第36話 「ハイジャックという言い方は、ハイ(高い)+ジャック(強奪)の調合?」それって、大間違いだそうだ。

 夕方までの買い物で、治安も、良くなりそうだった。

 夕方までは、子どもたち中心の駄菓子屋。

夜間は、大人中心の駄菓子屋。

 「楽しいのは、日曜日だね。ただし、働かせ過ぎもいけないね。おばあちゃんを、3人ほど用意するかな?ふふ」

 「日曜日?」

 日曜日は、重要。その日は、子どもと大人の両方が出会いやすくなったからだ。

 「その日は、世代間交流も進むだろう。特別限定イベントが始まりそうだね」

 男の子が、胸を張っていた。

 「そういうことか…」

 納得できた気が、した。

 「話は戻されるが、何といっても、こんなことが、話題になっている」

 男の子が強調したのは、これだった。

 「食べられるのに廃棄されてしまう、食品ロス問題について」

 食品ロスの阻止も、全ソサエティの重大な使命だったようだ。

 たしかに、男の子が指摘したまでもなく、食品ロスは、重大な問題だった。

 「いつでも買える状況」

 それをコンビニが作って、皆に安心感を与えて店に足を運んでもらおうと工夫していた点は、悪くなかった。が、そのことで、駄菓子の購入意欲は落ちてしまうと言われた。

 「コンビニなら、いつでも買える。駄菓子屋なら、閉まっちゃうけれどね。だから今日も、コンビニで駄菓子を買おう。駄菓子屋までわざわざいく必要は、ないよね」

 その考えが続けば、ダメージが、大きく跳ね返ってきた。

 「ヒビキ君?パーティアタックだよ?」

 「ほう」

 限定提供にしておけば、もしもすべての商品が売り切れてしまった場合は、落胆も、一入だ。客は、がっくりもくるだろう。

 「けれどもそれも、想定内」

 「何だと?」

 調査上、買い逃した客のほとんどは、強い怒りを生まなかったのだという。

 「今日は、買えなかった!今度こそ、いこう、買おう!再挑戦だ!必ず、いこう。買いたい、買いたい!」

 怒りよりもむしろ、もっともっと欲しくなるのだそうだった。

 そんな人の心理を操るかのように、駄菓子屋の開店も、限定されようとしていたのだ。

駄菓子も駄菓子屋の価値も、さらにさらに、認められようとしていくのだった。

 社会は、厳しさを増していった。

 そんな低成長社会の中で、駄菓子屋は、ロスすべきもの、してはならないものを見極めようと、努力していたのだ。

 「そのときに、ソサエティの存在意義が出るんだよね」

 男の子が、神々しく見えていた。

 「やるじゃないか」

 「ああ。ヒビキ君も、駄菓子の心を、良い方向で盗んでみなよ。ふふ」

 男の子が、かわいらしく見えていた。

 「ほう。ハイジャックならぬ、電波ジャック、黒板ジャックならぬ、駄菓子屋ジャックだな」

 言った瞬間に、笑われた。

 「ふふ」

 「何が、おかしい?」

 「ヒビキ君は、面白いことを言うんだな」

 「何だと?」

 「電波ジャックなんて、間違い言葉」

 男の子の新授業が、続いた。

 「Ja ckは、気を付けたほうが良いかもな」

 新たな忠告を、してきた。

 「それって、間違った使い方だったか?」

 「ふふ。おの勘違いには、困りもの。アメリカはデトロイト郊外にある空港じゃ、危ない事件が起こるところだったんだぜ?」

 「何だよ、それ?」

 それは、こんな勘違い事件だった。デトロイト空港で、客によって何気なく言われたこの言葉が、発端となった。

 「Hi!Ja ck!」

 笑えない、実話だ。

 機内で客が言ったその言葉が、運悪く機内マイクに拾われてしまい、それを聞いて、管制官が、慌てた!

 すぐに、地元警察に連絡したのだ。

 しばらくして、真相がわかった。

 「客として搭乗したビジネスマンが、友人のJa ckが一緒の機内に乗っているのを見つけて、やあ!ジャックと挨拶しただけ」

 実話だ。

 機内のマイクは、たまたま、オン状態になっていた。直ちに、テロリスト対策の特別機動隊やFBI(連邦捜査局)がその空港に駆けつける騒ぎが起こってしまったらしかった。

 ちなみに、駆けつけた地元警察の幹部は、平然としていたという。

 「負傷者もいなかったわけだし、良い訓練になったよ。ノープロブレム」

おおらかに、危ない事件になったのだ。

 Ja ckは、一般的な男性名であったため、馴染みやすく用いられたという説もあったようだ。これを日本で言えば、こういったところだろうか。

 「やあ!さとうさん」

 Ja ckの使われた方には、やや、注意か。

 「飛行機なら、ハイジャック。それなら、船なら、シージャックって言うのか?」

 普通は、そう思われがちになるからだ。だがそれは、違うのだという。

 「正しくは、シージャックとは言わない」

 乗っ取る物や場所などには関係なく、すべて、こう言う。

 「ハイジャック」

 これは、勉強になった。

 バスを乗っ取った場合は、こう言う。

 「ハイジャックバス」

 それが、正しい言い方。

 「バスジャック」

 そのような言い方は、しないらしかった。

 「ヒビキ君?面白いだろう?駄菓子屋のように、疑問にも思うだろう?」

 男の子が、言ってきた気がした。

 その忠告に疑問をもつのは、こう勘違いをされている証拠なんだとか。

 「ハイ(高い)+ジャック(強奪)」

 それって、大間違いだそうだ。

 「ジャックは、強奪するという意味では、なかったのだ。Ja ckさんという、人の名前」

 社会は、難しかった。

 ハイの部分だけを、強奪される物や場所に合わせて変えているだけでは、正しい言い方にはならないとのこと、だった。

 「ヒビキ君?注意しようよ」

 「…わかったよ」






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