第6話 神は数学者であり、高度な数学で宇宙を構成した1
翌日、数渡は「〇八一号室」で目を覚ました。起きた瞬間、数渡は反射的に学校に行かなければ、という衝動に駆られたが、自分が今どこにいるのかを思い出して、その必要がないことを思い知る。枕元に置いた腕時計を見ると、九時を回っている。学校があったら完全に遅刻していた、と数渡は安堵する。学校に行く必要がないと思うと、少しだけ高揚的な気分になった。
体を起こして伸びをしてから、窓に掛かったカーテンを開ける。カーテンを開けるだけで、随分と部屋は明るくなった。数渡は窓から外を眺めてみたが、外は白い靄のようなものがかかっていて、目につく範囲には何も捉えることができなかった。時計がなければ、今が朝なのか昼なのかさえ判断できないだろう。
数渡は身支度を済ませて部屋の外に出た。朝食は昨夜、明と訪れたレストランでとれるのだろうか。数渡は昨晩歩いた道順を思い出しながら大理石の廊下を歩いた。
案の定、レストランは解放されており、ブッフェ式になっていた。昨日はカーテンが掛けられていた窓が解放され、そこから光が入っている。それだけで店の雰囲気は昨日と大分違っていた。昨日明と飲んだバーはレストランのカウンター席として使われており、カウンターの隅に置かれた花瓶にはヒマワリの花が飾られている。数渡は彩りよく並べられた料理の中からフランスパン、ベーコンとスクランブルエッグ、サラダとシロップ漬けのパイナップル、飲み物にコーヒーを取りカウンター席について食べた。味はまあ普通だ。
一人淡々と食事を続けていると、コンコンという音を立てながら一人の男性が歩いているのが見えた。チノパンにチェック柄のシャツといういかにもどこにでも居そうな服装をした、盲目の男で片手に白杖、片手にコーヒーカップを持っている。確か名前は加納と言ったはずだ。数渡は席を立つと加納に声をかけた。
「加納さん、九田です。こちらの席空いてますよ。」
それから数渡は加納を驚かせないようにゆっくりと彼の腕に触れ、自分の隣のカウンター席まで誘導した。
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