第60話

 短めです。

 ごめんなさい。


 ~~~~~~


 パンドゥラは選んだ相手に満足していた。

 礎は4人。選択肢は多いほうかもしれないが、選考には細心の注意が必要だ。

 なぜなら、自分は聖女王から姿を見せるなと強く言われている。


 特に反発するつもりはない。

 理由は至って簡単だ。

 パンドゥラの存在を公表するには不都合があるからだ。


 ただ、自分だけがいるのならいい。

 後継となるレインニールがいる。同じ宿命を背負わせられるか、聖女王には判断がつかないのだろう。


 聖女王も礎もその命が尽きる前に次代へ交代する。

 しかし、パンドゥラの命はすでに尽きているに等しい。

 肉体はすでにこの世界に溶けてしまっているのだ。

 残っているのは役目をただ忠実に務める精神体のみ。


 それもレインニールが力を分け与えてしまったため、少々歪んでしまったようだ。

 一人、パンドゥラは薄暗い書庫の中で自嘲する。


 聖域の中でも古い建物になる。

 書庫の奥にはパンドゥラにとって懐かしい香りがする、過去の礎たちの私物が保管されていた。

 自分の役目を知らされたとき、周りの他の礎たちの顔はどうだったか、名前は何だったか記憶があいまいだ。


 忘れてなるものか、と憎しみにも似た感情があったはずなのに、世界を駆けまわるうちにすっかり抜け落ちていた。

 彼らの苦悩を垣間見てしまったせいもある。


 バカね。


 書棚を眺めて言葉を落とす。

 サシャが絵を見つけた場所だ。

 あの後、彼はもともとあった所に丁寧におさめた。


 当時、自分の事を書いて残すことは禁じられた。

 パンドゥラはこの世界で唯一の役目を負っている。後継もない。そう言われた。

 いや、後継は作らないと決めたのだ。

 自分で最後。こんな辛い役目を他の誰に継がせるのかと聖女王に食って掛かった。


 己を満たす力のお陰か、いろいろなことが思い出されるようになった。

 同じ場所、聖域にいるせいもあるだろう。記憶を刺激するものに溢れている。


 楽しいものもあり、辛いものもある。

 あの虹の絵は禁忌すれすれのものだ。


 バカね。


 もう一度、呟く。

 泣きそうになる気持ちに蓋をする。

 お前の事は思い出さない。


 だけど、お前が愛した世界は私のもの。

 聖女王も礎も役目を終えて聖域を去る。

 私は永遠に役目を務めて世界を守る。


 そうだったわ。

 最後の時、そう告げて去ったのだった。


 追いかけてこなかったのは、お前。

 振り返らなかったのは、私。

 私は選んだのだ。


 だから、、、

 遠くから声が聞こえる。

 レインニールが悲しみを抱いている。


 私は世界を守る。だから、レインニールも守るわ。

 ふわり、パンドゥラはその身を翻す。

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