第48話 ポレットの聖女日記・24
エメリーヌが部屋に入るとポレットはベッドに座っていた。
手には例の虹の絵を持っており、近づくと顔を上げる。
顔色を確認して、ほっと息を吐く。
「良かった。大丈夫そうね」
一時はどうなるかと思った。
エメリーヌは聖女王候補の力が暴走するという事件を目の当たりにしたため動揺した。自分自身にも同じ力があると分かり、聖女王の力というものに恐れが生まれた。
「心配をかけてごめんなさい。もう大丈夫よ」
「レインニール様とお話、出来たの?」
ポレットは静かに瞳を閉じて頷く。
何処かすっきりとした表情にエメリーヌも自然と笑みがこぼれる。
「良かったわ。レインニール様と二人きりだったからちょっと気になったの。何か言われたりしてないかなって」
「フロラン様のことを聞くことが出来たわ。それにレインニール様自身のことも」
「レインニール様自身のこと?」
エメリーヌは驚き、身を乗り出す。
「どうやって聞き出せたの?レインニール様、フロラン様のことをなんて?」
次から次へと質問を浴びせるエメリーヌにポレットは苦笑する。
先ほどの会話をかいつまんで話すとエメリーヌは長居を決めたのか傍の椅子に座り込む。
「楔なんて言われたら、ちょっと太刀打ちできないわね」
ポレットの事を応援していたのでレインニールの告白は非常に重いものと感じた。
肘を付いて自分の唇を摘む。
どうにか入り込む隙間がないか思案するが、エメリーヌはフロランに抱えられたレインニールの姿を目撃している。
あの関係を壊すことは中々困難であった。
「ねぇ、エメリーヌ」
声をかけられ、視線を戻すとポレットは手元の絵をじっと眺めていた。
「どうして礎様は4人なのかしら?」
突然の問いに、エメリーヌは答えられない。
それはエメリーヌにとって何故、太陽は明るいのか?と言われているのと同じことだからだ。
「急にどうしたの?」
何より突然そんな質問を投げかけてくるポレットの心理状態が気になった。
「私、あの時、レインニール様と力が繋がったの。少し怖かった。ううん。畏れに近い感じ。深い海の底から何かが猛烈に湧き出る感じ?うまく言葉にできないのだけれど、やっぱりレインニール様は研究員だけじゃないお役目があると思うの」
手元にある言葉をポレットは呟く。
「レインニール様は番人がいるかもしれないって仰られたわ。創作だろうって。でも、もしかして、レインニール様が」
「まって」
エメリーヌは止めどなくポレットが話すのを一旦、切る。
「落ち着いて、ポレット。力が暴走した後だから、そんなに慌てては考えがまとまるものもまとまらないわ」
傍にある水差しから水を汲むとポレットに差し出す。
「どうしてそんなことを?」
「虹の絵を見て思ったの。虹って何色あるの?」
思考が飛びすぎてエメリーヌは目を回しそうになる。
「虹は光の屈折率で生じるし色の境目がくっきりあるわけじゃないわ。地方によって見え方が違うんですって。それはその土地の文化に影響されているらしいわ。でも、2本出るの」
どこか遠くを見つめるポレットを見てエメリーヌは息を吐いた。
「関係ないかもだけれど、私、幽霊に会ったわ」
ポレットは瞳を大きく開く。
「書庫でなく、中庭で。話もしたわ」
エメリーヌはゆっくりとその時の様子を語りだした。
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