが絡まり合いすぎて、まだ、悶え続けていた。
「…ヒビキ君?そりゃあ、エスカレーターの生活ができなかった君たちがエスカレーターに憧れるのも、無理はないさ。でも、さ。そんなエスカレーター、本当は存在しなかったとしたら、どうかな?」
「何だと?」
「あれは、幻に過ぎなかったのさ。君たちは、もう、それに気付かなくちゃならない段階にきていたんじゃないのか?」
「…」
「それに気付かないふりをして、既得権という身分を自慢しながら退職していく人たちと、本質的には、変わらないね」
「…本質、か」
「ヒビキ君は、楽なエスカレーターが見えなくなっちゃって、怖くなっちゃったんだろう?病的な新卒社会に裏切られて、パニックになっちゃうよね?駄菓子屋も、同じかな?」
「く…」
「エスカレーターが消えちゃうと、何もできなくなっちゃう人がいる。あはは。君は、そういう人になっちゃあ、いけないよ?君たちの仲間を、思え。就職氷河期世代の子は、いわゆるオンリーワンとは、違う。泣いちゃった他人の気持ちを理解してあげられるのが強みなんじゃあ、なかったのか?この駄菓子屋教室でも、その重要性を、教えていたはずなんだがね」
「…」
「さあ、ヒビキ君?」
「何だ?」
「大いなるステージへ、ようこそ!」
「何だと?」
「見たまえ、ヒビキ君!」
地下フロアを、さらに良く目をこらして見てみた。
ヒビキと同じくらいの年齢の人たちが、何人も倒れて、折り重なっていた。
「この人たちの群れは、何なんだ?…な、何だ?」
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