第30話 ラーニングしたアビリティは、絶望を知るということ!

 駄菓子屋教室の教えは、予言も残したことになる。

 将来、駄菓子ポストのイス取りゲームがおこなわれるであろうと、警告が発せられていたのか?

 「ようし!俺に、もっともっと、駄菓子屋教室の教えを、与えてくれ!」

 「望むところ、だよ!ヒビキ君!」

 「俺は、負けないぜ!」

 「さあ。次にいこう。今のような駄菓子の価値分配論も踏まながら、新しいおまけの開発案に、戻っちゃおうか」

「ああ」

 「駄菓子の新しいおまけについて、考えていこうじゃないか」

 「それなら…」

 「なんだい?どんどん、言ってきてほしいな」

 「価値あるおまけ、だったよな?」

 「うん」

 「そういうことなら…」

 「何だい?」

 「高額商品をおまけにするというのは、どうだ?良い、おまけじゃないか?たとえば、高級車とかさ」

 「ふうん。駄菓子のおまけ論の気持ちを、踏まえられていないなあ」

 「落第かよ」

 「ヒビキ君は、甘すぎる」

 「…」

 「小学生が高級車をもらって、うれしいと思う?」

 ヒビキの案は、瞬殺された。

 「別のアイデアは、ないの?」

 注意された気分、だった。

 「じゃあ、高額賞金にしようか」

 「ダメだね」

 再び、瞬殺された。

 「小学生なんかが大金をもらって、幸せになれると、思ったのかい?」

 「良いじゃないか。問題ないさ。金なら、親に渡せば、大丈夫だろう」

 「ダメだって」

 「なぜだ?」

 「ダメだろう、金を渡しちゃうなんて。結局は、家や車のローン、食費なんかに、使われちゃうかも知れないんだぞ?」

 「それなら、金は、もっと上の方に渡せば良いんじゃないのか?」

 「上の人?」

 「高齢者とか、さ」

 「…」

 「孫に何か言われれば、高齢者なら、喜んで応じてくれるだろう。有意義に、使ってくれるんじゃないのか?」

 「それも、ダメだよ。あの方々が、簡単に金を使ってくれわけ、ないじゃないか。タンスに預けられて、使われずに貯めこまれるだけなんじゃないのかなあ?」

 「そうか…?」

 「そうなったら、流れるものが、流れなくなっちゃう。流通してこその、金なのにさあ」

 「…」

 「それって、人間の身体で例えればさ、大変なことなんだよ?」

 真剣な顔を、された。

 「そう?」

 「そうさ。だって、身体に、血液がまわらなくなっちゃうってことなんだから」

 「そうか。金も、難しいんだな」

 真剣に、考えさせられていた。

 「金も、難しい。おまけを考えるは、もっと、難しい。そうだろう、ヒビキ君?」

 「…まったくだ」

 「他には、どう?」

 「そうだ」

 「何?」

 「おまけとして、肩たたき券を発行してあげるっていうのは、どうだ?そうすれば、子どもも親も、皆が喜ぶんじゃないのか?」

 「残念だけれど…それも、ダメだね」

 「どうしてだ」

 「駄菓子屋肩たたき券を出す案は、すでにあった。どこの、支部だったかな。でもね。会社員の人たちから、大クレームがあったんだよ。結局そのおまけ案は、廃棄廃案に追い込まれたんだ」

 「なぜだ?」

 「サラリーマンの人に対して肩を叩いちゃうと、まずいからだ」

 「ああ。なるほど」

 「そういうこと」

 「それは、まずいな」

 「だいたい、肩たたき券を手にした子どもが、大きくなって、20年、30年後あたりに、その券を使うとするだろう?」

 「…」

 「それはそれで、大クレームの元だよ。成長した社会人が、80歳くらいになった親の肩を、元気よく叩いてごらんよ。どういうことになるのかくらい、わかるだろう?」

 「…」

 「大変なことだよ。虐待に、なっちゃう」

 男の子は、肩を落とした。

 「まあ、わかるよ。なるほど、それは、虐待だよな。希望のないおまけ、かもな」

 「希望、か…」

 「そうだ。俺は今、おかしなことを言ったか?」

 「いいや」

 「じゃあ、良いじゃないか」

 「希望、か…」

 男の子は、手を広げた。

 それはまるで、暗闇の中で、駄菓子のゼリーをグニュッと踏みつけたような、際どい感触に見えていた。

 「…なあ、ヒビキ君?」

 「何だ?」

 「今の社会は、希望をもてといわれても、簡単にもてるようじゃあ、なくなってきたよね?」

 「まあ、な…」

 「神も、そう言うだろうね」

 「…」

 「希望、だよ…。ヒビキ君たちのもつべき希望は、絶望の背反にあるんじゃなくって、実は、絶望の延長上にあった。そうは、思ったりしたことはないかい?」

 「さあ、な…」

 「希望の正体なんて、かわいそうになっちゃうくらいに、良くわからないもんだよね」

 「…」

 「ヒビキ君?もしも、希望は絶望のおまけにすぎなかったなんて言われちゃったら、どう?」

 「…」

 「生きていくのが、つらくなっちゃうんじゃないのかなあ?はつらつとした希望の便りなんて、待っていてもこないこの社会なら、当然だよね?」

 「…」

 「済まない。ひどいことを、言っちゃったよね?あのソサエティの考えたおまけに、絶望を知るというアビリティがあったことを知って、僕らのソサエティ全体が、ラーニングしちゃっていたんだからね」

 「ラーニング?」

 「ああ。僕らのソサエティでは、駄菓子に関する他人の能力を学習することを、ラーニングという言葉で表現しているんだよ」

 「ほう」

 「何事も、学習さ。あのソサエティには、絶対に、負けたくないよね」

 「あの…ソサエティ、だと?」

 「そうさ」






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