第34話 やっぱり、今どき世代が、デスクの電話に出られない理由。「駄菓子屋の経験、伝説の武器を目指すエウレカの感覚は、忘れちゃいけないんだ!」

 なかなかのアクティブバトル、だった。

 「まわりが、迷惑するんだぞ!君は、あの人たちから、相当の苦痛をもらっていたんじゃなかったのか?」

 「…おまけを考えるのは、難しいんだな」

 顔を、しかませた。

 「そうさ、難しいものだったのさ」

 「そうだ!」

 「今度は、何だい?」

「1日お邪魔券を発行するというのは、どうだ?」

 「お邪魔券だって?」

 「誰かの家に、1日だけ、人がきてくれるんだよ」

 「ホームヘルパーじゃあ、ないか」

 「掃除も洗濯も、します」

 「うーん」

 「高齢者の話し相手にも、なりますよ」

 「掃除なら、掃除ロボットで充分じゃないのかな、ヒビキ?」

 「それも、そうか」

 「それに、勝手に他人が家の中に入ってきちゃったら、大問題になっちゃうんじゃないのかい?」

 「たしかに、そうだなあ」

 「というよりも、今どき世代の子は、知らない人が家にくることが、想定できないらしい」

 「それ…聞いたことが、あるなあ」

 「近所の人とも、話ができないんだよ。オンリーワンの友達感覚で育っちゃった、弊害。そういうのが、会社に入ってみたらどうなるのか?固定電話に出られないようって、泣く。新しいハラスメントだよう!って、何、言っちゃってんの?たぶん知っているだろうけれど、新卒のヒヨコちゃんたちは、会社の電話には出られないよ。だって、会社にかかってくる電話の相手は、ほぼほぼ、あなたの知らない人なんだからね」

 「難しいなあ」

 「難しいだろう?」

 「これが、駄菓子屋通いで鍛えられた世代なら、希望はもてる。あの世代は、知らない人たちとの会話合戦が、当たり前だったんだし」

 「難しいなあ」

 「難しいよねえ。おまけで社会を変えていくってのはさ。つらいよね。でも、つらいけれど、こうして考えていくことによって、希望が生きる。そう、信じたいね」

 「…」

 「つらいよねえ、この仕事も。この社会全体も。でも、皆が、つらいんだ」

 「…」

 「つらいよね?」

 「…」

 「嫌な社会だもの、ね。でも、このままじゃあ、ダメだ。先を、考えていこうよ。他に君なら、どんなおまけを考えるんだい?」

 「そうだなあ」

 「言ってみてよ」

 「じゃあ、大きくなって社会人になってからも、恥ずかしくなく再び駄菓子屋にいって買い物ができる優待券を、発行してあげる」

 「ほう」

 「あのころ駄菓子屋にいけた思い出を、復活!ってね」

 「ふふふ」

 「大人になってから駄菓子屋にいって買い物をするのには、ちょっとだけ、勇気がいるからな。大人も気兼ねなく駄菓子屋を利用できるように、してあげようじゃないか」

 「ヒビキ君?大人になれば、駄菓子屋に入るのが、恥ずかしいのかい?」

 「まあね」

 「そっか」

 「ははは…」

 「そうかもな」

 「駄菓子屋、今も、いきたいのになあ」

「いけば、いいじゃないか」

 「大人になっちゃうと、難しいんだよ」

 「…」

 「だから、大人に、駄菓子屋入場券を発行してあげるんじゃないか」

「…」

 「大人になっても、気兼ねなく、駄菓子屋にいけるように。そして、もしも、そこで悲しんでいるような子どもでも見たら、話しかけて、一緒に、駄菓子を食べても良いようにしてあげるんだ。大人だって、駄菓子屋のものを買って食べても、良いんだ。これが、俺の考える、最高のおまけだ!ただし、大人買いは、禁止。大人のお金なら、駄菓子屋店内すべてを、買い占めかねない。それだけは、禁止しなくちゃな」

 「それで?」

 「それで、新・駄菓子屋ソサエティのような団体を、発足させよう。その団体の最高責任者は、駄菓子屋のおばあちゃんだ」

 「ふふふ」

 「じゃあ僕が、そのソサエティで話し合われたことを、国連で発議できるようにしてあげよう!」

 「国連かよ…。何で、国連なんだよ?じゃあ俺は、国会だ」

 「良いね、良いね。ノッてきたね」

 「人は、駄菓子屋にはじまって、駄菓子屋に終わるのかもしれないな」

 「うん。良いよ。わかった。今の君のアイデアは、僕が責任をもって、大切な議案として提出しておくよ」

 「何?議案、だって?」

 「そうさ。議案さ。年に2回程度なんだけれど、いろいろな支部の人が集まって、大会議が開かれるんだよ。その会議で、そのアイデアを、議案として提出しようと思う」

 「それはどうも、ありがとう」

 「礼には、及ばないさ」

 「そうかい?でも、感謝するよ」

「委員長を務めているタカチホさんに、必ず、伝えておくよ」

 「ありがとう。あ、でも…」

「何?」

 「でも、よく考えたら、駄菓子屋にいって良い券なんて、作る意味があったのか?駄菓子屋にいきたいのはわからんでもないが、大人になればいろいろと忙しくて、いく時間なんて作れないかもな。大人になれば、子どもの頃の、駄菓子屋に走っていったあのわくわく感が、出なくなっちゃうよなあ?」

 「平気さ。良いおまけ案じゃ、ないか」

 「そうかな」

 「大人になっても、皆、心の中では、あそこにいってみたいものなのさ」

 「もう過去には戻れない、って言った人もいたけれど…。そんなことは、ないんだな」

「そういうことだ、ヒビキ君」

 「だよな」

 「人は、大きくなれば、過去のことを忘れてしまうもの。でも、それじゃあ、ダメなんだよね。特に大人は、あのころの感動を、思い出さなくっちゃいけない」

 「あのころの、感動…」

 「子どもの頃、小銭を握りしめて駄菓子屋に走ったときの心からの鼓動や、駄菓子屋に着いたときのあの感動なんかは、忘れていいとは思えない」

 「…」

 「その忘却は、人間性の、危機だよ」

 「駄菓子屋の思い出は、忘れちゃダメだ。ダメなんだよ!」

 男の子は、何かこみ上げるかのような気持ちで、言っていたものだった。

 「ヒビキ君、どうだった?」

 「…」

 結局は、黙ってしまうのだった。

 が、男の子のほうはといえば、違った。むしろ、使命感を加速させ、話してきたのだ。

 「ヒビキ君?もっともっと、駄菓子屋の思いを、理解してもらいたい。駄菓子屋の感動から生まれてくる何かが、きっと、あると思うんだ。きっと…いや、絶対にあるんだ。駄菓子屋の思い出があればこその思いや、その積み重ねによる人生が、あるはずなんだ」

 男の子に、力説されてしまうのだった。

 「…」

 また、黙ってしまっていた。

 男の子は、続けた。

 「ちっぽけな金を手にして、わくわくしながらいった駄菓子屋の思い出と、伝説の武器を目指すエウレカの感覚は、忘れちゃいけないんだ!」

 ヒビキは、きっかけをつかめたような感慨を確認して、目を閉じた。






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