第38話 暗闇の雲についての話、再び。パーティアタックを繰り返して強くなったのに、泣かされた

 恐ろしきはまた、この論争だ。

 「迷いの中、だよな。暗闇の雲は、いつになったら、晴れるっていうんだろうな?あのおじさんたちが、暗闇の雲の本体、いや、暗闇の雲の製造者だったんじゃないのか?」

 「言うねえ。ヒビキ君は…」

 「かわいそうを超越して、みじめだ」

 「…ふふふ。そんなおじさんたちも、かわいそうだねと言ってもらえる子たちの、大先輩。新卒一括採用の、マニュアル世代同士としては、良い勝負なのかな」

 「何度考えても、かわいそうの意味が、わからない」

 「それなら、もう、比較論で考えるのは、やめにしたらどうかな?」

 「…わかったよ」

 「いつまででも、はずれの駄菓子思考でいくと、つらいからね。まあ、君の気持ちも、わかるけれどね」

 「…」

 「ヒビキ君たちは、何度も言って悪いけれども、運がなかったよね」

 「…」

 「柔らかなジョブのヒヨコちゃんと、フンワカおじさんたちに挟まれて、そりゃもう、疲れるだろうね。そしてついに、闇のクリスタルが、輝いた。苦労して、希望を目指して、パーティアタックを繰り返して強くなったのに泣かされた人。すなわち、氷河期アタックチームの誕生、っていうところじゃないのかな?」

 「…こら、こら。その言い方は、まずいだろうよ」

 「なぜだい、ヒビキ君?本当のことじゃ、ないか」

 「…言い返せない。言い返せるだけの、根拠がない」

 「ヒビキ君、がんばれ!」

 「…なあ?なぜなんだよ?」

 「まだ、そんなことをいうのかい?」

 「正解を、教えてくれよ」

 男の子は、がっくりきていた。

 「答えは、教えないよ。それをしちゃったら、正しい教室には、たどり着けなくなっちゃうからね。教育っていうのも、そういうものだろう?悪いクセが、うつっちゃったんじゃないのか?」

 「今度は、教育話かよ…」

 2人の歩みのスピードが、落ちた。

 「ヒビキ君?ゆっくり、いこうよ。教育について、もう少し、話してみたいんだからさ」

 「嫌な、教室だな…」

 2人の歩みのスピードは、何かを恐れ、落ちていた。

 「ヒビキ君?本当の教育って、何かな?」

 「それが、駄菓子に関係あるのか?」

 「大ありさ」

 「…」

 男の子は、駄菓子屋教室の教育について、ヒビキに考えさせようとしていた。

 「ヒビキ君?本当の駄菓子教育っていうのは、何だろうねえ?」

 「さあな」

 「僕はね?本当の教育って、その人に答えを与えて注意することなんかじゃないと、思っている。駄菓子屋教室だって、その意志なのさ」

 「そのやり方は、ほとんどの学校でやっていたことじゃなかったのか?」

 「そうでもないさ」

 「皆で覚えられなかったら、誰かが、注意していただろう?」

 「それじゃあ、マニュアル教育だ。もしくは、皆と同じであってほしいの教育」

 「はあ…?」

 「君は、いつもながら、変な言葉を使ってくるんだな。皆と同じで、良いじゃないか。特に、小学校なんかは、右にならえの教育が普通じゃないか。皆が、そうして教えていたじゃないか?先生たちは、平等精神で張り切った。子どもたちは、それに、従った」

 「そうだね。それは、否定できないよ」

 さみしそうに、なってきた。

 「ほら…」

 「ある意味では、ヒビキ君の、言う通りだろう。皆と同じだと、安心するもんだ。全員が竜騎士にならなければ、ジャンプして困難に立ち向かえないことも、あるんだからね。まわりと同じで、手をつないで、ゴールインだ!安心する、だろうねえ」

 「…」

 「しかしねえ、ヒビキ君?そんなの、横並び理論だよね?」

 「…」

 「特にゆるゆるの教育では、ひどかったよね。全社会的に、気の毒さ」

 「…」

 「ヒビキ君も、同じだったね。君は僕に、正解を教えてくれよと、言ってきた。すぐに答えを求める。それじゃあ、ヒヨコちゃんたちのレベルとは、本質的に変わらない気がする。失敗教育の典型的やり方じゃ、ないのかな?」

 「…」

 「良いかい、ヒビキ君?僕たちのソサエティでは、そんな教育、愚の骨頂。答えは、教えないよ。駄菓子屋のおばあちゃんじゃないけれど、人気のある駄菓子だけを率先して売ってあげようなんてことは、したくないね。教育だよ、教育。答えにたどり着けそうな道を、用意してあげる。それで、良いじゃないか。失敗したって、良いじゃないか。歩かせてあげれば、良いんだ」

 男の子の教育話が、まことしやかに、進んでいった。

 「ヒビキ君?先生とは、何のための存在なんだろうね?」

 本当の先生とは、人がつまずかないようにして、あげる人のことか?

 ヒビキは、そう思っていた。

 それに反して、男の子は、毅然と言い張った。

 「つまずかないようにしてあげる、かあ。それも、良いかもしれないね。それでも僕たちには、裏技系にすぎないよ。本当の先生っていうのは、懸命にがんばった子が転んじゃっても、そこからはい上がれるような知恵や道を与えてあげられる人なんだよね。人がつまずかないようにしてあげるのは、良いことだ。でも、そればかりだと、マニュアル人間を作るだけだ。新卒一括採用のコースからはみ出ないよう過保護に温められたヒヨコちゃん世代は、駄菓子に勝る価値を生み出す努力ができるのかねえ?ただ単に、正解を教えてくれっていうのは、教育のあるべき形なんだろうかねえ?駄菓子屋のおばあちゃんに、こっぴどく、叱られちゃうぜ?怖い、怖い。あのおばあちゃんは、…神、なんだからね」

 「…降参だよう。わかったよ。もう、いじめないでくれよう」






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