第25話 ポレットの聖女日記・1

 息抜きです。

 よろしければお付き合いください。


 ~~~~~


 少し前までたくさんの仲間がいたのに。

 ポレットは辺りを見回してため息を隠した。


 迫りくるような大きな白い柱に鮮やかな装飾の壁、天井にさえその装飾が続いている。

 静かな廊下には神官たちが扉の前に控えていた。

 自分と、もう一人エメリーヌが背筋を伸ばして立っている。

 それを見て、自分もお腹に力を入れる。背を丸めていては聖女王候補として自信がないように見られると注意されたことを思い出した。


 最初は友人と何気なく参加した奉仕活動だった。

 実はそれが聖女王候補の試験だと知ったのは、だいぶ経ってからでそのころには参加している顔ぶれが変わっていた。友人とは疾うに離れていた。

 試験と言っても机について問題を解くというのはわずかで、病院や孤児院での補助や街頭の清掃から山登りやレクリエーションもあった。

 その中で何が選別内容になっているかは参加者たちも分からなかったが、集められるたびに組み合わせを変えられ、気が付くと人が減っていた。


 最後に呼ばれたのはポレットとエメリーヌだった。

 エメリーヌは聖女王を支える研究機関の学舎に所属しているという輝かしい経歴がある。

 グループ活動でも活発に意見を言い、周りを引っ張っていくリーダー格であった。


 それと比べればポレットはどこかぼんやりとして、人の後ろを付いていくことが多かった。

 だからこそ、今、最終試験にいることに疑問があった。


 大きな扉の向こうは儀式の行われる広間がある。

 中には聖女王をはじめ、各礎や研究機関や聖殿などの幹部たちが集まっている。

 直接、見えるわけではないが、扉からとてつもない圧迫を感じポレットは唇を噛みしめる。

 緊張から泣いてしまいそうになるのを必死に堪える。


 その時、ふわりと暖かい風が吹いたようだった。

 何かが頬を撫で肩に手を置かれた気がして横を向くと、同じようにエメリーヌがこちらを不思議そうに見ていた。

 二人の間に鱗粉のようなものが舞っている。


 目を瞬いていると、神官が咳払いをした。

 慌てて前を向く。

 今のはなに?

 ポレットとエメリーヌだけが気が付いたようだった。


「聖女王候補の入場です」

 楽器の音が鳴る。

 開かれる扉の向こうに多くの人の気配を感じて息をのむ。


 二人の間にあった鱗粉がふっと広間へ吸い込まれていく。

 それに誘われる様に足を踏み出したのだった。

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